【第22回・2020年7月22日公開】
1980年代後半のバブル絶頂期には各社から超高性能車が続々と登場し、ロータリーエンジンでも2つのターボを組み合わせるシーケンシャルターボが登場しました。
シーケンシャルターボを搭載したのは、1990(平成2)年の「ユーノスコスモ」と1991(平成3)年の「アンフィニRX-7」です。
その後もスポーツモデル用のロータリーエンジンは進化を続けましたが、最後にロータリーエンジンを搭載したのは2003(平成15)年発売の「RX-8」です。RX-8は2012(平成24)年まで販売されましたが、惜しまれながら生産を終了しました。
これは同時にロータリーエンジンの終焉でもあるのです・・・。
第6章 バブル時代とロータリーの終焉(ロータリーの歴史3)
その3.「ユーノスコスモ」と最後のロータリー「RX-8」
●究極のロータリーシーケンシャルターボ登場
1980年代後半のバブル絶頂期を迎える頃には、日産は「フェアレディZ」と「スカイラインGT-R」、トヨタは「スープラ」、ホンダからは「NSX」など、当時の出力自主規制値いっぱいの280PSを達成した、超高性能車が続々と登場しました。
マツダではすでに「コスモ」や「サバンナRX-7」でロータリーターボエンジンを採用していましたが、さらなる高性能を目指して新たにシーケンシャルターボシステムを開発しました。
シーケンシャルターボとは、プライマリーターボとセカンダリターボ、2基のターボチャージャーを組み合わせたシステムです。
低速域ではプライマリーターボのみで過給し、高速域に入るとプライマリーとセカンダリー、2つのターボで過給するシステムです。高価ですが、低速時のレスポンスと全域のトルクアップが図れる大きなメリットがあります。
●シーケンシャルターボを搭載した「ユーノスコスモ」
1990(平成2)年、マツダのプレミアムチャンネルとして誕生した「ユーノス店」から、8年ぶりにフルモデルチェンジした「ユーノスコスモ」がデビューしました。
搭載エンジンは3ローターの20B-REW型と2ローターの13B-REW型で、両エンジンともシーケンシャルターボシステムを搭載しました。20B-REW型は、マツダ初の280PSを達成しています。
サスペンションも、フロントにスーパーコンプライアンス機能付きダブルウィッシュボーン、リアにツインダンパー付きマルチリンクという、4輪独立式の贅沢な設定でした。
大きな注目を浴びましたが高価な上にバブル景気も下降気味であったため、販売はあまり伸びませんでした。
●続いてアンフィニRX-7もデビュー
1991(平成3)年には、同じくシーケンシャルターボを搭載した「アンフィニRX-7」が登場しました。
先代のRX-7よりも全長と全高を短く、低くし、逆に全幅は拡大・・・ワイド&ロー、そしてショートボディの本格的なスポーツカーとなりました。
高出力のシーケンシャルターボ13B-REW型ロータリーエンジンはフロントミッドシップに搭載され、50:50の理想的な前後重量配分を実現。4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションはアルミ化によって軽量化を図り、全域でリニアなステアリング性能がスポーティさを演出しました。
アンフィニRX-7は発売当初から国内外で高い評価を受けましたが、厳しい排ガス規制やスポーツカー離れにより、2002(平成14)年の「スピードリミットR」シリーズを最後に生産は終了しました。
●最後のロータリーエンジン搭載車「RX-8」
高性能スポーツカー冬の時代の中、2001(平成13)年10月の東京モーターショーで発表された新しいブランドメッセージの「Zoom-Zoom」とともに、会場で目を引いたのは「RX-8」でした。
その2年後の2003(平成15)年に、Bピラーレス、観音開きの4ドア、4人乗車の新しいスポーツカー「RX-8」が発売されました。RENESIS(13B)ロータリーエンジンを搭載。全域で高性能を発揮するシーケンシャルダイナミックエアインテークシステム(D-DAIS)を採用して、NA(自然吸気)ながら210PSと250PSの高出力を実現しました。
発売前の予約で5000台を受注するなど好調な滑り出しを見せ、その後もマイナーチェンジを受けながら進化し続けましたが、スポーツカー市場の収縮とともに2012年に生産を終了しました。
これは同時にロータリーエンジンの終わりを意味することでもあったのです。
(Mr.ソラン)
第23回につづく。
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