【ルークス vs N-BOX】新型ルークスの走りは王者N-BOXを超えることができたのか?(走行性能編)

●新型ルークスの走りは、王者N-BOXを越えることができるのか?

荷室や後席の広さ、車内の使い勝手に目を奪われがちな軽スーパーハイトワゴンですが、性能で差がつきやすいのが乗り心地やハンドリング、動力性能といった「走り」の部分です。

背が高いために重心も上がりがちで、高速走行中の横風が吹いたときのふらつきや、交差点やコーナーでの安定性などに影響を与えやすく、車内の使い勝手と同じくらいに大切なポイントになります。

★日産ルークス ハイウェイスターX プロパイロットエディション
★ホンダN-BOX  G・Lターボ Honda SENSING

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■高速直進安定性
■コーナリング
■乗り心地性能
■ロードノイズ
■動力性能
■この2台は「ともに素晴らしい」としか、言えない

■高速直進性
(ルークス・8点/N-BOX・8点)

高速直進性はルークスとN-BOXは同等程度で、この形のクルマとしては2台ともに直進性は高く感じます。

路面の継ぎ目を乗り越えるときの「タンタンッ」という突き上げ感も小さく、ボディがゆらゆらと動かされることも少なく抑えられているので、安心感も高いです。

ルークス走り
一般道でも直進性が良いルークス
N-BOX走り
しっかりとした操舵力で安心感が高いN-BOX

ACC(アダプティブクルーズコントロール)や操舵支援技術も、2台とも非常によくできています。

N-BOXが標準装備するホンダセンシングは完成度が高く、新型ルークスに搭載されているプロパイロットも素晴らしいシステムとなりました。

セレナやリーフに搭載されていた初期のプロパイロットの制御は、車線中央を狙うように常にせわしなく、ステアリングが左右にわずかに動かされるなど、その制御にはがさつさが目立ちました。しかし新型ルークスのプロパイロットではそれが一切なくなり、軽自動車の中でもTOPクラスの運転支援システムになったといえるでしょう。

■コーナリング性能
(ルークス・8.0点/N-BOX・8.0点)

コーナリングを積極的に楽しむクルマではありませんが、交差点での車の傾きやピッチングの大きさといった車両姿勢やボディの挙動は、走行安全性で見落としてはならないポイントです。

N-BOXは中低速(30km/h~60km/h)での操舵力が若干重ため。手ごたえがしっかり返ってくるので直進時も走らせやすいですし、コーナーでもステアリングを切り過ぎないため、グラッとすることも少なくすみます。

ルークスはN-BOXよりも軽めの操舵力ですが、交差点やコーナーでのロールの量や、ブレーキング時のピッチングといった姿勢変化は少なめになるように足回りが設定されています。楽しさではなく、安全にコーナーを曲がるという観点からいって両車は互角と言えます。

ルークス走り
長めのホイールベースも安定感に貢献
N-BOX走り
ピッチングやロールなど比較的小さく感じる

また、N-BOXやタント、スペーシアといった軽スーパーハイトワゴン特有の運転感覚である、フロントガラスが立ち上がってドライバーから遠くにあるような感覚は新型ルークスではあまり感じられません。

この手のクルマの運転が苦手な方にとっても新型ルークスであれば、すぐになじめるでしょう。

■乗り心地性能
(ルークス・8.0点/N-BOX・8.0+点)

ルークスの乗り心地は上下方向のフワ付きが少しありますが、タイヤの地面との当たりが柔らかく突起ショックのレベルも小さく、快適な乗り心地です。

特に左右の揺れに対する制振性が高く、ライバル車の中でもトップレベルにあります。車体剛性の向上、リヤサスペンションへの高剛性スタビライザー採用、ショックアブソーバーのサイズアップ、液体封入エンジンマウントなど、これらひとつひとつの基本性能が向上したことが積み重なり、このレベルまで引き上げられたのでしょう。

ルークス走行
N-BOXと並びで高い走行性能。背高の不安感は小さい。
N-BOX走行
ボディモーションが比較的小さく、安心していられるのはN-BOXの魅力。

N-BOXもほぼ同様の印象です。ボディがしっかりと作られたような印象を、フロア振動の収まり方やノイズから感じることができます。

特にN-BOXは突起にタイヤが当たったときの「インパクト音」がとても静かです。そのため、ガツンというショックの加速度のレベルは同じでも、N-XBOXの方がわずかに上質に感じます。

■ロードノイズ
(ルークス・8.0-点/N-BOX・8点)

ロードノイズは2台ともによく抑えられており、突起のインパクト音も少なく、2台ともトップクラスで静かです。どちらも一般道では「サー」といったごく小さなロードノイズで抑えられており、高速走行中も「ゴー」とは聞こえますが、その音量が比較的静かです。

エンジン音の遮音に加えて吸音材が適所に追加されていることも要因と思われ、ミニバンなどで培った箱モノボディの遮音対策が生かされているためだと推測できます。

N-BOXロードノイズ
ルークスと同じく、一般道でのロードノイズも静かで快適。
ルークスロードノイズ
一般道の60km/h程度であれば、ルークスはロードノイズも静かで快適。

すこし気になったのは、ルークスは高速走行中に耳が左右から圧迫されて「ボアボア」とするような、こもる印象を受けました。後席シート下を覗いてみると、フロアパネルがむき出しになっていたり、後席スライドドアの内張りがぶわぶわと面揺れを起こしていたりと、音圧変動につながりそうな部分も見受けられました。

一方のN-BOXは、音の低減に関する磨きこみが素晴らしく良くできています。わずかな部分ですが、音の消し込みに優れるのはN-OXの方でした。

■動力性能
(ルークス・7.5点/N-BOX・7.5点)

ルークスのエンジンはNAでもターボでも滑らかな印象です。排気音はターボの方がやや低めの音質になりますが、ベースとなる車体の遮音性能が高いため、さほど違いは分かりません。

S-HYBRIDによるモーターアシストのおかげもあり、一般道では加速のもたつきやノイズなどはさほど感じられず、NAエンジンであっても力強さを感じられます。

ルークスエンジン
NAは必要にして十分な性能だ。高速道路にて普通車にも負けない動力性能を期待するならばターボに選べばよい。

N-BOXのエンジンも、NAもターボも加速度・フィーリングで新型ルークスとさほど印象の差はありません。

ただどちらもNAエンジンは加速時に勇ましいサウンドを発生します。高速道路では所望のスピードに乗るまでに時間がかかるため、アクセルペダルを踏む時間が長くなりエンジンノイズは盛大になります。余力のあるターボエンジンの方が静粛性も高く、ストレスも少なくすむでしょう。

N-BOXエンジン
ルークスに比べてサウンドが心地よい。こちらもNAであっても普通に走る分には必要十分な動力性能だ。

■この2台は「ともに素晴らしい」としか、言えない

パッケージング良し、後席の使い勝手良し、視界も良し、走りも良しと、両者ともに車のバランスがよく取れた優秀な軽スーパーハイトワゴンです。

ただし両車ともナビゲーションやETC、ドライブレコーダーなどをつけていくと200万円を楽に超えてしまい、ヤリスやフィットといったコンパクトカーも視野に入る価格となります。

ご自身のカーライフにあった一台を選べるように、ぜひ検討をしてみてください。

<主要諸元>
ルークスハイウェイスターXプロパイロットエディション(2WD)
■全長×全幅×全高:3395×1475×1780mm
■ホイールベース:2495mm
■車両重量:970kg
■駆動方式:前輪駆動
■エンジン:BR06-SM21 直列3気筒ガソリンエンジン
■排気量:0.659リットル
■最高出力:38kW(52ps)/6400rpm
■最大トルク:60Nm(6.1kgf・m)/3600rpm
■モーター最高出力:2kW/1200rpm
■モーター最大トルク:40Nm/100rpm
■動力用主電池:リチウムイオン電池
■トランスミッション:エクストロニックCVT
■サスペンション前後:前/マクファーソン式
後/トーションビーム式
■タイヤ前後:前/ 155/65R14
後/ 155/65R14
■WLTCモード燃費:20.8km/L
■最小回転半径:4.5m
■燃料・タンク容量:無鉛レギュラーガソリン・27L
<主要諸元>
ルークスハイウェイスターXプロパイロットエディション(2WD)
■全長×全幅×全高:3395×1475×1780mm
■ホイールベース:2495mm
■車両重量:970kg
■駆動方式:前輪駆動
■エンジン:BR06-SM21 直列3気筒ガソリンエンジン
■排気量:0.659リットル
■最高出力:38kW(52ps)/6400rpm
■最大トルク:60Nm(6.1kgf・m)/3600rpm
■モーター最高出力:2kW/1200rpm
■モーター最大トルク:40Nm/100rpm
■動力用主電池:リチウムイオン電池
■トランスミッション:エクストロニックCVT
■サスペンション前後:前/マクファーソン式
後/トーションビーム式
■タイヤ前後:前/ 155/65R14
後/ 155/65R14
■WLTCモード燃費:20.8km/L
■最小回転半径:4.5m
■燃料・タンク容量:無鉛レギュラーガソリン・27L

(文:自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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