コルク製造会社から世界で唯一無二のユニークな自動車メーカーへと成長するまでを、自動車の歴史とともにたどる【マツダ100年史・第1回・第1章 その1】

■マツダが歩んできた100年とは?

2020年1月30日、マツダが創立100周年を迎えました。
いまでこそ下から上までプレミアムカー的モデルを揃えるまでに成長した日本の自動車メーカーですが、もともとはコルクの製造会社として出発しました。
その後3輪トラックメーカーに転身、さらに軽自動車市場への参入、ロータリーエンジン量産化を経てバブル崩壊に伴う経営危機に陥るなど、100年の間に紆余曲折ありました。

クリッカーでは全33回に渡り、マツダの創業から現在に至るまでの100年間を、自動車の歴史とともに振り返っていきます。


【第1回・2020年7月1日公開】

第1章・自動車の発明とマツダの始まり

その1.自動車を発明した偉人たち

●はじまりは蒸気自動車

産業革命の原動力になった蒸気機関は画期的な発明であり、最初の自動車は1769年に蒸気機関で走りました。しかしこの機構は、搭載するには構造があまりにも大掛かりで効率も悪く、ひとの移動やものを運ぶ自動車として使うには不向きでした。
蒸気自動車の100年後に発明されたのが小型高効率の内燃機関(エンジン)です。この内燃機関がその後の自動車を飛躍的に進化させていったのです。
自動車の歴史は、フランス人のニコラ・ジョセフ・キュニョーが1769年に発明した蒸気自動車で幕を開けました。といってもいまのひとたちがイメージする、ひとやものを運ぶ乗用車としてではなく、大砲を輸送する車両(砲車)として使われたのでした。
蒸気機関では、ボイラーで発生した高温高圧の蒸気をピストンが組み込まれたシリンダーに送り込んで動力を発生します。シリンダーの上端と下端の通路に装着された弁の開閉によって蒸気の圧力を切り替えてピストンを上下させます。この往復運動をピストンロッドで回転運動に変換し、動力として利用したわけです。

●電気自動車は内燃機関車より実は早かった

蒸気機関の次がガソリンエンジンと考えがちですが、意外にも次に模索されたのは実は電気自動車で、その原型は1830~1840年の時点でいくつか提案されていました。
実用的な電気自動車の実用化はガソリン自動車より早く、1873年に英国のロバート・ダビットソンが開発しています。また、1899年にベルギーのジェナッツィが開発した電気自動車は、2つのモーターを直結して搭載し、当時最速の106km/hを記録しました。
なお、電池は1777年に、モーターは1823年に発明されています。

●カール・ベンツとゴットリーブ・ダイムラーがガソリン自動車を同時期に発明

そして1876年に4サイクルのガソリンエンジンを発明したのがニコラウス・オットーです。彼の名にちなんだ「オットー・サイクル」の呼称からもわかるように、これがいまに続く4サイクルガソリンエンジンの起点です。これを機にカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーが、ガソリンエンジンを動力とする自動車を発明しました。

カール・ベンツ。
カール・ベンツ。

奇しくも同じ年の1886年に、全く面識のない2人が別々にガソリン自動車を発明しましたが、先に特許を取得して自動車を販売したことから、歴史上ではカール・ベンツのほうが「自動車の生みの親」という栄光を得ています。

カール・ベンツが造ったガソリン3輪車(写真はレプリカモデル)。
カール・ベンツが造ったガソリン3輪車(写真はレプリカモデル)。

カール・ベンツが開発した4サイクルエンジンは954ccの単気筒で、最高出力は0.89ps/400rpm。このエンジンを搭載した世界初の3輪自動車が「モトールヴァーゲン」で、最高速度は20km/hほど。車両は鋼管と木製で構成され、鋼鉄製のスポーク車輪とソリッドゴムタイヤを備えました。
ラックアンドピニオン式の操舵機構、手動式の後輪路面ブレーキは現代の車と同じですが、動力伝達はベルト式でした。

ゴットリーブ・ダイムラー。
ゴットリーブ・ダイムラー。
ゴットリーブ・ダイムラーのガソリン4輪車。
ゴットリーブ・ダイムラーのガソリン4輪車。

●ディーゼルが発明したディーゼルエンジン

オットーのガソリンエンジンから遅れること16年、ディーゼルエンジンの発明は、1892年にルドルフ・ディーゼルが基本原理を論文にまとめ、翌年に特許を取得したことに始まりました。

1897年に公開されたディーゼルエンジンは排気量15L、20psの出力を発揮し、熱効率は25%であったといわれています。他の動力機関に比べて高い熱効率を示し、新たな熱機関として注目され、評判になりましたが、最初は主として発電などに利用されました。自動車への搭載も試みられましたが、当時はディーゼルエンジンの小型化が難しく、やはり自動車には不向きとされました。ディーゼルエンジンは自己着火させるのにシリンダー内の圧力(燃焼圧)を高くしなければならず、そのためにはブロックまわりを頑丈に設計する必要があったのです。

メルセデス・ベンツ260D(1936年)。
メルセデス・ベンツ260D(1936年)。

ディーゼル車の実用化にはさらに長い時間を要し、最初に搭載されたのは乗用車ではなく、トラックでした。ようやく量産されるに至った初のディーゼル「乗用車」は、1936年の「メルセデス・ベンツ260D」です。これは排気量2.6Lの4気筒で、最高出力は45ps、最高速度は95km/hを達成しました。

260Dに搭載されたOM 138型 ディーゼルエンジン。
260Dに搭載されたOM 138型 ディーゼルエンジン。

(Mr.ソラン)

第2回につづく。

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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