目次
●車室内の使い勝手がより優れているのはどちらだ?!
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■後席ロングスライドか、助手席スーパースライドシートか?
■後席スライドに優れるルークス、足周りの広さに長けたN-BOX
■フラットで広大な荷室が欲しければN-BOXを、後席スライドなど自由度が欲しければルークスを
■後席ロングスライドか、助手席スーパースライドシートか?
昨今、どの自動車メーカーも、シート性能に対しては相当な意気込みをみせています。
日産も胸部と骨盤を積極的に支え、背骨の負担を減らす中折れの背もたれパッドを採用した「ゼログラビティシート」を全車に拡大採用しており、スカイラインやエクストレイル、そしてセレナなどに織り込んだ技術が新型ルークスにも採用されています。
新型ルークスの前席シートの背中が猫背のように曲げられる感覚は新しく、「楽な姿勢」でいられるように感じられます。尻下のクッションも柔らかめに作られており、座り心地がいいシートです。
一方のN-BOXの前席シートも座り心地がよく身体を程よくサポートしてくるので、段差を乗り越えた際にも身体が動いてしまうことがありません。フラットなベンチシートタイプの座面ですが、背もたれ側をしっかりと作りこんである良いシートです。
前席から後席へのアクセスも、2 台ともにしやすいです。
ルークスは後席を前方へ寄せられる「後席ロングスライド」、N-BOXは助手席を前方へずらす「スーパースライドシート」と、方式は異なりますが、2台ともに使い勝手はしっかりと考えられています。
後席への移動も可能なN-BOXか、運転席に座ったまま後席に手が届くルークスか、使い方に応じて選択するのが良いでしょう。
■後席スライドに優れるルークス、足周りの広さに長けたN-BOX
後席シートの座り心地も、2台同じ程度に素晴らしいです。クッションは柔らかすぎず、背もたれ側もホールド性は高くありませんが、最低限の快適性を備えています。
どちらもひざ前スペースは十分に確保されており、その辺のセダンやSUVよりも、広く感じます。
またルークスの魅力のひとつ、「後席ロングスライド」は最大320ミリもあります。後席シートを一番後ろまでスライドさせれば、足元スペースが最大で770ミリにも広がります。
N-BOXの後席スライド量は190ミリ。後席のスライド量が大きいと、前述したように運転席から後席へのアクセスが容易になるほか、荷室の容量を増やすこともできるなど、自由度が高いので、この点はルークスに軍配があります。
しかし、後席の快適性となると少し様子が変わります。
ルークスは、後席の座面のふくらはぎが当たる部分にもクッションがついており、ひざを曲げる方向にはスペースがありません。対するN-BOXは、後席の座面の下にかかとを引き入れることができるスペースがあり、足を動かせる自由度があります。
後席で足をぶらぶらさせることは少ないかもしれませんが、後席シートの下にも荷物が置けるほど空間があるN-BOXと比べると、やや効率が低いようにも思えます。
また、新型ルークスの売りのひとつである後席スライドドアのオープン幅(最大650ミリ)は非常に広く、大きめの荷物やお子さんを抱き抱えながらでも楽に乗りこむことができますが、実測だとN-BOXもほぼ同等程度開くため、この点も引き分けです。
■フラットで広大な荷室が欲しければN-BOXを、後席スライドなど自由度が欲しければルークスを
新型ルークスは、後席ロングスライドの効果で荷室奥行が最大660ミリと、非常に大きく取れています(表1参照)。この数字は、ライバル車のなかでも最も広い数値です。これだけのスペースが確保できれば、大きめの荷物でも後席シートを倒さずにそのまま載せることができます。
対するN-BOXは、奥行きはややルークスに劣りますが、地面から荷室床までの高さが最も低く、荷物を載せやすいという特徴があります。
新型ルークスでは、後席の折り畳み方式が座面と背もたれを後席足元に折りたたむ「ダイブダウン方式」から、背もたれを倒すと座面が前方下方にずれこむ「フォールアンドストー方式」へと変更されました。
これによって、後席を折りたたむ作業が力の弱い方でも簡単にできるようになっています。新型ルークスは女性視点を重視し、操作が軽くなる方式を採用したようです。
対するN-BOXは「ダイブダウン方式」という座面と背もたれが前方へ移動して足元に格納される構造をしており、さらにはホンダお得意の「センタータンクレイアウト」によって、後席を倒した際の荷室スペースが驚くほどフラット。この広さはN-BOXの魅力であり、他社はこの水準までたどり着いていないという印象です。
フラットで広大な荷室が欲しければN-BOXを、後席スライドなど使い勝手が欲しければルークス、こうした選択のが賢い選び方でしょう。
(文:自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)