■1980年代バイクブームを象徴するマシン。エンジンオーバーホールやフェアリングの交換にも対応するリフレッシュプランに期待大
ホンダから「『VFR750R(RC30)』を対象とした『リフレッシュプラン』をスタート」という発表がありました。VFR750R(RC30)というのは1987年に誕生した量産モデルですが、ワークスのレーシングマシン「RVF750」を公道仕様に仕立てたともいえる伝説的なマシン。国内では限定1000台で販売されたうえ、当時としては非常に高価な148万円という価格もあって、欲しくても買えなかったライダーが多数生まれたというのも伝説を高めるのに拍車をかけています。
とくに現在のリターンライダーの中心となっている50~60代のライダーには思い出深いマシンなのではないでしょうか。そうした背景もあって、バイクの中ではめずらしく「RC30」という型式で呼ばれ、デビューから30年以上を経った今も憧れの存在であり続けているのです。
「RC30 リフレッシュプラン」は、全国に7店舗しかない受付店にて、2020年7月28日より受付開始。整備自体は、ホンダの2輪工場である熊本製作所内に8月上旬を目途に開設する「モーターサイクルリフレッシュセンター」にて実施されるということです。
ほぼレーシングマシンという状態で市販され、なおかつ30年以上を経ているのですから、リフレッシュプランの内容が濃いものになるのは間違いありません。なにしろ必要最低限の基本メニューだけでも税抜き54万9000円という設定になっているほど。
オプションメニューの一例を紹介すると、キャブレターの分解整備が19万5000円~、クラッチ回りの整備が15万7000円~。それらを含め、エンジン自体もオーバーホールすると179万5000円~と、すでに新車時価格を上回る価格設定となってしまうのです。さらに驚くのはフェアリング(カウル類)の交換プログラムも設定されていること。こちらも190万7000円という価格に目が飛びでますが、”本物”の純正カウルが手に入るのであれば、安いものかもしれません。
古いものを大事にするというのは、こういうことです。
RC30ほどの伝説的名車になると、ギリギリのメンテナンスで騙しだまし乗っているというのはマシンに対して失礼といえます。むしろ、メーカーがこうしたリフレッシュプランを設定してくれたことに感謝して、このビジネスが持続可能になるように惜しむことなくコストをかけるのが二輪文化を守るということではないでしょうか。
いずれにしても、100万円単位で予算を組む必要があるでしょうし、これを機会に徹底的にリフレッシュしたいと考えるオーナーこそが選ぶプランともいえるでしょう。とはいえ、RC30のオーナーならすべての人が潤沢な資金を有しているとは限りません。
ホンダのプロジェクトはそうしたオーナーにも配慮しています。リフレッシュプランのスタートに合わせてVFR750R(RC30)の部品を再生産。純正部品として6月30日よりホンダの二輪車正規取扱店にて販売することも発表されました。
純正部品の新規生産・再販売については、「CB750F」、「DREAM CB750FOUR」、「NSR250R」といった、これまた伝説的モデルについて実施されてきましたが、その仲間にVFR750Rも加わったというわけです。再販される純正パーツの中には、ピストンやコンロッド、クランクシャフトのほかエキゾーストバルブ、バルブスプリングなどもありますから、自らの手で愛車をリフレッシュするという趣味の持ち主にも応えてくれるものとなっています。
原付のように生活・仕事に密着した二輪もありますが、こうしたレーサーレプリカ、大型スーパースポーツといったモデルは完全に趣味の乗り物です。二輪というのは、四輪に比べて置き場所を確保しやすいこともあって、ついつい”盆栽”といって動かさずに保管してしまうオーナーも出てくるのですが、マシンというのは走ることが本分。こうしたリフレッシュプランの実施によって、気持ちよく走れるようになれば、多くのオーナーの方がツーリングに出かけてくるかもしれません。
リターンライダーにとって、レーサー的ライディングポジションは年齢的にも厳しいかもしれませんが、リフレッシュが完了した暁にはぜひともツーリングに出かけてほしいと思います。
完全にリフレッシュしたVFR750R(RC30)が元気に走りまわる姿を週末のワインディングで見かける数年後の未来が、リターンライダーの一人として楽しみで仕方ありません。
(自動車コラムニスト・山本晋也)