目次
■高精度に制御された最近のエンジンでは発生が稀な異常燃焼
●燃焼室の壁面を適正に冷却することで抑止可能
ガソリンエンジンの異常燃焼にはプレイグニッションとノッキングがあります。
最近のエンジンは、燃料噴射や点火時期の制御、また冷却性能が向上しているので、一般的な条件ではプレイグやノッキングが発生することはほとんどありません。
代表な異常燃焼のプレイグニッションとノッキングについて、解説していきます。
●そもそもガソリンエンジンの燃焼とは
ガソリンエンジンでは、シリンダーの中の燃料と空気の混合気をピストンで圧縮し、その混合気が高温高圧になったところで点火プラグで着火、燃焼させてその爆発力でピストンを押し下げ、クランク(エンジン)を回転させます。
シリンダー内の燃焼は、火花点火で発生した小さな火炎が広がる(火炎伝播)ことによって、燃焼室全体の混合気を燃やし尽くします。
異常燃焼とは何らかの原因で、上記のような火花点火による火炎伝播の燃焼ではない、例えばノッキングやプレイグニッションなどによって燃焼する現象です。
●プレイグニッションとは
プレイグニッション(早期着火・以下、プレイグ)は、点火プラグによる火花点火の前に燃焼室内のどこか、点火プラグの側極部、ピストン頂面などの熱面、または高温のカーボンのような燃焼堆積物によって混合気が自着火する熱面着火現象です。
プレイグが発生すると圧縮行程の点火前に燃焼が始まるので、燃焼ガスはピストンの上昇によって圧縮されます。その結果、燃焼圧力と燃焼温度は異常に上昇し、プレイグが連続すると燃焼室の一部やピストン頂面が溶損することがあります。
●プレイグ対策
プレイグを抑止するには、熱面になりやすい燃焼室や点火プラグ側極、ピストン頂面などの冷却性能を改善して、熱の逃げを良くして燃焼室内の高温部をなくすことが効果的です。
●ノッキングとは
ノッキングは、火花点火による火炎が到達する前に、燃焼室端部の未燃ガスが自着火する現象です。自着火が起こるのは、広がった火炎によって端部の未燃混合気が急激に断熱圧縮され、自着火温度に達するためです。
高温高圧の激しい燃焼によって燃焼室内に高周波の圧力振動が起こり、カリカリといった特有のノッキング音が発生します。高速運転で激しいノッキングが発生すると、最悪の場合は熱によって燃焼室の一部やピストンが溶損する場合があります。
燃焼室端部の混合気温度が上がりやすい以下の条件で、ノッキングは発生しやすくなります。
・高圧縮比エンジンや過給エンジン
・エンジン本体や冷却水温度、あるいは吸気温度が高い場合
・点火時期が進角し過ぎている、混合気が薄い(燃料が少ない)場合
・燃料のオクタン価が低い(自着火温度が低い燃料)場合
●ノッキング対策とノッキング制御
最近は燃費を重視して、高圧縮比や過給などノッキングが発生しやすいエンジンが増えています。ノッキングを抑える方法のひとつは、圧縮後の混合気の温度を上げないことです。
混合気の温度を下げるためには、燃焼室とシリンダライナーの冷却水路の最適化によって冷却性能を向上させ、燃焼室表面やピストン表面の温度を低減することが効果的です、
また、インタークーラーを装備して吸気温度を下げる、燃料温度を下げる、混合気をやや濃い目の設定にすることも効果があります。
ノッキングを抑制する方法として、現在ほとんどのガソリンエンジンはノッキング制御を採用しています。最も一般的なノッキング制御は、ノッキングの発生をシリンダーブロックなどの振動で検出して、点火時期をノッキングが発生しない点火時期まで遅らす手法です。
これによりノッキングせず、あらゆる運転条件で最良の燃費と出力が実現できます。
2000年以前のクルマでは、登坂でシフトダウンせずにアクセルを踏み込むと、カラカラとノッキングが発生することがありました。
最近のガソリンエンジンは、制御や冷却性能が向上しているので、よほどイレギュラーな条件以外はノッキングやプレイグが発生することはありません。
(Mr.ソラン)