自宅で手汗握る! GRスープラのeMotorsportsワンメイクレース「GR Supra GT CUP 2020」

●今年も世界一のスープラ使いを決めるレースが開始

トヨタ自動車のスポーツブランド・GRの象徴的なモデルとして世界中のクルマ好きの注目を集めているGRスープラ。今年からいよいよ世界屈指のGTレースであるSUPER GTでも復活となりますが、現在は新型コロナウィルスの影響でお預けとなっています。

そんな中、より身近なところでGRスープラが活躍しているモータースポーツイベントをご存知でしょうか?

それがプレイステーション4専用レーシングゲーム『グランツーリスモSPORT』のオンラインで開催中の「GR Supra GT CUP」です。

東京モーターショー期間中に行われたGR SUPRA GT CUP 2019決勝戦
表彰台の中央にいるのが、ドイツ代表のミカエル・ヒザル選手。同選手は同年のGTの国別対抗戦のチャンピオンでもある。

GRスープラの発売に合わせて昨年から全世界で始まったワンメイクeMotorsports。

約80万人のGRスープラ使いがしのぎを削り、昨年10月末に第46回東京モーターショー2019と併催の「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ・ワールドツアー第5戦」のなかで開催された、GR Supra GT CUP決勝大会には世界5地域を勝ち抜いた24名が集結し、ドイツ代表のミカエル・ヒザル選手が初代王者に輝きました。

今年も4月末から20年モデルGRスープラが追加された後、シーズン開幕しました。

今記事では5月に開催された第2戦「ニュルブルクリンク24H」を紹介します。

ワンメイクレースであるので当然セッティングは固定され、調整できるのはレース中のトラクションコントロール、ABS、前後のブレーキバランス、燃料マップのみです。つまりどれだけGRスープラを乗りこなしているが勝敗の大きなポイントになります。

舞台であるニュルブルクリンク24Hは、毎年5月後半に開催されている「世界一過酷な草レース」とも呼ばれている「ニュルブルクリンク24時間レース」の専用レイアウトで、新型車のテストや欧州各地からやってくる走り屋のスポーツコースとなっている旧コースとF1やDTM(ドイツツーリングカー選手権)が開催されるグランプリコースを繋げた1周20kmを優に超えるロングコースです。

今回のレースはこのコースを2周。短いようですが1周するのに10分前後かかるので、思った以上に長い戦いになります。

使用したのは20年モデルのGRスープラ。カラーリングは、かつてのグループAで活躍した「富士通テン・トムス・スープラ」をオマージュしたもの。

●周りに惑わされずに常に自分の走りを心掛けることが上位入賞の秘訣

15分間の予選から気が抜けません。『グランツーリスモSPORT』の予選はピットアウトからスタート、つまりアタックできるラップが1周しかないのです。

コース上には他のレーサーも当然走行しています。現実のレースと同じく前方に他車がいない状況を作っていくことから戦いが始まっています。だからといってアウトラップからハイペースで走るとアタックの前にタイヤのおいしいところを使い果たしてしまうのでスローイン・ファーストアウトを意識しハンドルをこじらないドライビングでアウトラップを周回します。

そしてアタックラップ、基本はアウトラップと同じことをよりハイペースでこなしていきます。タイヤはスポーツタイヤなのでハードアタック時の一瞬のミスは取り返しがつかないです。

結果として3番手スタートとなりました。そしていよいよ決勝。

1周目スタート直後の第1コーナー。もっとも接触が多い、つまりペナルティを喰らいやすい瞬間。周囲を確認しながらライバルをパス。

スタートの第1コーナーで2位にポジションアップし、そのままグランプリコースから旧コースに入りました。1周目はタイヤを温存することを念頭に置き、コーナーを一つ一つクリアしていきました。

いっきに駆け上がるので姿勢が乱れやすくブレーキングが非常に難しい箇所。現実でもアクシデントが多い。
アクシデントや急激なスピードダウンの時は一定時間半透明になって周囲を巻き込まないようになっている。

しかし、旧コース序盤の高速セクション、フックスレーレ(Fuchscroehre、狐の穴)から一気に駆け上がり続くシケイン、アデナウ・フォレストのアプローチで勢いが付きすぎてコースアウト。順位を一気に7位まで下げてしまいました。

コースに復帰しましたが、コースアウトした際、左リアをウォールに激しくヒットしてしまった影響で一時的に挙動が乱れやすい状態に。ここで焦ってしまったら更にミスを重ねてしまうことはわかっていたので「より」自分の走りに徹することに。

ニュル名物・カルーセル。斜め上からアプローチするときれいなライン取りでクリアできる。
GPコースの終わりにあるシケインで4位にあがった瞬間。コーナーの立ち上がり次第でワンメイクでも加速でライバルをパスできるチャンスは増える。

2周目に突入する前に順位5位まで戻し、GPコースで4位に上がり、残り1台でスタート時の順位に。タイヤには幾分余裕があったのでペースアップし3位のイエローのGRスープラを追いました。

もう少しで追いつく!逸る気持ちを抑えつつ最短ラインをついて少しずつ差を削っていく。

徐々に近づくライバルに気持ちを抑えるのはミスをした後ということもあり大変でした。そして後半の曲がりくねった峠セクションで背後に付き、相手へプレッシャーをかけながらチャンスを待ちました。そうとしているうちに、最後のパッシングポイントである全長2kmのロングストレート、ドッティンガー・フーレ(Döttinger-Höhe)に。

相手の背後に付きスリップストリームで並び、270km/hというレーシングカー級のハイスピードで下りながらの左コーナー、アントニウスブーヘ(Antoniusbuche)にアウトから全開でアプローチ、膨らんだライバルと接触しコースアウトからハーフスピンでイン側のウォールに接触してしまいました。

コースアウト覚悟での270km/hオーバーコーナリング!ゲームとはいえ恐怖を感じた。
コースアウトの瞬間。現実だとここでリタイアだが、GTはそうではないので最後まで諦めないこと!

運良くそのまま真っすぐコースに戻れたので諦めずに後を追いました。4位入賞かと思いきや、相手の接触によるペナルティによるタイム加算で3位となりました。

わずか2周、予選も入れて40分弱でしたが背中は汗でしっとりでした。下の動画は、今回のレースのダイジェスト映像です。

確かにリアルを追求したところでゲームには変わりないですが、モータースポーツの楽しさと難しさを体感するのに「GR SUPRA GT CUP」はとても魅力的なコンテンツであることは間違いないと思います。ぜひ気軽に自宅からモータースポーツの世界にもう一歩近づいてみませんか?

(栗原 淳)