EVのTommykaira ZZがパイクスピーク挑戦。GLMがついにコンペティティブな世界へ

■SAMURAI SPEEDとジョイント。目標タイムは少々控えめな「10分台」!?

1914年の初開催から、今回で98回目の開催となる「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、新型コロナウィルスの影響で開催日を当初の6月28日(日)から8月30日(日)に約2か月遅れの開催へと変更となりましたが、これに参戦する各チームの準備が着々と進んでいます。

Tommy Kaira ZZ
電気自動車のGLM Tommykaira ZZがパイクスピークに参戦

「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」は、アメリカ・コロラド州にあるパイクスピークという山を舞台に行われるヒルクライム・レースで、標高2862mのスタート地点から、富士山よりも高い標高4302mのゴールまでの全長20km(コーナー数156)のコースを誰が一番速く駆けあがるかを競うものです。

この別名「レース・トゥ・クラウド(雲へ向かうレース)」と言われるレースに今回挑戦するのが、電気自動車のGLM Tommykaira ZZ(#230 2020年式 GLM Tommykaira ZZ )です。

Tommy Kaira ZZ
電気自動車のGLM Tommykaira ZZ

京都大学発のベンチャー企業としてGLM(当時の名称はグリーンロードモータース)が創業したのは2010年のことです。トミタ夢工場が作っていた伝説のスポーツカー、Tommykaira ZZをベースにEV開発を行い、2014年に99台限定で国産EVスポーツカー、Tommykaira ZZの発売を開始しています。

Tommy Kaira ZZ
GLM本社テクニカルセンターでパイクスピーク車両が製作されている

高剛性アルミニウムシャシーにFRP外装をまとうその車両は、全長3870×全幅1740×全高1140(mm)というサイズです。ホイールベースは2370mm、車両重量は850㎏。最大出力は305ps、最大トルク415N・mでパワーウエイトレシオは2.78kg/ps、0→100km/h加速は3.9秒となります。

最高速度は180km/hで航続距離は120km。そのコンセプトは「公道を走るレーシングカー」で、まさにこれを地で行くサイドウィンドウもない2座オープンモデルです。

Tommy Kaira ZZ
FRPカウルも肉抜きをし、軽量化に貢献しています

このTommykaira ZZ、浅間ヒルクライムやグッドウッドモータースポーツフェスティバルといったイベントでのデモンストレーション走行の披露はありましたが、これまで国際的なレースへの参戦はありませんでした。それが今回ついに、コンペティティブなレースの世界に乗り出すことになります。

Tommy Kaira ZZ
2台分のバッテリーを搭載するため、増えたバッテリーは助手席部分に搭載

パイクスピークに挑戦を続けているSAMURAI SPEEDと手を組み、ともにチャレンジしようというのが、今回のプロジェクトとなります。

今回製作されている「Tommykaira ZZ」のパイクスピーク参戦車両は、市販のTommykaira ZZと同じシャシーに同じモーターを搭載。ただし、インバータのチューニングで出力向上を図り、そして搭載バッテリーを市販車の2倍となる36kWh分を搭載することになります。

ボディカウルは基本的には市販車と同形状とし、カナードやリアウイングを装着しますが、パイクスピーク参戦車両にありがちなダウンフォースを稼ぐための大型ウイングといった付加物の装着は極力抑えるということです。

GLM本社
京都市伏見区にあるGLMの本社テクニカルセンター

GLM創業10周年を迎え、次の10年に向けた新しいチャレンジを、と模索していた中でのこの話が舞い込んできたということです。SAMURAI SPEEDのEVでの挑戦を続けているところに大きく共感しての参戦となりました。

GLMとしては、レースに参戦すること自体が主たる目的ではなく、GLMのEVパワートレーン技術の証としてレースで実証されることを目的としていることから、あくまでエンジニアリングでの技術協力というところにとどまってはいますが、レースシーンというシビアコンディションでの走行のフィードバックで得られるものは大きく、この参戦で知見を増やしたい、ということです。

SAMURAI SPEEDチームは、奴田原文雄選手を起用し、2012年のこの大会で「#230 トヨタ・モータースポーツTMG EVP002」を駆り、10分15秒380のタイムでEV(電気自動車)クラス優勝(総合6位)という実績を持っています。

2018年は日産リーフ(24kWhモデル)、そして2019年は日産リーフe+(60kWhモデル)で参戦したものの、天候悪化のためコース短縮でのレースを余儀なくされていて総合タイムは出ていません。

チームは、今回の目標タイムを少々控えめな「10分台」と公表しています。が、軽量EVの利点を生かし、この2012年の記録を更新してほしいところです。

この記事の著者

青山 義明 近影

青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
続きを見る
閉じる