■北米・中国では若いユーザーが購入しているアコード
日本の自動車メーカーが新型セダンをリリースする際に聞こえてくるテーマは、オーナーの「若返り」。トヨタならクラウン、カローラ、プレミオ/アリオンなどがあります。
最近、「若返り」というキーワードをほとんど耳にしなかったモデルには、MAZDA3セダンやWRX S4、インプレッサG4などがありますが、まだまだ少数派という印象を受けます。
10代目を数え、日本でも復活を果たした新型アコードも例に漏れず、先代のイメージを少し残しながらもかなりスポーティで、スタイリッシュなエクステリアが与えられています。
エクステリアのテーマは「CLEAN」「SPORTY」、成熟を意味する「MATURE」。全長4900×全幅1860×全高1450mmという堂々たるボディサイズは、ワイド&ローの走りの良さを予感させるフォルムになっています。
エクステリアデザインは若い層から好評とのことで、宮原哲也主任研究員によると主力の北米市場ではオーナーの平均年齢は50代から8歳の若返りに成功し、右肩上がりで人気が急上昇している中国では29歳だそうです。
■高いボディ剛性感と重心の低さによる、フットワークの良さ
筆者は、新型アコードには、コロナ禍以前乗ることができた箱根のワインディング、そして今回、高速道路や郊外路、東京都心の街中を中心とした多彩なステージでステアリングを握ることができました。
どのステージでも共通しているのは、乗り心地の良さ(とくに前席)。中でも感心したのは一見路面状態は良さそうでも、大路面のアンジュレーションが大きい郊外路でもフラットライドで、しかも足もよく動き快適な乗り味を示す点。
後席では、上下の突き上げがやや感じられるシーンもありましたが、ボディの剛性感が高く、揺れは一発で収束するため、嫌な揺れの余韻が残るようなこともありませんでした。
なお、試乗車のタイヤは、ブリヂストン・レグノGR-EL(235/45R18)。
また、静粛性の高さも印象的で、アクセルを踏み込んだ際にスポーティなエキゾーストを響かせてくれるのは、ちょっと走りを楽しもうかというときにうれしく、無味乾燥な味付けでは決してありません。
それでも高級車としてのマナーを備えた高い静粛性は、アコードの美点であることは間違いありません。
新型アコードには、「SPORT」「NORMAL」「COMFORT」の3つのドライブモードが用意されています。特に「NORMAL」「COMFORT」は、高速道路や一般道、郊外路ではそれほど大きな差を感じにくく、同じシーンでも「SPORT」になるとスポーティな味付けに変わるという印象。
以前、箱根ターンパイクで試乗した際は、ハンドリングもパワーの面でも「SPORT」が頼もしく感じられましたから、山岳路で打ってつけのモードといえるかもしれません。
なお、3つのドライブモードは、ハイブリッドシステム、アダプティブダンパーシステム、ステアフィール(デュアルピニオンアシストEPS、アジャイルハンドリングアシスト、エンジンサウンドの特性が変わるシステム。
「SPORT」にすると、ハイブリッドがハイレスポンス、アダプティブダンパーシステムが軽快感重視、ステアフィールがダイレクト、エンジンサウンドがスポーティサウンドに演出されます。良路であれば、「SPORT」でも快適性を大きく犠牲にするようなセッティングではないため、好みによりますが、「SPORT」に入れておいても良さそう。
ただし、燃費も重視するのであれば、やはり「NORMAL」が無難でしょうか。
大きなボディサイズの割に、2.0L i-VTECエンジンと2モーター(発電用と走行用)の組み合わせは、動力性能の面で疑問を抱く人もいるかもしれません。しかし、高速道路などでの加速時には気持ちのいい伸びを味わえます。
また、街中や郊外路では、インサイトからモーターの出力が向上したこともあり、中低速域のトルク感も十分に伝わってきます。
エンジンのスペックは、最高出力107kW(145PS)/6200rpm、最大トルク175Nm/3500rpm。モーターは135kW(184PS)/5000-6000rpm、315Nm/0-2000rpm。
ホンダでは、燃費一辺倒ではなく動力性能も確保し、気持ちのいい走りを実現したと謳っていますが、期待を裏切らない爽快な走りを引き出せます。
なお、高速道路と郊外路中心の試乗ではメーター内の平均燃費計が約20km/Lを指すこともあり、この車格であれば燃費の面でも高い満足度が得られるのではないでしょうか。
(文/塚田勝弘 写真/井上 誠)