旧車再生の基本・フロントタイヤを交換する【49年前のCB125は直るのか? 素人再生記】

■使えるものと使えないものを見極める!

●フロントタイヤの状態

ようやく車体にフロントフォークが戻った我がCB125。すぐにでもタイヤ&ホイールを組んで走り出したいところですが、しっかりタイヤを見極めてからにしましょう。

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タイヤを戻したCB125。

タイヤには賞味期限のようなものがあります。タイヤは一般的にスリップサインが出ていたら交換、もしくはバイクなら10年前後経過したものは問答無用で交換になります。

早速確認と同時に、以前にホイールのスポークを入れ替えるかどうか思案中と書きましたので、軽く磨いてみることにしました。

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ホイールのスポークを磨く。

スポークを小一時間ほど磨いたところ、思いの外キレイになってくれました。これならスポークを交換しなくても大丈夫でしょう。では問題のタイヤはどうでしょう。手で触って硬くなっているようなら交換がベストです。またサイドウォールに製造年月が刻印されていますので、確認してみます。

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タイヤの製造年月日を確認。

我がCB125のフロントタイヤは2007年8月製造のものでした。触っても硬く感じられますので今回は交換することにしました。

●タイヤ交換は自分でできる?

タイヤを交換するなんて作業、普通はタイヤショップやディーラーにお任せするものだと思います。

でも自転車のタイヤを外してパンク修理したことがありませんか? もしあれば、意外と簡単にタイヤを脱着できたのではないでしょうか。実はタイヤ交換は条件付きですが誰でもできます。

条件とは、タイヤサイズが大きくないことと、4輪用タイヤではないことです。と言っても筆者は10インチの4輪用タイヤを交換したこともあります。なにごともやる気です。

さておき、CB125のようにタイヤサイズが細いバイクなら素人でも交換は可能です。タイヤサイズはフロント2.50-18、リヤ2.75-18です。サイズをもとにタイヤをインターネットで探してみると、ダンロップF18というバイアスタイヤが見つかりました。価格は前後で8180円ですので安いものです。早速交換しましょう。

まずバルブからエアを抜きます。抜いてからタイヤを足で押し付けると、カンタンにタイヤがホイールからズレてくれました。通常ならビード落としといって、ホイールのリムに食い込んだタイヤのビードを外す作業が必要です。でもこの時代の細いタイヤだと簡単に外れてしまうものです。

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エアを抜いてタイヤをズラす。

さらに足を押し付けてタイヤを完全にホイールリムからズラします。その隙間にタイヤレバーを入れてタイヤを持ち上げます。その状態を保持して10センチから20センチくらい離れた場所にもう1本タイヤレバーを入れて持ち上げます。こうすることでビードをホイールの外へ引き出すのです。

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タイヤレバーを2本使って外す。

この時のポイントはあまりエアを抜かないことです。完全に抜いてしまうと中にあるチューブを間違えてタイヤレバーで切ってしまうことがあるからです。タイヤのビードを両方ともホイールから抜いたら、さらにタイヤのエアを抜いてエアバルブのナットを外しチューブを取り出します。

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タイヤの中からチューブを外す。

外したチューブに傷がついていないか確認します。自転車のパンク修理と同じで水を入れたバケツにチューブを入れ、濡れていない部分を押してブクブクとチューブからエアが出ていなければ大丈夫です。チューブの無事が確認できたら新しいタイヤにチューブを入れます。この時も完全にエアを抜かず、ちょっとでもエアが入っていると作業がしやすいです。

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新しいタイヤにチューブを入れる。

あとは外すときと逆の要領でタイヤをホイールに入れるだけです。手作業のため力もコツも必要ですが、できないことではありません。筆者の場合、タイヤ1本の脱着に30分以上かかりました。

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新品タイヤに交換する。

●ブレーキの確認

タイヤを組んだらホイールのブレーキドラムにブレーキシューがついたままのプレートを入れます。でもすぐに入れず、ここでも清掃と確認をします。

まずホイール側のドラムを清掃して、シューとのあたり面を軽く磨いておきます。サビが残っていても走り出せばシューと当たることで削られていきます。同時に内部のベアリングを回してゴロゴロした感触がしないか確認しましょう。

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ドラムを清掃する。

次にシューがついているプレートを清掃します。まず表側はリンク部分などにどうしても汚れが溜まりがちです。本来なら分解して清掃したいところですが、今回はそこまでする必要がなさそうです。理由は後述します。

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ブレーキプレートを清掃する。

次に裏側も清掃します。同時に2枚あるシューの残量を確認しましょう。CB125でこのとき注意したいのは、裏側のホイールベアリング周辺にパーツクリーナーをかけないことです。

ベアリングはグリスまみれになっていますが、攻撃性のある溶剤をかけるとベアリングの潤滑性に問題を起こす可能性があるからです。最悪ベアリングを交換することも考え新品を用意しましたが、手でクルクル回した感触ではベアリングは問題ないようです。今回は交換せず作業を進めます。

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シューの残量とベアリングの状態を確認。

清掃が終わったらブレーキシューの動きを確認します。シューはブレーキレバーとワイヤーでつながったリンク部品を動かすことで作動します。ですのでプレートにあるリンク部を清掃して滑らかに動くようにしたいのです。

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リンクを動かす。

リンクは手で動かすことができますので、何度か押したり引いたりします。その時にプレートの裏をみてみましょう。ドラムの端がプレート裏の突起に当たり、ここを軸にしてシューが動くとわかります。

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シューの先端。

シューを動かして突起から浮かせた状態をキープして清掃とグリスアップを行います。これでシューはしばらく滑らかに動いてくれることでしょう。しばらくと書いたのは、いずれまた清掃して潤滑する必要があるからです。

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シューと突起の間をグリスアップ。

プレートについているリンクやシューを分解しなかったのは、シューが想像以上に残っていたからです。おそらく新車から1度くらいは新品に交換してあると思われるくらい、シューが残っていたからです。シューの減りがスピードメーターの走行距離に比べて、ありえないくらい少なく感じられます。

最後にホイールベアリングが入っている溝から古いグリスを掻き出して拭き取ります。

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古いグリスを除去する。

仕上げにウレアグリスをたっぷりと詰め込んでおきます。

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グリスアップする。

●タイヤをフォークに装着する

タイヤの新品交換とブレーキ清掃・グリスアップが済んだら、やっとタイヤを車体に戻せます。

まずフロントフォークにフェンダーを戻します。戻そうと確認したところ、なぜかフェンダー裏側全面が黒く塗装されています。その塗料がボロボロと落ちてくるのです。

これは困ったと悩むことしばし。意を決して古い塗装をスクレーパーで剥がしました。この時代のメッキフェンダーは泥はねなどを長年続けることで裏からサビが進行します。おそらく初代オーナーがこれを嫌い、フェンダーの裏側を塗装しておいたのでしょう。

塗装を剥がすとサビのないメッキ地肌が現れました。こればかりは初代オーナーに感謝です。ということで見習うことにします。裏を軽く磨いて下地を整え、シャーシブラックを塗装しておきました。

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フェンダー内側を塗装する。

塗装が乾燥したらフロントフォークにフェンダーを4本のボルトで固定します。この時注意したいのは、4本のうち1本がブレーキプレートの抑えになるブレーキストッパーアームと連結されることです。穴が何個も開いたバーで、フォーク側はフェンダーと挟み込むようにしなければなりません。

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ブレーキストッパーアームに注意。

タイヤを装着する前にアクスルシャフトを点検します。ここにカジッた跡がないかどうか確認すると、古いバイクらしく何箇所か変色しています。ここを手で触って段差が感じられなくなるまで磨いたら、グリスを塗っておきます。

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アクスルシャフトを磨いてグリスアップ。

いよいよフォークにアクスルシャフトを通してタイヤを装着します。できればタイヤを浮かせることができるよう、タイヤの下に何か入れるなど工夫すると入れやすいはずです。またアクスルシャフトだけでなくフォーク側にもグリスを塗っておくと、次にタイヤを外す時ラクでしょう。最後に割りピンを入れたら完了です。

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タイヤを装着する。

次回はリヤタイヤを外して交換するとともに、チェーン周りを点検します。

(増田 満)

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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