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■1990年代はセリカGT-Fourやランエボ、インプレッサなど日本車が大活躍したが、現在トヨタ以外は撤退
●実用的な技術で競うので技術の市販車へのフィードバックという重要な役割も担うレース
欧州でF1と並び称される人気のWRC(世界ラリー選手権)は、市販車を改造した競技用車両で世界各地の公道コースでタイムを競います。市販車に近い車両で一般公道を走行することから、最新技術の市販車へのフィードバックが期待できます。
F1とは異なり、より現実的な技術で競い合うラリーについて、解説していきます。
●WRCとは
世界各地で開催されていたラリーをまとめて、1973年からシリーズ化したのがWRC(世界ラリー選手権)です。市販車を改造した車両で3日間公道コースを走行して、合計タイムを競い合います。
他のモータースポーツと異なる点は、レースにドライバーとコ・ドライバー(ナビゲーター)の2人1組のペアで参戦することです。コ・ドライバーが、事前に調べたペースノートをもとに次のコーナーの大きさなどをドライバーに知らせながら、ドライバーがその指示を瞬時に判断して走行します。
コースは、タイムを競う「SS(スペシャルステージ)」と、SS間の一般公道を移動する「リエゾン」があります。SS間のタイムの合計で、順位が決まります。
1つのSS区間の距離は数km~数10kmとさまざまですが、合計距離は400km程度です。コースになる公道は主催者によって封鎖され、一般車は紛れ込まないようになっています。
各大会で順位に応じてポイントが与えられ、世界各地で開催される1年間(2019年は14戦)の合計ポイントで年間チャンピオンが決定します。
●WRCのレギュレーション
モータースポーツでは、安全かつ公平に競争するために厳格なレギュレーション(規約)があります。WRCのレギュレーションも毎年のように変更されます。また市販車からの改造度合いによって、最も改造自由度が高いWRC、WRC-2、WRC-3、JWRCとカテゴライズされています。
2018年の代表的なレギュレーションは、以下の通りです。
・エンジン:1.6L 直噴ターボ、吸気量を制限する内径φ36mmの吸気リストリクター装着
・規定最低重量:1175kg
・最小全長:3900mm
・規定最大全幅:1875mm
・駆動方式:フルタイム4駆、センターデフのみ電子制御システムの使用が許される
・エアロパーツ:フロント+60mm、リア+30mmの範囲でエアロパーツの取り付け可
●WRC参戦の日本車
WRCにおけるトップクラス車両は、1970年代創世記からグループB(1973年~1986年~)→グループA(1987年~2001年)→WRカー(1997年~2010年)、現在のS2000WRC(2011年~)へと名称を変更しながら進化してきました。
最も名車や名勝負が多く、ラリー人気が盛り上がったのはグループAの1990年代でした。
当時2Lターボ+4WDをいち早く完成させ、最強を誇ったのがランチア・デルタHFでした。それに対抗して、トヨタ・セリカGT-FOURやスバル・インプレッサWRX、三菱・ランサーエボリューションが激しいバトルを繰り広げました。
●ラリーとは異なるラリーレイドとは
ダカールラリー(旧パリ・ダカールラリー)は、ラリーとは異なるラリーレイドというカテゴリーに属します。ラリーと類似したレギュレーションですが、走行距離や規模が大きく異なります。
パリ・ダカ―ルラリーに代表されるようにラリーレイドは、走行距離が圧倒的に長く、1日何百kmも走行します。国境を何度も通過したり、砂丘を超えたり、川を走破するアドベンチャー的な要素が多いレースです。
速さだけでなく、厳しい走行条件を突破する耐久信頼性など、クルマの総合的な性能が試されます。
2000年頃までは、日本の自動車メーカーは、技術力をアピールする広宣や市販車への技術フィードバックのために積極的にWRCに参戦しました。
その後の自動車業界の低迷とともに、メーカーはモータースポーツから相次いで撤退を始め、現在WRCに参戦している日本のメーカーはトヨタだけです。
トヨタの社長には、他社のリーダーとは違うモータースポーツに対する強い思いがあるようです。
(Mr.ソラン)