旧車再生の基本・フォークを車体に戻す【49年前のCB125は直るのか?素人再生記 】

■再びサビが出ないように処理する!

●ステムを清掃してサビを予防する

前回フロントフォークをオーバーホールしましたので、今回はいよいよ車体にフォークを戻すことにします。

その前に車体のリフトアップについて考えてみます。以前フロントフォークを抜く時に、車体をフロアジャッキで持ち上げたと書きました。この状態でもいいのですが若干、車体が不安定なことは否めません。

そこで今回はジャッキで持ち上げてからフレームにリジッドラック、通称ウマをかけてみることにしてみました。

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フロントをリジッドラックでリフトアップする。

写真ではNS-1のフロントフォークがついた状態ですが、ウマ作戦は我ながら成功です。車体を左右に揺さぶってみても倒れるようなことはなく、安定してくれました。

では早速、NS-1フォークを抜いてトップブリッジとステムを清掃しましょう。

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ステアリングステムの部品。

NS-1フォークを付けていましたが、ステムやトップブリッジもNS-1のものです。CB125についていたものは外して保管していました。

改めて保管していた残りのステムベアリングなど一式を物置から出して確認します。ステムのベアリング受け部分、ベアリングレースには古いグリスが変色したまま残り、なんとも不気味な様相です。

ベアリングレースをキレイにすると同時にステム自体も清掃しつつサビを落としておきます。特にフォークが入る部分はインナーチューブのサビを誘発すると思われますので、徹底的にキレイにしましょう。

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ステムを清掃する。

今回はステムの塗装が剥がれていたこともあり、サビ転換剤である塗料・POR15を塗っておきました。乾燥するまで屋根など高いところから吊るしておきます。

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塗装して乾燥させる。

●ベアリングを入れる準備

ステムを乾燥させている間にベアリングやベアリングを受けるレースなどを清掃します。多くのバイクではステムベアリングがボールですので、脱着中の紛失には十分注意しましょう。

我がCB125には上下それぞれ18個、合計で36個のボールベアリングが採用されています。面倒ですが、ひとつひとつ掃除しつつ、歪みや傷がないか確認します。写真を撮った時は気がついていなかったのですが、ここにNS-1用の部品も混ざっていました。実際にはもっと少ない部品だけで足ります。

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ボールベアリングなどの部品。

次に車体側を見てみましょう。トップブリッジ下のベアリングレースにも見事に変色して不気味な様相を呈しているグリスがあります。

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フレーム側を確認。

当然のことですがステム側も同様の状況です。ハンドル操作をすると前輪の動きが渋く感じられたわけです。ここも徹底的にキレイにしましょう。

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下側も確認。

清掃してあげると、上側のレース部分は輝きを取り戻してくれました。古くなって変色していたとはいえ、グリスがあったおかげで錆びることなく維持されてきたのです。

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上側を清掃する。

これはステム側も同様で、古いグリスを拭き取りパーツクリーナーで汚れを落としただけでキレイになりました。ついでに周囲のフレームにサビや塗装剥がれがありましたので、これまたPOR15を塗って処理しておきます。

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清掃して周囲にPOR15を塗る。

●ステムを装着する

キレイになったレース部分に、まずはたっぷりとグリスを塗ります。

ステムベアリングは上下ともレースで塞がれ雨風や熱の影響は受けません。ですのでここにはウレアなどシャーシ用グリスで問題ありません。高価だからいいだろうとシリコングリスなどを塗ると、後々問題になることがあります。

グリスを塗ったら、ボールベアリングにもグリスをつけてレースに載せていきます。

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グリスを塗ってボールベアリングを載せる。

ステム側も同様にウレアグリスを塗ってからボールベアリングを並べます。下向きなので落ちてきそうですが、たっぷりとグリスを塗ってますので意外に大丈夫なものです。

上下ともボールベアリングの隙間をグリスで埋めるつもりで塗るといいでしょう。

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下向きでもボールベアリングは落ちてこない。

ステム側はステム自体にベアリングレースがついていますのでこのままで大丈夫ですが、上側はトップブリッジとは別にベアリングレースが単体であります。ここにもグリスを塗ってからボールベアリングに載せます。

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ベアリングレースを載せる。

あとはゆっくりとステムをフレームに差し込みます。そのままではステムが落ちてしまいますので、ステアリングヘッドトップスレッドと呼ばれる部品を締め込んで固定します。ひとまず手で締め込めるところまで締め込んでおきます。

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ステムを固定する。

ステアリングヘッドトップスレッドには切り欠きがあります。これは専用工具を当てるためのもので、締め込みたい分だけ締めることが可能になります。でも専用工具がなくても大丈夫です。

あまりほめられたものではありませんが、マイナスドライバーを切り欠きに当ててコンコンと叩いていくのです。まず強めに締めてステムを動かします。すると手にボールベアリングがゴロゴロ転がるような感触が伝わってきます。これでは締めすぎですので、ここから少しずつ戻していくのです。

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マイナスドライバーを叩いて締め込む。

ステアリングヘッドトップスレッドを適度な固さに絞めたら、トップブリッジを載せます。中央にステムナットをワッシャーを介して締め込んだら完成です。

トップブリッジも今回はステム同様にサビを落としてPOR15を塗装しておきました。ムラはあるもののツヤがあって個人的には満足してます。

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トップブリッジを載せて固定する。

●フロントフォークを装着する

ここでようやくフロントフォークの登場です。本来なら手順を写真とともに紹介したいのですが、この作業は両手が塞がってしまいますので撮影できませんでした。ゴメンナサイ。

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フロントフォークを装着する。

装着方法はブルーのカバー上下をつなげた状態でステムとトップブリッジ間に入れます。そのままだと落ちてしまうので片手で抑えておきながら、下からフロントフォークを差し入れます。

この時フォークの先端からトップボルトを抜いておき、トップブリッジ下にフォーク先端が当たったら軽くステム側にある固定ボルトを締めます。

その後、トップブリッジを挟んでフォークのトップボルトを締め込むのです。締まったところでステム側のボルトも締め込みます。これでフォークが車体に戻りました。

●フォークオイルを入れる

ステム側のボルトを締め込んだら、またトップボルトを外します。そうです、ようやくフォークオイルが入れられます。

我がCB125には140ccが指定されていますので、メスシリンダーで規定量を測ってオイルを入れます。

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フォークオイルを入れる。

これで無事にフロントフォーク回りのメンテナンスが完了しました。次回はフロントタイヤを装着する作業を紹介します。

(増田満)

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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