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■純なクルマ選び
彼女がジープ「ラングラー」に惚れ込んだことではじまった、ボクと彼女とラングラーとの生活。
「このクルマは、河原みたいなところも走れるんでしょ?」
ふと、そんなことを聞いてきた。もちろんラングラーは正統派のオフローダーだから、道なき道を走るのは得意だ。
しかも、選んだグレードは「ルビコン」。他のラングラーとは違う、コンベンショナルな機械式の副変速機を備えた4WDを搭載し、悪路走破性最重視の専用サスペンション、そして極悪路においてホイールストロークを増やしてタイヤがしっかりと路面を捉えられるようにフロントスタビライザーを切り離す機構まで付いている。
ひとことでいうと、最強のオフロード性能を持ったモデルだ。
だけど、それは彼女にとってもボクにとってもそれはあまり関係ない。だってオフロードなんて走らないんだから。
じゃあ「なぜ極悪路仕様のルビコン?」と問われれば、気持ちとしては「毒を食わらば皿まで」。ちょっと例えが違うような気もするけれど、言いたいのは「せっかくの本格オフローダーなんだから、とことんキャラを貫いた仕様を選びたかった」ということ。もっともラングラーらしいグレードが欲しかったのだ。
だから「ルビコン」を選ぶことに迷いはなかった。たとえ悪路なんて走らなくても。
とんでもない速度を出すわけではないのにスーパーカーを買ったりとか、海に潜るつもりなんてないのに本格ダイバーズウォッチを買ったりする感覚と同じなのだろうと思う。道具として優れているものが欲しいという純粋な気持ちでのモノ選びなのだ。
■先進装備も充実
でも、ラングラーを所有して意外だったのは、快適装備が充実していること。
キーはバッグやポケットに入れておけばクルマに乗る時もエンジンをかけるときも取り出す必要がない非接触タイプだし、8.4インチと大きめのタッチパネル画面を組み合わせるカーナビも標準装備、そのうえエアコンがオート式だったりしてちょっと驚く。
肌触りのいい革を張ったハンドルをはじめインパネまわりだって、そっけないほど質素かと思っていたらそうじゃないし。かなり今どきなのだ。
安全機能も充実していて、衝突回避支援ブレーキはもちろん、上級グレードには斜め後方を走っている車両の存在を教えて車線変更時の接触を防ぐ「ブラインドスポットモニター」なんかもついている。先進安全装備でも時代に遅れていないのだ。
運転してみると、四角い車体のおかげか車両感覚はつかみやすい。死角が多くて車両直近の視界は優れているとは言えないけれど、それを補うカメラが後方だけでなく前方や助手席側側面にもあるから、狭い駐車場でもまったく苦労しないのも意外な美点だ。
さすがに6.2mもある最小回転半径は駐車やUターンで気になるけれど、先代は7.1mもあったらしいから、比べるとはるかに改善されているみたい。ここは諦めて気が付かないことにしておこう。
■リラックスできるドライブフィール
「あと、乗り心地もいいしね」と彼女。
これも、ラングラーのいいところかも。おっとりしていて、リラックスしながらのんびり走ると心地いい。高速道路だって左車線をゆったり巡行。そういう走りがラングラーにはよく似合う。
「私も免許を取ろうかな。それでラングラーを運転するの。」
このところ、彼女がそんなことを口にするようになった。運転する楽しさを味わうのはいいことだと思う。
でも、正直に言うとボクだって助手席よりも運転するほうが好きだから、ボクの楽しい時間を奪わないで欲しいな。助手席を独占させてあげるから、運転席はボクに独占させて……なんて。(おしまい)
(文:工藤貴宏/今回の“彼女”:ちとせよしの/ヘア&メイク:牧 詠子/写真:ダン・アオキ)