F1のタイヤとは?公式サプライヤーから供給される規定タイヤの中から選んで使用【自動車用語辞典:F1の技術編】

■どのタイヤをどのようなタイミングで使用するかが勝負の分かれ目

●接地面積拡大のため溝なしスリックタイヤで粘着力を高めるため柔らかいコンパウンドを使用

F1レースにとってタイヤは極めて重要な部品であり、レースの流れを変える重大な役割を担っています。基本的な構造は市販車のタイヤと同じですが、サイズの違いはもとよりトレッド部の溝の有無や材質などは大きく異なります。

F1マシンのタイヤの特徴について、解説していきます。

●F1用タイヤのレギュレーション

レースタイヤは、FIAが指名した公式サプライヤーのピレリより供給されます。

5種類のコンパウンド(柔らかさなどのゴム質)のドライタイヤと、2種類の雨天用インターミディアムタイヤおよびウェットタイヤが供給されます。

1回のレースで選択するドライタイヤは13セットです。コンパウンドはまずピレリが1セットずつ3種類(合計3セット)を指定します。残りの10セットについては、ドライバーが自由に3種類のコンパウンドから選ぶことができます。

また、タイヤを含んだ前後輪のホイールの直径と幅はある範囲内に収まるように規定されています。

●タイヤの基本構造

F1用タイヤの基本的な構造は市販車用のタイヤと同じです。

ゴムだけでなく、内部にはポリエステルやナイロンの繊維で形成されたカーカスとスチールベルトの補強紐が埋め込まれています。ホイールと接合する部分は、ビードと呼ばれる高炭素鋼で強化されています。

大きな違いは、F1用タイヤは溝のないスリックタイヤであることです。

グリップ力を高めるために、溝なしで路面との接地面積を拡大し、粘着力を高めるためコンパウンドは柔らかくしています。

ただし雨天用のウェットタイヤは、市販車と同様に溝が付いています。

濡れた路面を高速で走行すると、タイヤと路面の間に水膜が発生する「ハイドロプレーン現象」が発生し、タイヤの摩擦力が消失してクルマが制御不能になります。

これを防止するため、トレッド溝によって水の排出性を促進します。

F1用タイヤの基本構造
F1用タイヤの基本構造

●グリップ力を極限まで高めたコンパウンド

コーナリングでスピードを落とさず、加速の際のホイールスピンを防ぐため、F1用タイヤは極端に寿命を縮めてまでグリップ力を高めています。路面に吸い付くようなグリップ力を発揮させるために、非常に柔らかい材質のコンパウンドを使用しているのです。

レースでは、ピレリから提供されるC1~C5の5種類のタイヤの中から3種類を使用します。これらは、異なったコンパウドで調合され、C1がもっとも硬く、C5がもっとも柔らかい設定です。柔らかいということはグリップ力が強く、一方で摩耗しやすいことを意味します。

F1用タイヤの強力な粘着力は、レース中の路面に残るタイヤ痕を見ればその威力がよくわかります。一方で摩耗が激しいので、1レース約300kmのコースで何度もタイヤを交換する必要があります。

●タイヤの温度や空気圧の管理

F1タイヤの強い粘着性を発揮するコンパウンドの表面温度は、80~100℃です。

ピット内やスターティンググリッドでは、タイヤウォーマーを使ってタイヤ温度を上昇させてスタートに備えます。また、スタート前のフォーメンションラップやセーフティカーが入った時にマシンを蛇行させるのは、路面の摩擦や変形量を増やしてタイヤの温度を上昇させるためです。

F1タイヤ内の気体としては、空気と二酸化炭素、窒素が認められています。極力水分を除去して乾燥させて圧力が変化しないように配慮されています。

市販の乗用車の空気圧はだいたい1.8~2.2kgf/cm2あたりの範囲ですが、F1用タイヤは低目の1.5kgf/cm2が一般的です。


F1レースをみていると、ピットインしてタイヤを交換するシーンをよく目にします。グリップ力(粘着力)と耐摩耗性はトレードオフの関係があるので、グリップ力を強めるとタイヤ交換インターバルが短くなってしまいます。

どのタイヤをどのようなタイミングで使用するかは、レース戦略上の重要なポイントです。

(Mr.ソラン)

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