●「Audi realigns its commitment in motorsport」
いまだ収まりを見せない、新型コロナウイルス感染症の感染拡大。国内モータースポーツでは、6月21〜22日に開催が予定されていたスーパーフォーミュラ第4戦SUGO大会の開催延期が発表されました。
さらに、27日未明に国内外モータースポーツ関係者やファンにとってまたひとつ、ショッキングなニュースが飛び込んできました。
27日付の「Audi、モータースポーツへの取り組みを再編成」というタイトルで始まるプレスリリースで「DTMツーリングカーレースシリーズへの関与は2020年シーズン以降は延長されない」、つまり2020シーズンでAudiがDTMから撤退するという事を発表しました。
また、AudiのCEOであるMarkus Duesmannは「我々のレーストラックへの尽力と、明日への『発展』への体系的な競争に注力する」と、今後はフォーミュラEやGT3に代表されるカスタマーレースにおいて活動していく方針であるとしました。
この通知を受け、DTMを運営するITR e.V.のゲルハルト・ベルガー代表は「今日は、ドイツとヨーロッパ全体でのモータースポーツにとって非常に厳しい日となりました」と声明を発表。
「私の取り組みはこれからの1年、何十万人ものファンにスリリングで競争力のあるシーズンを提供することを保証することです。それと共にできるだけ早く、私たちの参加チーム、スポンサー、およびDTMと共に仕事をしているすべての人が安心できる計画を作成しなければと思います」とコメントしました。
DTMとしては2018シーズンいっぱいでメルセデスが撤退。2019シーズンには、この年からアストンマーティンが参戦を開始しましたがわずか1シーズンで撤退し、BMWとの2大ワークスで2020シーズンを迎える予定でした。
そのなかで、今般のコロナ禍において国内モータースポーツと同じく開幕が7月末まで延期されている中での今回のAudi撤退発表ということで、1996年の第1期選手権廃止以来となる、シリーズ存続の危機に直面した事になります。
●「Class 1」規定で期待される、日独相互参戦
DTM存続について現地関係者の間では、GT3カテゴリを活用する案も出ているようです。
これは現在多くのメーカーから販売されているGT3マシンならば、メーカーとしてもマーケティング面を含めて非常に参戦しやすいこと、そして現在GT3マシンで開催されている多くのレースがニュルブルクリンク24時間や鈴鹿10Hを含むIGTC(Intercontinental GT Challange)などの耐久レースであることから、ADAC(Allgemeiner Deutscher Automobil-Club e.V.ドイツ自動車連盟)GT Mastersというカスタマーレースとの連携次第では、それらの耐久レースとの差別化が図られ、持続的かつ非常に現実的な案となりそうです。
そしてもう一つ、筆者だけでなく多くの日本のモータースポーツファンならば、日本3大メーカーのDTM参戦という事を期待する方も少なくないのではないでしょうか?
昨年はドイツ・ホッケンハイムと富士スピードウェイにおいて日独両メーカーの交流戦も行われ、ファンだけでなくドライバーや関係者からも非常に前向きな声が多く聞かれました。また、BMWがもしスーパーGT、GT500クラスに参戦ということになれば、日独4メーカーでのGT500、GT300両クラスでの激しいバトルが展開されることになります。
スーパーGTの海外戦をヨーロッパラウンドにするというのも良いかもしれません(取材が大変になりそうですが…)。それはあくまで筆者の個人的見解ですが、昨年完成した「Class 1」規定によって両シリーズへ参戦するための土台ができているというのは、相互参戦の実現においてのハードルは決して高くはないのではないかと考えます。
このコロナ禍の影響で、今シーズンの開催はもとより来シーズン以降のスポンサー活動を含めた資金繰りも非常に心配されるモータースポーツ界。ぜひ国境を超えてこの難事を乗り越えてくれることを心から願っています。
(H@ty)