マフラーの保安基準とは?適合品、認定品以外の装着は不正改造【自動車用語辞典:保安基準編】

■マフラーの通気抵抗を減らすと、エンジン出力は向上するが排気音も増大

●マフラーの不正改造は車外騒音規制に、触媒の不正改造は排ガス規制に不適合

道路運送車両法の保安基準は、クルマの安全や環境性能に関する技術基準であり、自動車メーカーはこの基準に適合するようにクルマを開発し製造します。自分でクルマをチューニング、改造する場合も、保安基準に適合することが大前提です。

パワートレイン関連の保安基準と代表的な改造事例としてマフラー交換について、解説していきます。

●保安基準とは

保安基準は、道路運送車両法で定められた技術基準で、安全確保と公害防止などの観点から、自動車の設計製造のための各種の要件を規定しています。

燃料の規格からクルマの大きさや重量などの基本構成、パワートレインや足回り、内装・外装部品、灯火・警告音の構成、走行性能や排出ガス、騒音特性など、クルマに関わるすべての技術基準を規定しています。

また車検の検査基準であり、リコールの判断基準のひとつでもあります。

クルマのチューニングや改造のために交換部品や用品を装着する場合には、寸法や重量、各種の性能が変化する可能性があるので、あらためて保安基準に適合することを確認する必要があります。

以下に、触媒とマフラー交換時の注意すべき保安基準について説明します。

●マフラー交換の狙い

マフラーは、排気音を低減するために装着され、マフラーがなければ保安基準(車外音規制)をクリアすることはできません。純正マフラーから市販品に交換する狙いは、概ね以下の3つです。

・排気音の変更

排気音を大きくして迫力を出す、音色を好みの音に変えて楽しむ。

・エンジンのパワーアップ

マフラー内部の通気抵抗を減らしてエンジンの出力を向上させる。

・排気管先端形状のドレスアップ

マフラーと一体のパイプ先端の形状が変わることによるドレスアップを図る。

●マフラー交換時に注意すべき保安基準

市販されているほとんどのマフラーは保安基準適合品ですが、競技専用のマフラーは公道では走行できません。公道を走行すると、不正改造車両として検挙されます。

両者の違いは、消音性能の違いによる排気騒音の差です。競技用マフラーは、エンジン出力を向上させるために排気ガスの通気抵抗を減少させています。その分排気騒音が大きくなるため、車外騒音規制に適合できません。

同様に通気抵抗を減少させたスポーツマフラーと呼ばれるマフラーもありますが、保安基準適合品であれば公道を走行しても問題ありません。

保安基準適合品とか車検対応品として市販されているマフラーのほか、JASMA(日本自動車スポーツマフラー協会)認定品もあります。JASMAマフラーは、保安基準よりも厳しい独自の基準に適合しているので、公道での走行が認められています。

●触媒交換時に注意すべき保安基準

マフラー同様、通気抵抗を減らして出力向上を狙った触媒に、スポーツ触媒があります。

通常の格子状セルのセラミック触媒に対して、通気抵抗の少ない渦巻き状セルのメタル触媒を使うのが一般的です。

ガソリン車は、通常CO、HC、NOxを同時に浄化する三元触媒を使って排ガス規制に適合しています。メタル触媒でも三元機能を持たせて排ガス規制に適合できれば、純正の触媒からスポーツ触媒へ交換しても問題ありません。

勝手に触媒を除去してはいけません。触媒がないと排ガス規制には通らないので、保安基準不適合です。高濃度の有害ガスが、周囲に垂れ流し状態になるので非常に危険です。

排気系の改造例
排気系の改造例

保安基準は、ユーザーが安心してクルマを乗り続けるための最低限必要な技術基準です。メーカーが商品としてクルマを市場に出すための必須条件であることは無論のこと、ユーザー自身が改造する場合も保安基準を守る必要があります。

勝手な判断をせず、専門家に相談しながら改造を楽しむことをお薦めします。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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