目次
●どちらも素晴らしい走り!どちらを選ぶかは好みの問題となる
インプレッサSPORTとMAZDA3、どちらも走りの評価が高いクルマですが、その方向性は全く異なります。
今回は、操縦安定性や乗り心地、音振性能、運転フィーリングといった動性能を、広く、深く、詳細に、比較を行いましたのでレポートします。
★スバルインプレッサSPORT 2.0i-S EyeSight (AWD)
車両本体270万6000円+メーカーオプション18万7000円
★マツダMAZDA3 FASTBACK DKUSVTIV-G 3.0 (2WD)
車両本体269万1741円+オプション16万3880円
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■高速直進安定性
■コーナリング
■乗り心地性能
■ロードノイズ
■動力性能
■高速直進安定性
インプレッサSPORT・9点
MAZDA3・9点
高速直進性はどちらも良く、路面に多少のギャップがあっても、気を使わずに直進することができます。
インプレッサは、ダブルウィッシュボーン形式のリアサスやAWDの恩恵もあり、外乱に対して非常に強い走りをします。
MAZDA3も横風のような外乱に強く、高速走行でも終始安定しています。また、応答ゲインが低いことも高速直進性の良さに繋がっています。急な横風を受けた直後にハンドル操作でリカバリしても、クルマがゆっくりと元に戻るため、ボディモーションが小さく感じるのです。
キビキビとしたハンドリングだけでは実現できない、安心感の高さが、マツダ3にはあります。
ACCとレーンキープコントロールは、両車とも優秀です。前走車の追従走行も完璧にこなし、適度なステアリング介入をしてくれますので、引き分けとしました。
■コーナリング
インプレッサSPORT・9.5点
MAZDA3・8点
2台の大きな違いが、ハンドリングに対する考え方です。
インプレッサのステアリングは適度な重さで、クルマの向きが変わる強さ(応答ゲイン)が非常に軽快です。素早い操舵入力にもしっかりと車両が反応し、狙ったラインを少ない操舵角でビシッとトレースできます。
旋回運動がリニアとも表現されます。旋回中の切り増しや不安定になりやすい旋回ブレーキングであっても、挙動は乱れず常に安定しています。もちろんAWDの恩恵が大ですが、タイヤやサスペンション、そして車体まで含めたシャシーのポテンシャルがずば抜けて高いためでもあるでしょう。
対するMAZDA3は、あえて応答ゲインを低く設定していす。そのため、インプレッサと同じ軌道を走るにはハンドル操作角を2割から3割、多めに切る必要があります。
マツダは「あえてゲインを低く設計したのはクルマと人の一体感を出すため。コーナーを小さく曲がりたければ、その分ステアリングをたくさん切れば良い」としており、きびきびしたハンドリングをよしとする一般論とは一線を画した、このマツダのフィロソフィは、大いに称賛したいところではあります。
しかし、筆者としては少ない操舵角でキビキビとコーナーを抜ける方向性こそ「正しい」のではないかと思っているため、MAZDA3のコーナリングは「ダル」と表現します。
■乗り心地性能
インプレッサSPORT・8点
MAZDA3・8点
今回試乗した2台はどちらも18インチの大径タイヤを装着しています。
そのため、一般道にあるような路面の凹凸では、タイヤと路面とのあたりがやや固めで、突起を乗り越すときのショックを感じることがあります。逆に高速走行のシーンでは上下にフワフワとするような動きがないため安心感が高まります。
ダンピングが効いたフラットな乗り心地ですので、硬いと感じることもありますが、どちらもインパクトノイズが小さいため、突起ショックの印象は悪くありません。そのため、乗り心地は、引き分けとしました。
■ロードノイズ
インプレッサSPORT・9点
MAZDA3・8点
インプレッサのロードノイズはとても少ないです。特に中低速(~60km/h)では「サー」という小さなノイズレベルで、車内の快適性を引き上げています。
高速走行時(~100km/h)はロードノイズは「コー」という音質になりノイズレベルも増えますが、それでもこのカテゴリでは相当に静かです。エンジンの遮音や車体による吸音性能が優れていることが要因と考えられます。
対するMAZDA3は、車室内に入ってくるロードノイズが車速によって印象が変わります。低中速(~60km/h)まではとても静かですが、高速走行となると常に「ゴー」というロードノイズが(不快ではありませんが)増加します。
実は、以前試乗した1.8LディーゼルのMAZDA3やSKYACTIV XのMAZDA3と比べると、明らかにロードノイズが大きく、うるさく感じるレベルです。
ディーゼルやSKYACTIV Xは300~350万円の高価なグレードですので、音振対策が念入りに行われているのでしょうが、同じクルマでのこの差は受け入れがたいです。
■動力性能
インプレッサSPORT・8点
MAZDA3・8点
インプレッサには、2.0Lの水平対向NAエンジン(最高出力154PS/最大トルク20.0kgf・m)が搭載されています。組み合わされるリニアトロニックは変速が非常に滑らかで、アクセルペダルの踏み加減に応じて、スルスルと加速をします。
アクセルの踏み始めはスムーズに加速していきますが、2リットル級のガソリンエンジンとしてはやや加速が弱く、他メーカーの1.6Lターボの方が力強く感じます。スバルの2L級エンジンということでパンチが効いた加速を期待していましたが、良い意味で「普通」だったなあ、という印象です。
対するMAZDA3には2.0L直4NAエンジン(最高出力156PS/最大トルク20.3kgf・m)が搭載されています。このエンジンも低速スタートから扱いやすい特性で、滑らかに加速をします。しかし、こちらも2リットル級ガソリンエンジンとしては加速が弱く感じます。またサウンドにももう少し盛り上がりが欲しいかな、と感じました。
なお、約200kmの試乗を終えたあとの実燃費で、インプレッサSPORTが12.0km/L(JC08モード燃費16.0km/L)、マツダ3は13.0km/L(WLTC燃費15.6km/L)でした。
それぞれカタログ燃費を上回ることはありませんでしたが、箱根の山を上り下りした後での燃費としては、どちらも良燃費といえます。
※100点満点の評価は記事末尾に掲載しました。
■まとめ
インプレッサSPORTは運動性能がとても高いです。
旋回初期のシャープな回頭性、後半のリニアリティ、といった動性能は、やはり、低い位置に搭載される水平対向エンジンとシンメトリカルAWDといった、他メーカーができていない技術による効果が大きいです。
対するMAZDA3はリアデザインだけのクルマではありません。癖のあるハンドリングではありますが、直進性が高く、ロードノイズも比較的小さく、グランドツーリング(長距離移動)に向いたハッチバックです。
ちなみに、MAZDA3の持つシャシー性能やハンドリングに最も合うのは1.8Lディーゼル。価格は300万円を超えますが、これがベストグレードです。
この2台は、出来ることならば試乗をされてから購入を検討されることをお薦めします。それにしても、この2台のような素晴らしい性能をもつクルマが、270万円程度の車両価格で買える日本人は、幸せだと思いました。
(自動車ジャーナリスト 吉川賢一 写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)
※個別項目は10点満点、総合点は各項目を集計したものです