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■中高生の豊かな感受性に期待する
4月15日、第8回カーデザインコンテストの受賞者が決定しました。
本コンテストは、メーカーを会員とする公益社団法人自動車技術会・デザイン専門委員会が企画する「カーデザイナー人材育成プログラム」として2013年から行われているもの。中高生という感受性の高い時期に、カーデザインを通じてものづくりの魅力に触れることで、自動車産業の発展に寄与する人材育成を目的としたものです。
第8回となる今回のテーマは、昨年度に引き続き「10年後の暮らしを楽しくする乗り物」。
昨年11月からの公募に対し、全国から352件(高校生311件・中学生41件)と、大幅に増えた昨年度とほぼ同数の応募がありました。
選考は、各自動車・部品メーカーのデザイナーで構成される審査員により厳正に行われ、「カーデザイン大賞」「カーデザイン賞(高校生および中学生の部)」「ダビンチ賞(高校生および中学生の部)」「審査員特別賞」が与えられます。
例年、都内にて授賞式が開催され、会場では現役デザイナーによるスケッチ講習会が行われますが、今年は新型コロナウイルス感染症の情勢に鑑みて式は中止。講習会は、後日デザイナーによるビデオレターとしてアドバイスが送られることとなりました。
■斬新で幅広い発想に溢れる受賞作
受賞作品の中から今回は3点をピックアップして紹介しましょう。
・植木鉢がモチーフ「MACETA」
まずは最高賞である「カーデザイン大賞」には、名古屋市立菊里高等学校・伊藤詩唯さんの『MACETA』が選ばれました。
「燃料電池付植木鉢」というコンセプトで、クルマを植木鉢に見立て、FCが排出する水で木や草を育てるという斬新な発想。育てる木の種類によってそれ自体がクルマの個性になり、そこにお国柄も出るという視点もユニークです。
また鉢をモチーフにした車体はガラスに囲まれたキャビンが夢の世界ですが、四隅のタイヤをしっかり張り出させることで安定感を与えたボディには、しっかり「クルマ」を感じさせるところが出色です。
・瞳で動かす「I’m Eye」
「ダビンチ賞(高校生の部)」に選出されたのは、東京都立工芸高等学校・宮敬汰さんの『I’m Eye』。
『I’m Eye』は、目でコントロールする車椅子の提案です。指先の操作からさらに進化し、目の動きで運転するという発想が実現を期待させます。
「目」そのものをモチーフにした車体もユニークで、クローズ型にしたことでスタイリッシュさも追求。車輪の光の色で健康状態を示す発想は実用的ですし、その光り方はデザイン的にも優れています。
・その世界はジブリアニメ? 「こもれびのバス」
「審査員特別賞」を受賞したのは、女子美術大学付属高等学校・丸山凛子さんの『こもれびのバス』です。
乗るだけで心が癒されるという、現代のストレス社会に対応した乗り物です。ガラスの球体や植物に囲まれた車体は非現実的ですが、タイヤを隠した構造や、ランダムに置かれたシートという発想に、地に足の着いた姿勢を感じます。
また、イラストとしての完成度も非常に高く実に魅力的です。
■現実的なクルマの提案も
本コンテストは、冒頭のとおり中高生を大賞とした自由な発想を期待したものです。実際、過去の内容を見ても、毎回非常に斬新でユニークな提案が数多く見られます。
そうした夢のある提案も継続しつつ、一方で現実的なクルマのデザイン部門があってもいいかもしれません。仮に現実的な条件を付したとしても、若い感性でいまのクルマにはない魅力を持った提案が期待できると思いますし、是非それを見てみたいと思うのです。
来年はいまの混乱が終息し、いつものように楽しい表彰式が開催されることを期待したいと思います。
(すぎもと たかよし)
第8回カーデザインコンテスト
・カーデザイン大賞『MACETA』伊藤詩唯さん(名古屋市立菊里高等学校1年)
・カーデザイン賞(高校生の部)『Fun!mock』赤坂京香さん(栃木県立足利工業高等学校3年)
・カーデザイン賞(中学生の部)『COCOON』浜名克聡さん(横浜市立平戸中学校2年)
・ダビンチ賞(高校生の部)『I’m Eye』宮 敬汰さん(東京都立工芸高等学校2年)
・ダビンチ賞(中学生の部)『Himmel』魚住拓磨さん(岡山白陵中学校3年)
・審査員特別賞『こもれびのバス』丸山凛子さん(女子美術大学付属高等学校2年)