日産自動車が先進的なリチウムイオンバッテリーの要素技術をAPBにライセンス供与

■電解質が樹脂に置き換わることで安全性が向上するなどの利点がある

日産自動車は、先進的なリチウムイオンバッテリーの要素技術である「バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池の技術」を、APBにライセンス供与すると発表しました。

日産 リーフ バッテリー
日産リーフのリチウムイオンバッテリー

日産は、1990年代初頭からリチウムイオンバッテリーの研究開発を着手し、1997年には「プレーリーJOY EV」で電気自動車用リチウムイオンバッテリーを世界に先駆けて実用化しています。それ以降、同社では自動車用バッテリーの技術革新につながる要素技術の研究を継続して行っています。今回ライセンス供与する「バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池の技術」には、「容積当たりの充電容量が増大する」、「電解質が樹脂に置き換わることで安全性がより向上する」、「構造がシンプルなため低コストである」という特徴があります。

■全樹脂電池の定置用バッテリーの製品化を目指すAPB

バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池は、従来、液体状であった電解質と金属製である電極の両方を樹脂に置き換えるものだそう。バッテリーセルの表・裏面をそれぞれ構造体であると同時に正極・負極の機能を有する樹脂集電体で形作り、複数のセルを重ねることで、バイポーラ構造の組電池の構成を可能とする要素技術。構造が単純化し、コストが下がり、容積当たりの充電容量が増大することに加え、電解質が樹脂に置き換わることで安全性も向上するとしています。

日産 バッテリー
日産自動車がAPBにライセンス供与する「バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池の技術」

一方のAPBは、世界で初めての第二次リチウムイオンである全樹脂電池を自社開発、製造販売を行う電池メーカー。APBは同技術を活用し、次世代型リチウムイオン電池である全樹脂電池の定置用バッテリーの製品化を目指しています。

バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池は従来の定置用リチウムイオンバッテリーに対して、同じ充電容量で大幅なサイズダウンとコストダウンを実現できることに加え、さらなる安全性の向上も期待できるそうです。

同要素技術を使った定置用バッテリーが普及するとどうなるのでしょうか。各ユーザー単位でも深夜電力や太陽光パネルなどで発電した再生エネルギーの有効活用が、少ない投資効果で実現することが可能になるとのこと。

それにより、地域社会の単位でもピーク時の電力消費量を抑制、安定した効率のいい電力活用の実現により、障害や災害が発生した際の電力供給停止のリスクを冗長性(余剰がある、重複しているなどの意味)の観点で減らすことができるそう。地域や社会単位でより安全でクリーンなエネルギー供給の実現に寄与することが可能になります。

また、同社は、国内有力企業からの出資を受け、日本国内に年間ギガワットアワー(GWh)クラスの充電量を持つ電池の生産が可能な工場の建設を計画しているそうです。

日産の経営戦略本部の木俣秀樹理事は、「日産は自社で開発した技術を自社利用だけに留めず、社外における自社開発技術の有効活用を積極的に推し進めることにより、社会や産業全体での技術の発展に寄与していきます。今回のAPBへの先進的なリチウムイオン電池の要素技術の供与もこの取り組みの一環です。同技術が広く用いられることにより、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の実現にインフラ面から貢献できるほか、日本政府が推進する持続可能な低炭素社会の実現への一助にもなると確信しています」とコメントしています。

(塚田勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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