初代シビック・タイプR極上中古車は新車価格の倍「400万円」。 EK9もFK9も狙うなら今だ!【中古スポーツカー・バイヤーズガイド】

■新車価格の倍になる中古車まで現れた!

●高騰を続けるシビックタイプRの中古車相場

シビックタイプRと聞いて、どの型を思い浮かべるでしょう。現在も新車としてラインアップされているクルマですから当然最新型の印象が強いはずですが、中古車市場ではどうもそうとは限らないようです。というのも、初めてシビックにタイプRが設定された1997年8月発売のEK9型の中古車相場がグングンと上がっているからです。

気になって調べてみますと、確かに安いものだと100万円台前半から売り物が見つかります。ですが、それらの多くは修復歴があったり走行距離が20万キロ前後になっているものばかりです。この傾向は150万円台付近まで続き、修復歴がなく走行距離が10万キロ前後に絞ると200万円前後にまでなってしまいます。

EK9で程度の良い中古車価格は、今や新車価格を上回ってしまっているのです。どうしてこんなことになってしまったのか確かめるべく、タイプR専門店へお話を聞いてみたいと思います。

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中古車相場が高騰しているEK9型。

●ホンダ・シビックタイプR・プチヒストリー

そのお話の前に、シビックタイプRの歴史を振り返ってみましょう。1997年に発売された初代シビック・タイプR(EK9)は、185psを発生するB16B型1.6リッターDOHC VTECエンジンを搭載する3ドアハッチバックでした。低重心・軽量ボディを武器に、クラスを超えた走行性能を味わえるモデルで、標準のタイプRとレースベース車がラインナップされていました。標準の新車価格は東京渡しで199.8万円です。

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1997年発売EK9型ホンダ・シビックタイプ。
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1997年発売ホンダ・シビックタイプRのB16B型エンジン。

2001年に登場した2代目シビック・タイプR(EP3)は英国ホンダで生産される輸入車でした。このEP3型ではエンジンがK20A型に変更され、排気量が2リッターに拡大されます。i-VTECと呼ばれる新世代ユニットで、最高出力は215psに達し、当時の販売価格は220万円でした。

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2001年発売EP3型ホンダ・シビックタイプR。

ところが2005年、シビックはフルモデルチェンジされましたが、ラインアップにタイプRは登場せず一時的に廃止されてしまいます。

そうして3代目は2007年になってようやく発売されました。このFD2型は3ナンバーの4ドアセダンのみの設定になり、ボディ剛性の引き上げに成功しています。エンジンは先代と同じK20A型ですが、最高出力は225psに発展し、新車価格は283.5万円となりました。

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2007年発売FD2型ホンダ・シビックタイプR。

やはり古くからのシビックファンにはセダンのシビックが受け入れられなかったこともあったのでしょうか、2009年に欧州専用車だったハッチバック型のタイプR、FN2型が日本にも導入されます。エンジンはK20Z型2リッターDOHC i-VTECで201psを発生、2010台の限定発売で、価格は298万円とひとクラス上になってしまいます。

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2009年発売FN2型ホンダ・シビックタイプRユーロ。

2008年のリーマンショックを引き金として世界的な不況に見舞われ、スポーツカーにも冬の時代が到来します。シビックタイプRは2010年に新車販売が終了してしまいます。新型は2015年になってようやく復活。このFK2型はFF量産車世界最速を目指してVTECにターボを組み合わせたK20C型エンジンに切り替わります。310psという途方もないパワーを発生しましたが、新車価格は428万円にまで上がってしまいました。

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2015年発売FK2型ホンダ・シビックタイプR。

そして2017年、シビックシリーズのフルモデルチェンジに合わせてタイプRも5代目FK8型へ進化します。FK2型同様にセダンボディとVTECターボエンジンによる車体構成で、最高出力は320psにまで引き上げられています。新車価格は450.36万円で初代EK9型の倍以上になっています。

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2017年発売FK8型ホンダ・シビックタイプR。

●新車の高価格化と海外からの引き合い、アメリカの25年縛りも影響

今でもシビックタイプRは新車が手に入ります。なのにどうして初代EK8型の相場が上がっているのでしょう。それはFK2型になってエンジンがターボ化されたこと、そして新車価格が400万円を超える高価格車になってしまったことが大きな理由のようです。

取材したタイプR専門店のケーズアップさんでも「5年前なら考えられない相場になってしまいました」と語っています。

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ケーズアップの外観。

その理由として、シビックタイプRはそもそも軽量ボディと高回転型ハイパワーエンジンの組み合わせで人気になったことが挙げられます。FK2型以降は完全にその逆の存在になってしまいました。伸びの良いNAのVTECエンジンを軽いボディで味わおうと思うなら、必然的に古い中古車になってしまうわけです。

さらに海外からの人気が加わります。

「ここまで急激に上がったのは1年半くらい前からでしょうか。アメリカでのR32スカイラインGT-R人気に端を発して、国産スポーツカーが軒並み相場を上げました。EK9もその流れに乗ってしまったのです」と、海外からの影響まで加わります。「今はまだ東南アジアなどからの引き合いが中心ですが、海外に出てしまう個体が現れて極上車は400万円を超えました。アメリカの25年縛りが適用されると、EK9やDC2の相場はさらに上がる可能性が高いと思います」

●EK9型の見極め方

程度の良いものだと300万円以上、走行距離が驚異的に伸びていない極上ものだと400万円ほどになってしまったEK9型シビックタイプRですが、やはり年式相応にトラブルもあります。

「エンジンマウントの後側が振動により切れてしまうことがあります。またディストリビューターの異常も多い症状です」と、特定の個所が挙げられます。

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デストリビューター。

「さらにはクラッチのマスターシリンダーからのオイル漏れ、オーバーランによるスターター不良、オルタネーターの発電不良も挙げられます」

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クラッチマスターシリンダー。
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オルタネーター。

エンジン本体は丈夫で20万キロ、30万キロくらいの走行距離になっても問題ない場合が多いようです。

「ただ、オイル消費が多くなっているケースがあります。ホンダ車全般に言えますが、オイル消費が多くなる傾向は避けられません。目安としてマフラーの出口に触れてみてオイルが付くかどうか、またボディの後側だけ色合いが違うと思えたら、オイル消費を疑うべきです」。ピストンリングの磨耗を疑いたくなりますが「走行距離が3万キロくらいでも消費量が多いクルマもありますので、完全に個体差です」と、こればかりは運もあるようです。

ですが、すぐさまエンジンのオーバーホールが必要というわけではありません。オイル管理を心がけることが重要です。

シビックタイプR・マフラー01
マフラーに指を当ててオイル消費を確認。

オイル漏れとしては「ステアリングラックやエアコンのコンプレッサーがダメになってくることが多くなりました。エンジンを高回転まで回すときはエアコンを切るようにお勧めしてます。パワステポンプやステアリングラック自体からのオイル漏れもあります」。

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ステアリングラック。
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エアコンのコンプレッサー。

ボディについては「全塗装してあるものが多いと考えてください。また、ヘッドライトのクスミは、今なら良いコーティングがありますので復活させることができます」と、ケーズアップさんではトラブルに対応したメンテナンスが用意されています。またリヤゲート付近からの雨漏れはシビックのお約束でもありますのでチェックしましょう。

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テールゲート付近からの雨漏れを確認。

●最新型のFK8型は?

現行モデルであり、古いものでも3年落ちのFK8型なら安心して買えるシビックタイプRと思われます。実際にはどうでしょうか。

「FK8になるとサーキット走行をしている例を見たことがありませんので、荒く乗られているクルマはほぼないでしょう。トラブルになることはまず考えられません。リヤゲートからの雨漏れだけ気をつけてください」

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テールゲート付近の雨漏れを確認。

FK8は順当に中古車相場を下げ、300万円台の売り物がチラホラ見受けられます。そろそろ買い時になりそうですが、「次のマイナーチェンジでホンダ・センシングが装備されることが考えられます。その結果として相場がどう動くかがポイントです」と、すでにアナウンスされているマイナーチェンジが鍵を握っているようです。

「例えばサスペンションのスプリングを変更したらホンダ・センシングが読み込めなくなることも考えられます」と、カスタムやチューニングしたい人には不向きであるかもしれないのです。このマイナーチェンジで中古車相場が変わることは間違い無いでしょう。

●ズバリ、シビックタイプRは今が買いです!

EK9型については「まず間違いなく相場は上がり続けます。欲しい時が買い時ですし、すでに20数年も前のクルマですから早めに買ってトラブルに対処しておくことが大事です」と、もはや買い時はすぎて今のうちに買っておかないと今後さらに難しくなるようです。

取材後に緊急事態宣言が出たため今後しばらくは静観する動きになると思われますが、EK9型は確実に今のうちに買っておくべきクルマでしょう!

最新のFK8型はというと、車高をローダウンしたい・サーキットも走りたいという人ならマイナーチェンジ前の今が買い時です。ただし、マイナーチェンジで相場がさらに下がる可能性もありますので、見極めが必要というところです。

●ケーズアップさんで見つけたシビックタイプRをご紹介

【1台目】1999年式EK9シビックタイプRが319.8万円!

チャンピオンシップホワイトが眩いばかりのEK9は、走行距離が驚きの3.5万キロです。車検が令和2年11月まで残っていて、もちろん修復歴はありません。ほぼ純正を保った奇跡の1台です。これで300万円ちょっとなら、安いと言えるかもしれません。

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1999年式シビックタイプRの外観。
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1999年式シビックタイプRのインパネ。
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1999年式シビックタイプRのフロントシート。
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1999年式シビックタイプRのエンジン。

【2台目】2018年式FK8シビックタイプRは409.8万円!

2台目は現行モデルのFK8型で、こちらもフルオリジナル状態を保っています。走行距離は2.7万キロで車検はありませんが、修復歴ももちろんありません。禁煙車で整備記録簿を完備していますので、順当に値段が下がっていると言えます。これは良い買い物になりそうです。

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2018年式シビックタイプRの外観。
2018シビックタイプR02
2018年式シビックタイプRのインパネ。
2018シビックタイプR03
2018年式シビックタイプRのフロントシート。
2018シビックタイプR04
2018年式シビックタイプRのエンジン。

(増田 満)

【関連リンク】

取材協力:ケーズアップ
http://www.typer.jp

埼玉県越谷市砂原721 TEL048-972-6661

この記事の著者

増田満 近影

増田満

複数の自動車雑誌編集部を転々とした末、ノスタルジックヒーロー編集部で落ち着き旧車の世界にどっぷり浸かる。青春時代を過ごした1980年代への郷愁から80年代車専門誌も立ち上げ、ノスヒロは編集長まで務めたものの会社に馴染めず独立。
国産旧型車や古いバイクなどの情報を、雑誌やインターネットを通じて発信している。仕事だけでなく趣味でも古い車とバイクに触れる毎日で、車庫に籠り部品を磨いたり組み直していることに至福を感じている。
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