井出有治がヤリス&フィットを一気4台乗ってみた!街乗り+αならフィットNESS・CVT、攻めるならヤリスZ・CVT

■同乗者に対して気を使うか使わないか?も、井出有治のチョイスポイント!

●車格に合わせ、無理矢理攻める必要性は無いよね

ヤリス&フィット4台一気乗り
ヤリス&フィット4台一気乗り!

フォーミュラニッポンからGT500、GT300、また2020年はスーパー耐久TCRクラスにシビックTCRで参戦している元F1パイロット&clicccarテストドライバーの井出有治さんに、今話題のBセグメント・コンパクトカー「ヤリス」と「フィット」を乗り比べてもらいました。

「『やれ!』と言われれば、どんなクルマでも横向けて爆走することは可能だけど(笑)、ヤリスとフィットはそのテのスポーツカーではないからね。ボクはこの2車種・4種類の車格に合わせて街乗り+αで乗ったらどーだろ?ということを一番に思い比較試乗しようと思います!」(井出有治)

今回、井出さんに試乗いただいたのはヤリス×2種、フィット×2種の計4種類。全車FFで、ガソリンとハイブリッドを各1台ずつ。この4車の中で「もし自腹を切って買うとしたらどれ?」というお気に入り度を、星の数で評価してもらいました。

井出有治さん
テスターは井出有治さん。レーシングドライバーなだけにクルマには拘りがありそうですが、「乗って楽なクルマが好き」と、あんまり拘ってないそうです!

「普段、街中+αで乗るならスポーツカーではなく、気を使わないで乗れる普通?のBセグ、Cセグが一番!」という井出さん。お気に入りはどれでしょう?

【ホンダ フィット NESS】

1.3L/ガソリン/CVT/FF
お気に入り度:★★★★★

●CVTの『S』モードは『スポーツモード』なんだけど…

フィットNESS
ガソリンのフィットがこの4台の中では一番のお気に入り。

シフトレバー部にある『S』モード。普通、この位置に書いてある『S』としたらセカンド、スノー、スポーツ…? で、このフィットの『S』モードは『スポーツ』モード。

このSモード、アクセルのオン・オフに対するレスポンスはイイ感じでしたね。でも、ここ箱根の峠の長~い下りで『S』モードに入れても、ちょっと前のAT車にあった『オーバードライブ(OD)』(ギヤを1段下げた感じでエンジンブレーキがかかる)みたいにも使えるのかな?と思ったんだけど、エンジンが唸りまくるだけで、エンブレ的な感覚は従来のODの半分くらいな感じ。

フィットNESSのシフト部
スポーツのSモードだけど、減速には「あんまり使えない」。

まぁこれだけ長い下り坂は普段の生活の中では無いと思うけど、こういうところを走っていると大丈夫?って不安に思っちゃう。峠の下りで多用したいエンブレ用としては使えないかな。

ハンドリングは個人的にはもうちょっとレスポンスのいいほうが好みですね。コーナー入って切り始めのところ、もうちょっと反応良くフロントが入ってくれてもいいな…と思いながら、その先ないのかな?と思うと、切り足せばちゃんと入ってくれる。そのへんは好みの部分。まぁいい意味でゆったり走れるっていうことだけど。

フィットNESSのインパネ
変にスポーティでもないのに、走ればしっかり気持ちイイ。お気に入り1番です。

変なロール感がないのもいいですね。ちゃんとタイヤも動いてはいるけれども、クルマが傾いて身体が外側に傾いて頭を寝かせる…とかの感覚が出ないので、高速コーナーなどを走ってもちゃんとタイヤのエッジを使って無駄なロールをせずに旋回していくので、この辺の感覚は走っていてとっても楽しいです。

フィットNESSのエンジン
「え、1.3Lなの?」というほど、他の1.5L仕様と遜色ない走りができるフィットNESS。

タイヤも含めて、路面の悪いところでもノイズがあまり聞こえてこなかったので、街乗りメインならこの静粛性は高得点です。1.3Lでも物足りなさは無し。ウン、今日の中では1番ですね!

【トヨタ ヤリスZ】

1.5L/ガソリン/CVT/FF
お気に入り度:★★★★☆

●数字的なものは別として、フィットより小回りが効かない?

ヤリス Z
ガソリン仕様のヤリスZを2番手にチョイス。「ブレーキがいい!」

数字的なホイールベース、トレッドとかは別として、パッと乗った感じだとヤリスZは反応が良くてレスポンスも良く、ステアリングに対してクルマ全体の応答性が良かったですね。

イイんだけど、それが良すぎて逆に、乗っていて横Gがかかるときのグッというグリップを感じるのが唐突というか、乗っていてちょっと疲れる…いや、スポーティさが凄くある!とも言うけど。首都高で普通に移動して普通に流れに乗って走ったとしたら、横Gグリップがなだらかでは無く唐突にクンッとくるため、それを出さないよう同乗者に気を遣うのがちょっと疲れそう。

イメージとはちょっと違って、乗ってみると重心も高く感じますね。タイヤに対して上が動きたがるんです。サスペンションが動いてストロークしているときのジオメトリーの差もあるのかもしれないけど、ロールセンターが高いような、重心が高いような感じ。だからレスポンスがいいのかも。

ヤリスZのエンジン
この中では1番スポーティな走りを見せたヤリスZのガソリン仕様。

でもブレーキはいいですね! ABSバンバン効かせて途中ガンガン踏んでみたけど、100→0km/hでのブレーキングだと、ヤリスのほうはABSの介入が少ないし、ブレーキの性能がいいのかな。フィットNESSのほうがゴゴゴゴゴ~ッ!って駄々っちゃって、ちょっとイヤな感じ。ヤリスのほうがABSは入っているんだろうけどゴリゴリ感が全然ないから、フルブレーキをしてみても落ち着いていました。

全体的な反応はいいけど、Uターンするときに小回りが利かない? カタログ上の最小回転半径はヤリスZが4.8、フィットNESSが5.2だからカタログ上はヤリスのほうが小回り効きそうだけど、でも実際にUターンしてみると切り返さないとダメかな?って思っちゃう。なんでだろうね~。

ヤリスZのインパネ
フィットよりスポーティな雰囲気を持っているヤリスZのコクピット。

で、このヤリスZのDの先のシフトモードは『B』モード、ブレーキモードです。エンジン回転でいうと50km/hで普通のDレンジ1000rpm、Bレンジにすると3000rpmくらい。6500rpmレブのエンジンで1000rpmと3000rpm、2000rpmも差がある。でも2000rpmも多く回してエンブレを効かせている…という体感は無いんですよね~。

ってことで、フィットNESSと同じようにヤリスZも、減速として使うレベルじゃないですね。CVTの特徴なのかな~。箱根の下りだとフットブレーキ主導でいかないとダメですね。

今日の4台の中では完全にヤリスZはスポーツタイプ。コントロール性や運動性能もいいしボディ剛性もある。これはイメージ通りですね。ボディデザインとか内装とかも含めて。ヤリスは若いカップル向きかも。

でも今回は街乗り+αを基準としたので、街中でのハードめなクルマはあまり好きじゃないボクにとってヤリスZは2番手。

【ホンダ フィットe:HEV LUXE】

1.5L/ハイブリッド/電気式無段変速機/FF
お気に入り度:★★★☆☆

●ゆったり、ゆっくりと50km/h以下で走るならコレ、いいですねぇ!

フィットのハイブリッド、e:HEV LUXE
ゆったりのんびり走るのにはこのフィット ハイブリッド仕様のLUXE。ラグジュアリータイプですね。

お約束のドライブモード! このフィットe:HEV LUXEはNESSの『S=スポーツ』と違って『B』、ブレーキモード…とは書いていなくて「長い下り坂や強い回生ブレーキが必要な時」となっています。相変わらず?減速Gは感じられないけど、とりあえずエンジン回転は上がります。峠の長い下りでDからBにすると「ウ~~~~~ン」って回転が上がり、Dに戻すと「ウ~ン」ってなるんだけど、減速感は一緒。ギヤ比が変わるのとはまたちょっと違う感じ。コレ、ステップドAT風制御の特徴? でもそれは加速時に…だからあんまり関係ない、かも。

フィットLUXEのインパネ
質感的にもフィットLUXEはラグジュアリーです。

さすがハイブリッドのLUXE、車重が重い! 1200kgもありますね。ここの峠やちょっと首都高を…と、ちょっと軽快に走ろうとするときは車重1090kgのNESSのほうがいいかな~。

LUXEはラグジュアリータイプですよね。車重も重いけど、でも変に重過ぎて乗りづらいとかではないし、ハイブリッドだから静かだし…50km/h以下はね。逆に高速の60~70km/hから先はうるさいくらいかも。

フィットe:HEV LUXEのエンジン
さすがハイブリッド、重い! でも、走ればその重さはあまり感じません。

あと、足が軽やかに動いている感覚のあるNESSに比べるとロールの戻りが遅いですね。

ってことで、車重の違いでLUXEは3番手、かな。ファミリーで乗るには1番かもしれないけど。

【トヨタ ヤリス ハイブリッドG】

1.5L/ハイブリッド/電気式無段変速機/FF
お気に入り度:★★☆☆☆

●重量バランスに難あり、FFなのにリヤヘビー過ぎ~!

ヤリスのハイブリッドG
重量配分的に難あり?のヤリス ハイブリッド仕様のG。

ウ~ン…基本はガソリン車のヤリスZと同じなんだけど、バッテリーを積んでいる分、重い! 車両重量1020kgのヤリスガソリンZに対して、ハイブリッドGは1060kgで40kg増。

バッテリー搭載位置のせいなのかFFなのにリヤ側が重いせいで、ガソリンはあんなにクイックで良かったのが、後ろが重くて前が軽く、バランス的にいただけない。

それでもとりあえず攻めてはみたけど、ホントに後ろが重過ぎるせいで、ヤリスのガソリン車みたいに走りを楽しむ…というクルマではなく、スポーティさも無し。純粋に「ハイブリッドカーに乗る」目的のクルマかな。

ヤリスGハイブリッド仕様
ハイブリッドの良さとかナントカの前に、とにかく重量配分は要改善、かも。

唯一良かったのは、今回の4台で統一して思う『B』に入れたときのエンジンブレーキの効きは、ヤリス ガソリンZより、フィットの2台より、このヤリス ハイブリッドGが頼もしいです。メーターもエネルギーの動きを見るパターンに換えて見てみたら、回生のほうにブレーキを戻す分、エンブレとして機能しているのかな?と感じました。

とにかくリヤヘビー過ぎてバランスが悪い。同じハイブリッドのフィットは、バッテリー搭載位置がフロント寄りになっていて、4輪にかかる重さが同一にシンプルに増えているんじゃないかな。

ヤリスGハイブリッド
電気式無段変速機の使い勝手はすごくいいですね。

ヤリス ハイブリットGは完全にリヤがドーン!と重くなっているんです。たとえFFじゃなく4WDであったとしても、このフロントの軽さは…。というか、リヤが重すぎるから前が浮いている、みたいな。フロントに荷重が乗っていないからアンダーにもなるし、無理矢理フロントに荷重を移動させれば…だけど、でもちょっとイヤだな。

ってことで、4台中の4番手がヤリス ハイブリッドGです。

(※2022年1月31日訂正:車両の重量表記をメーカー発表諸元値の「車両重量」に統一しました)

(試乗:井出 有治/写真:奥隅 圭之/文:永光 やすの)

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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