オーバーヒートとは?冷却能力が追いつかずエンジンが異常昇温した状態【自動車用語辞典:トラブル編】

■インパネの水温計の針がHを指したら危険なサイン

●早めに気付いてクルマを止めないとエンジンが壊れるリスクあり

最近は、エンジンとその制御の信頼性が向上し、オーバーヒートとしたという話はほとんど聞かなくなりました。もし、冷却系の不具合によってオーバーヒートすれば、最悪の場合エンジンが壊れてクルマが突然走行不能になることもあり、非常に危険です。

エンジンのオーバーヒートの発生原因と対応方法について、解説していきます。

●オーバーヒートの原因

エンジン内部を循環する冷却水は、ラジエーターやサーモスタットなどの冷却システムによって80℃前後に制御され、高温化したシリンダーヘッドやピストンなどを冷却します。

オーバーヒートは、冷却システムの不具合によって冷却能力が低下して、エンジンが許容温度を超えてしまう不具合です。

下記のように燃焼による発熱量が冷却量を上回った場合に発生します。

・配管不良などによって冷却水漏れを起こして冷却水量が不足

冷却水の配管や連結部、ラジエーターなどから水漏れを起こして、冷却水の絶対量が減少して冷却能力が低下

・ウォーターポンプの作動不良、冷却ファンの作動不良

冷却水を循環させるウォーターポンプが作動不良になる、またラジエーターを冷やす冷却ファンが作動不良になって冷却能力が低下

・オイル漏れによるエンジンオイル量が不足

潤滑オイルが減少すると、摺動部の摩擦熱による発熱量が増大

・サーモスタットの作動不良

サーモスタットが規定温度(80℃前後)で開弁しないと、ラジエーターで冷やされた冷却水がエンジンに導入されないのでエンジン内の冷却水温度が上昇(サーモスタット入口制御の場合)

オーバーヒートの原因
オーバーヒートの原因

●オーバーヒートの症状

ホーバーヒートの初期には、まずインパネ内の水温計の針がH近傍を指して異常を警告します。

そのまま走行するとオーバーヒートが進行し、以下のような症状が出てきます。

・シリンダーやピストンの熱歪、熱膨張によってフリクション増大と摺動部の焼き付きが始まり、出力低下によって走りが悪化

・燃焼温度の上昇に起因するプレイグ(過早着火)やノッキングなどの異常燃焼によって、走行中に激しいノック音が発生

・シリンダーヘッドガスケットの吹き抜け(破損)が発生して、シリンダーヘッド下面から高温の水蒸気が発生

さらに走行を続けると、最終的にはエンジンの焼き付きによってエンジンが停止します。

● オーバーヒートした時の対応

インパネの水温計が上がり始めたときに、気が付いて処置すれば大きな不具合にはなりません。

気付かずにそのまま走行を続けて、上記のような出力の低下や激しいノック音、ガスケットの吹き抜けなどの症状が現れたら、以下のように対応します。

・まずクルマを安全な場所に停止します。

・ボンネットを開けて、エンジンは停止させずに冷却水温度の変化を確認します。

エンジンを停止すると、ウォーターポンプも止まりオーバーヒートが加速される場合があるので、アイドル状態で様子を見ます。

・冷却水漏れやオイル漏れなどエンジンの状態を確認後、サービスや整備業者に点検を依頼します。

エンジンや冷却水は非常に高温になっているので、冷却水の補給など自分で処置することはせず、専門家に依頼するのが安心です。

対応が遅れると、走行中にエンジンが突然停止してクルマが走行不能になることもありますので、注意が必要です。


インパネの車速計や燃料計に比べると、水温計はあまり注目しないメーターかもしれません。オーバーヒートに気付くのが遅れると、最悪の場合は走行中のエンジン停止といった危険な事態を招きます。

気付くのが遅くなれば遅くなるほど、危険性と修理費が増大します。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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