シートや荷室の使い勝手もフィットCROSSTARが優秀! 唯一の弱点…は?【フィットCROSSTARとロッキー/ライズ】

●ずば抜けて素晴らしいフィットの使い勝手。フィット唯一の弱点は価格?

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■フィットはコンパクトカー史上最高の視界の広さ。ロッキー/ライズは及ばない
■骨盤を支えるフィットの前席シートは座り心地バツグン。ロッキー/ライズよりも快適
■後席シートの居住性はフィット!安全にかつリラックスできるのはフィットのメリット
■後席シートバックを倒した際の広さはフィットの圧勝。高さ方向の空間が非常に広い

■フィットはコンパクトカー史上最高の視界の広さ。ロッキー/ライズは及ばない

細幅のAピラーだけでなく、水平なダッシュボードも視界の良さに貢献している
四角いボディのおかげで、フロント左右の見切りは良い

今回の新型フィットの最大の改良点のひとつである、Aピラーの細幅化。CROSSTARは車高が上がっているためにベーシックなフィットよりもアイポイントが高く、さらにバツグンの視界となっています。

ロッキー/ライズも前方視界は良い方ですが、それよりもはるかに良く感じます。またフィットは、ダッシュボード上面が水平で余計な突起物がなく、これも視界の広さに効いています。

ドライバーが必要とする情報だけを最低限残したシンプルなデジタルメーターによって、気が散ることなく運転に集中することができます。これら視界の良さはフィットCROSSTARの長所です。

ただし、フィットの9インチナビモニターは、従来のディーラーオプション扱いで約20万円と、かなりの高価格。それに対してロッキー/ライズは、トヨタが最近導入を進めているディスプレイオーディオが9万8000円、ほぼ半額で手に入ります。

Apple Car PlayやGoogle Androidがあるスマホが必要とはなりますが、最新の地図情報がいつでも得られ、GPSの精度も十分、しかも費用を抑えられるとなれば絶対におすすめです。

大型ナビモニターは、ダッシュボードの高さ以下になるように位置が設定されている
中央上段の一等地に、オーディオディスプレイが設置されているロッキー/ライズ

■骨盤を支えるフィットの前席シートは座り心地バツグン。ロッキー/ライズよりも快適

座面に惹かれた横ラインによって、腰がスポッとはまり込むシート
ロッキー/ライズはサイドサポートがしっかりとしている

人間の骨格を研究してつくられたという新型フィットの「ボディースタビライジングシート」は、座り心地が抜群。

骨盤が支えられて、お尻がスポッとはまるような形状となっており、身体を優しくサポートしてくれます。サイドサポートも優しく脇腹を支えてくれますので、窮屈さをあまり感じません。

ロッキー/ライズのシートは、座面はソフトですが、腰が支えられる感覚はフィットよりも劣ります。ただし、サイドサポートはやや強めに聞いていますので、左右に振られるようなコーナーでは安定したドライビングポジションをキープできます。

両者ともファブリックの座面は柔らかく、面圧が一定に保たれるように設計されていますが、腰回りを優しくかつしっかりとサポートしてくれるフィットの方が上手に感じます。長時間ドライブでも疲れは少ないはず。

■後席シートの居住性はフィット!安全にかつリラックスできるのはフィットのメリット

フロントシートと同等の快適さをもつフィットCROSSTARの後席シート
フィットと比べると、かなり平べったく見える

2台共に後席の座面は、前席と同じくらいに柔らかく座り心地は同等です。しかし、後席シートバックについては、フィットが前席と同じように腰から背中がはまるような凹凸が付いており、サポート性があるのに対して、ロッキー/ライズは比較的フラットで、サポート性が良いとはいえません。

この2台、ホイールベースはほぼ同じですが、後席に座るとフィットの方がさらに広く感じます。それは車両のパッケージングがうまくできているということ。ダッシュパネルの位置がロッキー/ライズよりも車両前方にレイアウトされており、インパネやステアリング、ペダル、前席シートなどがロッキーよりも前方に来ているためです。

あれだけコンパクトな外観なのに、広い後席空間を確保しているのは、フィットのパッケージングが素晴らしいためです。

ロッキー/ライズも後席が狭いわけではないのですが、フィットは、それを上回る後席居住性を持っています。

■後席シートバックを倒した際の広さはフィットの圧勝。高さ方向の空間が非常に広い

大開口のリア荷室をもつフィットCROSSTAR
2列目を倒すと、広大なフラット荷室が現れる
荷室出口の大きさは、ロッキー/ライズの方が小さい
後席シートバックを足すことでフラットになる

荷室エリアの幅や奥行、そして高さなどを実測した結果は以下の通り。

フィットCROSSTAR・ロッキー/ライズ
VDA方式 427L・369 L
地面から荷室までの高さ 650mm・710mm
荷室入口の最大幅 1100mm・1010mm
荷室の最大幅 1160mm・1050mm
荷室の奥行 700mm・730mm
荷室入口の高さ 850mm・730mm
後席シートバックを倒した奥行 1550mm・1550mm

フィットのVDA方式のカーゴエリア容量は427L。ロッキー/ライズの369 Lを遥かに凌駕しています。

フィットの427Lという数字は、同社のCR-V(499Lハイブリッド車)にも迫る数値であり、フィットは、コンパクトカーとは思えない積載性能を持っています。

また、荷室の奥行きはフィットとロッキー/ライズに大きな違いはありませんが、荷室入り口はフィットの方が、90mm幅広く、80mmも高くなっています。地面から荷室までの高さもフィットの方が60mm低くなっており、大きく重たい荷物を積み込む際には、明らかにフィットのほうが積み込みしやすいといえます。

フィットCROSSTARは3ナンバー車とはいえ、元は1695mmの5ナンバーサイズのフィットですので、その荷室パッケージングが非常によくできていることが分かります。

■まとめ

荷室の使い勝手やシートの快適性など、全体を比較しても、フィットの良さが際立っています。ロッキー/ライズも、絶対レベルでは決して悪くはないのですが、フィットがずば抜けて素晴らしい、という状況です。

フィットの弱点を敢えて上げるならば車両価格のみ。さて次回は、この2台の「走り」について、具体的に「良い点、気になる点」に分けてレポートします。

(文:自動車ジャーナリスト 吉川賢一/写真:エムスリープロダクション 鈴木祐子)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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