目次
■VWの「MWB」、ルノー・日産の「CMP」、トヨタの「TNGA」
●3大メーカーが取り組んでいるプラットフォーム戦略とは
2010年以降自動車メーカーは、ユーザーと市場の多様かつ高度な要望に応えるため、クルマ作りを根本から見直しています。具体的には、限られたリソースで短期に高品質のクルマを開発するためのプラットフォーム戦略の構築です。
VWとルノー・日産、トヨタの3大メーカーが取り組んでいるプラットフォーム戦略について、解説していきます。
●プラットフォーム戦略とは
プラットフォームには、「土台」という意味があります。プラットフォームとは、広義の意味ではどの部分ということでなく、基本構成部分を指す概念的な用語です。
狭義の意味は、一般的にボディ内外装部とアッパーボディを除いた骨組み(土台)のシャシー部を指します。
2010年以降、自動車メーカーはさらなる開発効率の向上やコスト低減を狙って、セグメントを超えた広義のプラットフォーム戦略に取り組んでいます。中でも、クルマ全体を独立したブロック(モジュール)に分割して開発するモジュール化は、プラットフォーム戦略の目玉です。
3大メーカーが取り組んでいるプラットフォーム戦略について、解説します。
●VWの「MQB(モジュラー・トランスバース・マトリックス)」
プラットフォーム戦略に初めて本格的に取り組んだのは、2012年に発表されたVWのプラットフォーム構想MQBです。セグメントを超えて主要部品を共通化し、生産コストと開発コストの低減を実現しています。
エンジンの搭載位置、トランスミッション搭載やサスペンション取り付けの共通化だけでなく、電装部品や電子制御システムなども共通化し、電子プラットフォームもモジュール化しています。
MQBは、ポロやゴルフ、パサートなどVW以外にも、アウディのTTやA3などにも適用されています。
●ルノー・日産の「CMF(コモン・モジュラー・ファミリー)」
CMFでは、車体を「エンジンコンパートメント」、「コックピット」、「フロントアンダーボディ」、「リヤアンダーボディ」の4つのモジュールと、これに電子部品をまとめた「電子アーキテクチャー」を加えた5つのモジュールで分割して、車両を構成します。
それぞれのモジュールには複数のバリエーションがあるため、それらを組み合わせることで自由にクルマのサイズやスタイルを変更できます。
最大の狙いは、互換性のあるモジュールによって、ルノー/日産アライアンスのシナジー効果を引き出すことです。そのため、プラットフォームの共有化を一気に採用するのではなく、共有できる部分のコンポーネントをまず共有することを優先させています。
購買から開発までシナジー効果を引き出し、2015年には5000億円に相当する効果を得ました。
●トヨタの「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」
商品力向上とコスト低減の二律背反を両立させることを目標とし、企画、開発、調達、生産のすべての工程から、全体最適を図るプラットフォーム戦略です。
セグメントごとのプラットフォームは残すものの、同じプラットフォームを使う複数の車種を同時に開発する「グルーピング開発」によって、互換性のある部品やシステムを開発するのが特長です。
個別車種の最適開発から脱却して、モジュール化した部品戦略により部品の種類を減らしてコストを低減します。そのコスト低減分を、商品力の向上に振り向ける考え方です。
またTNGAはプラットフォームのモジュール化だけでなく、走行性能や運動性能、乗り心地などクルマの基本性能についても、さらなる向上を実現させる基盤として重要な役割を担っています。
TNGAの第1弾は2015年のプリウスで、その後クラウン、カムリ、C-HRなどに展開しています。
VWとルノー・日産、トヨタの3大メーカーが進めるプラットフォーム戦略には多少の違いはありますが、部品の共用化とモジュール化をベースとしてコスト低減と商品力向上を目標としている点は共通です。
(Mr.ソラン)