開発者自身もS耐に参戦! 2020モデル・シビックタイプRにHONDAのチャレンジスピリットをみた!【井出有治のコレ乗りたい!】

■開発スタッフの情熱が込められた2020モデルのシビックタイプR

●タイプRは今夏、リミテッド エディションは今秋まで待て!

こんにちは~! 2006年、HONDAエンジンでF1参戦の夢をかなえた井出有治です!

今回はHONDAからシビックタイプR 2020モデルの事前説明会にお邪魔してきました。

井出有治さん
シビックタイプR事前説明会でお勉強タイム。暗くなるけど寝ないでね…って言われちゃったけど、前席の方がコックリし出したのが気になって寝られませんでした(笑)!

ボクとHONDAがF1つながりだから…ではなく、2020年はスーパー耐久レース2020のST-TCRクラスに『CIVIC TCR』で参戦するので、そのベースの市販車バージョンであるシビックタイプRへ表敬訪問!?みたいな感じ(笑)。

シビックタイプR
レーシングブルーパールとポリッシュドメタルメタリックという新色の2色を加えた5色で展開される、ベースのシビックタイプR。

会場には2台のシビックタイプRがお披露目されました。白いほう(チャンピオンシップホワイト)はベースとなる『タイプR』で今夏リリース。そして幸せの黄色いシビック(サンライトイエローII)が世界限定1000台、日本限定200台で今秋リリースのスペシャル バージョン『タイプR Limited Edition(リミテッド エディション)』です。

シビックタイプR Limited Edition
シビックタイプRリミテッド エディションのボディカラーは、この鮮やかなサンライトイエローIIのみの設定です。グリル部分やルーフはブラックなので、引き締まった印象です。

●5代目FK8型タイプRの超改良バージョンとして誕生!

NSX、インテグラ、そしてシビックだけに与えられている『タイプR』は、ベース車のエンジン、フットワークなどへ手が入れられたメーカーチューンド バージョンっていうのはご存じの通り。

タイプRのコクピット
レーシーな雰囲気たっぷりなコクピット。ステアリングはフルでアルカンターラが巻かれていて、裏地を2枚重ねにすることでグリップ感がアップしているそうです。

初代シビックタイプRは1997年のEK9でしたね。その後EP3(2001年~)、FD2(2007年~)、FK4(2015年~)、そして5代目現行FK8が登場したのは2017年でした。

今回発表されたシビックタイプR 2020モデルは、2017年に登場したFK8の改良バージョン。その主な変更点は、ブレーキや足まわり、軽量化、ホイールなどです。

タイプRのフェイス
グリル開口部は13%の面積アップ。バンパー下部のエアスポイラーは取り付け部の肉厚アップやリブを追加することで、風圧に負けない性能を確保。また、ラジエターのフィンピッチが3.0mmから2.5mmに変更され、より冷却効率がアップされました。

1ピースドリルドローター(冷却用の穴あきですが、クラックが入りやすいという欠点あり)から2ピースディスクへと改良され、またコーナリング時の熱変位によるディスク倒れが軽減されたブレーキシステム。コーナリングやハンドリング、接地性能向上のためのアダプティブ ダンパーシステムのアップデート。これはミシュラン・パイロットスポーツCup2(リミテッド エディションのみ)との相性も考えられているでしょうね。

シフトノブ
まん丸の球体からティアドロップ型に変更されたシフトノブ。操作性は確実にアップです。

シフトノブの形状も球体からティアドロップ型に変更されました。シフトノブって握ってゲートに入れる…ではなく、シフトノブに『手を添えて送り出す』感じでゲートに入れるんです。球体だとなんか手に引っかかる…みたいなイメージでボクは苦手。この形状変更で、無駄な力を入れずにゲートに送り出すという素早い動きもしやすいと思います。

シートに座る井出有治さん
ウン、このティアドロップ型のシフトノブは操作がしやすそうです。

またBBS社製のホイールや防音材外しなどによるボディの軽量化(ベースのタイプRに対してリミテッド エディション=マイナス23kg)など、タイプRもまだまだ改良できるところがたくさんあったんだ!って感じ。でも、やっぱりクルマは乗ってみないとね。試乗インプレッションを夏以降にぜひ、clicccar読者の皆さんにお伝えしたいです。

マフラー部
タイプRお約束?の3本出しマフラー。両端2本が通常のマフラーのメインパイプで、センターの一回り細い部分って謎ですよね。センターの太鼓部をレゾネーターといって低回転域ではメインパイプにプラス、開口面積アップで音圧を向上。高回転時には不快なこもり音を低減させるという『サウンドチューン』マフラーになっているのです。

●ホイール性能でサーキットのタイムは確実に縮まる!

今回ボクが注目したのは、ホイールです。リミテッド エディション専用のBBS製鍛造ホイールは、10kg(1台)の軽量化が可能になったそうです。でも、ホイールって軽量化だけが重要ではなく…。

BBS社製ホイール
左がベースのタイプR用、右がリミテッド エディション専用のBBS社製鍛造ホイール。ボルトとの接合部、リム厚などを専用開発。強靭かつ軽量の理想的なホイールが誕生しました。

レースでは、タイヤの次に重要なのがホイール。基本的にホイールって微妙にしなっているんですけど、ホイール剛性が高いほうがタイヤを押し付ける力が強いのでタイヤのグリップが上がるんです。

具体的に言うと、ホイールのセンター(ボルトとの締結部)からリムのところでコーナリング時に荷重がかかるためにホイールがしなるんですけど、ホイール剛性が低いと力が逃げてズルズルと横滑りをしちゃう。しかし、剛性が高ければタイヤを押し付けてくれるので、中古のボロボロのタイヤでも剛性の高いホイールを組んだだけで、新品タイヤみたいなタイムが出ちゃうんです。ホイールもタイヤの一部みたいなものなので、ホント大切な部分なのです。

リミテッド エディション
リミテッド エディションには、ミシュラン・パイロットスポーツCup2が専用設定されています。
タイプR
ベース車にはコンチネンタル・スポーツコンタクト6が装着されます。

タイプRリミテッド エディション専用に開発されたこのBBS製。一番力を受けるボルトとの締結部分の根本は、肉を盛ったかたちでしっかりと力を受けとめることをメインに、かつ軽量化も考えたうえで全体的なバランスをとる…、これが一番効率のいい方法と考えて開発されたそうです。

F1でも主要チームはみんなBBS製を履いているでしょ? やっぱり『世界のBBS!』なんですよね。

このリミテッド エディション専用のホイールですが、発売時には『サービスパーツ』として単体でも販売されるそうです。なので、素のタイプRでもリミテッド エディションのホイールパワーが手に入ります。価格は未定だそうですが…!

タイプRのエンジンルーム
320ps/400Nmのパワー&トルクのK20型2L 直4DOHCターボエンジンには大きな変更は無しだそう。手前にある外気エア導入部には、最近起こりがちな冠水時に水が入りにくい工夫もされているんですよ。

■開発責任者・柿沼秀樹さん自らドライバーとしてスーパー耐久レースに参戦!

●シビックタイプRの進化には、開発者自らが参戦するスーパー耐久レース経験が活きているんだろうね

シビックタイプRの開発責任者である柿沼秀樹さんはなんと! スーパー耐久レースのST-2クラスにレーシングドライバーとして参戦していらっしゃるんですよ! 他のドライバーやメカニックもHONDA開発現場のエンジニアを主体とし、全てを手弁当で行っている完全プライベートチーム。マシン制作からエントリーに関してのアレコレの全てにおいて、HONDA本体は一切関わっていないそうです。

Honda R&D Challengeシビック
タイプR開発陣の有志で結成、スーパー耐久レースST-2クラスに挑戦しているHonda R&D Challenge 。2019年はもてぎ5時間レースのみの参戦でした。HONDAファン、シビックファンの皆さん、S耐2020シリーズでは、ぜひ『ボクのST-TCRシビック!!』と一緒に、開発チームの応援をヨロシク!

開発スタッフはレースの現場で鍛える、「本田技術研究所オートモーティブセンター自己啓発レース活動チーム『Honda R&D Challenge』」、凄いですよね!

実際には業務の間でのマシン制作やスポンサーさん探し(←コレ、レースをやる中で一番大事!)も大変だそうですが、それでもシビック開発のためのHONDAチャレンジングスピリットに敬服です!

開発責任者・柿沼秀樹さん
本田技研研究所 オートモービルセンター シビックタイプR開発責任者・柿沼秀樹さん。この日、開発スタッフ全員が黄色いネクタイを締めていました。なぜ?「リミテッド エディションへのオマージュ!」だそうです!!

2019シリーズは「第5戦もてぎ5時間」のみの参戦でしたが、2020シリーズもエントリーリスト(暫定)に『ST-2 #743 Honda R&D Challenge ホンダ・シビック・タイプR』の名があります!

Honda R&D Challenge
ドライバーからマネージャーまで、スタッフ全員がHONDA開発に関わっています。しかし、HONDAの文字はあれど完全プライベーターなので、レース資金集めはタイヘン!って。

ボクがエントリーしているのは『ST-TCR』クラスなので、車両は同じシビックタイプRでもクラスもマシンも違うので(TCRシビックは、イタリアのJASモータースポーツというところで制作されています)、直接のライバルではなくて一安心!?(笑)

井出有治さん
ボクがS耐で乗る『シビックTCR仕様』と市販バージョンのタイプRは全くの別物ですが、柿沼さんチームのシビックタイプRは2017モデルをレギュレーションに合わせた最小限のチューンで戦っています。

シビックタイプR 2020モデルは、S耐レース参戦によりワンチームとなったHONDAチャレンジングスピリットが活きているからこそ、進化をし続けているのだとボクは思いました。2020年、クラスは違っても、同じレースを同じコース上で同じシビックタイプR(をベースとしたマシン)で一緒に戦うことが楽しみです!

と同時に、今回お披露目された市販バージョンのシビックタイプRリミテッド エディションは、ぜひ試乗してみたい1台になりました!

(レポート:井出 有治/文:永光 やすの/画像:長野 達郎・小野田 康信・永光 やすの)

《シビックTYPE R Limited Edition 購入方法/先行公開Webサイト》
https://www.honda.co.jp/CIVICTYPE-R/new/

●問い合わせ先:ホンダ お客様相談センター Tel 0120-112010

この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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