■オールシーズンタイヤも雪道ならかなりの性能を発揮する
最近、注目度が高くなっているのが「オールシーズンタイヤ」と言われるジャンルのタイヤです。オールシーズンタイヤは雪道や凍った道路を走れるとともに、ドライ路面やウエット路面でも高い性能を確保しているタイヤです。
欧州では2016年から2018年にかけてサマータイヤの売上が800万本減っているのですが、かわりにウインタータイヤが300万本、オールシーズンタイヤが500万本増で補完しています。日本の場合、首都圏では毎年決まって雪が降るわけではないものの、降雪に対する不安感はあり、人気や興味が増加傾向が観られます。
横浜ゴムが主催したテストコースでの試乗会で、そんな2種類のタイヤをウインター路面で比較する機会に恵まれました。
用意されたタイヤはスタッドレスタイヤが「アイスガードiG6」、オールシーズンタイヤが「ブルーアース4S AW21」です。テスト車両はトヨタ・プリウス。タイヤサイズは195/65R15 91となります。スピードレンジは、スタッドレスタイヤがQ、オールシーズンタイヤがHでオールシーズンタイヤのほうが高速性能が高いものとなっています。
最初の試乗は室内氷盤路で行われました。スタッフの合図によって20km/hまで加速、アクセルをオフしてブレーキングポイントでフルブレーキを行い完全停止。その後は、フィーリングをチェックしながらスタート地点に戻るというものです。
スタートに関してはほとんど同等で、同じ程度の距離で指定の20km/hに達することができます。ただ、フィーリングとしては最初の一蹴り、グッと加速する際の力強さはスタッドレスタイヤのほうが優れている印象です。
ブレーキングポイントでフルブレーキングすると、スタッドレスタイヤのほうが強い減速力を示します。画像にあるように停止距離は約2倍となりました。氷盤路でスラロームを行ってみると、オールシーズンタイヤでもしっかりとボディが反応します。もちろん、鋭さはスタッドレスタイヤのほうに分がありますが、コントロール不能ではありません。
一番差が出るのは、フルロックまでステアリングを切ったときです。右にフルロックまでステアリングを切って、アクセルを踏んでいくとオールシーズンタイヤはどんどん外側に膨らんでしまいます。対して、スタッドレスタイヤは外側に膨らみながらもしっかりと右に曲がっていくのです。
ステージを圧雪に移してスラロームからのフルターンを試みます。氷盤路面同様にスタートでの差はほとんどありません。スラロームしていくとスタッドレスタイヤのほうがインに寄れる印象があります。オールシーズンタイヤはインに寄せきれないため、だんだんと膨らんでいき動きが大きくなりがちです。圧雪路面でも舵角が大きくなるほど、オールシーズンタイヤの反応が悪くなる傾向は同じでした。
両タイプを乗り比べてみるとスタッドレスタイヤのほうが性能が高いのは歴然としているのですが、だからといってオールシーズンタイヤが使えないという印象は皆無でした。オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤに比べると制動距離などが長くなるぶん、それを考慮した運転が必要ということです。
(文:諸星陽一/写真・図:横浜ゴム)