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■フォーミュラEはラジコン操作に似ている!?
●諦めない青木拓磨選手がジャガー I-PACEでフォーミュラEサポートレースへシリーズ参戦!
2月6日、横浜市内にて車椅子の元GPライダー青木拓磨選手がEVによるレース「ジャガー I-PACE eTROPHY」にシリーズ参戦する事を発表しました。
このレースはジャガー初のEVであるI-PACE(アイ ペイス)をベースとしたレーシングカーのワンメイクレースで、今年2020年で6シーズン目を迎えたEVによるFIAのフォーミュラ選手権、フォーミュラEのサポートレースとして世界を転戦します。
青木選手は、このフォーミュラEの横浜開催へ向けた誘致活動の一環として結成されたチーム「TEAM YOKOHAMA CHALLENGE」からの参戦となり、発表会ではチーム代表を務める(株)フォーミュラークラブの津山覚氏のほか、地元横浜、伊勢佐木町1・2丁目地区商店街振興組合の副理事長も務めるチームコーディネーターの渡辺洋三も会場で挨拶を行いました。
青木選手は、すでにイギリスにあるジャガーのテストコースでテスト走行を済ませているとのことですが、EV特有の加減速のフィーリングをもつI-PACEは子どもの頃、夢中で遊んだラジコンと似ているようで最初から馴染めたそうです。
また、スクーターのようにシフトチェンジがないEVは、手だけで運転しなければならない下肢障がい者にとっては非常にメリットが多く、ハンドドライブ装置を介した操作も非常にストレスの少ないもので、環境負荷だけではないEVのメリットを車椅子レーサー目線で語りました。
●事故後、長い道のりを経てようやく手にした競技ライセンス
振り返ってみれば、かつて青木選手が現在のMotoGPの前身となるロードレース世界選手権GP500で、初シーズンながらシリーズ5位の好成績を納めたのが1997年。しかしながら翌年の走行テスト中に起きた転倒事故により車椅子生活を余儀なくされ、ロードレーサーの道はここであっけなく絶たれてしまいます。
元々あきらめない事が信条の青木選手ですが、再び競技ライセンスを手にするのは10年近くの歳月がかかります。障がい者にとってモータースポーツライセンスの取得には様々な高いハードルがあったのです。
苦労の末2007年にやっと手にしたライセンスは、レース除外という条件付きのもので、青木選手のフィールドだったサーキットでのレース活動は叶わず、ピックアップトラック4WD車によるラリーでのモータースポーツ復帰となりました。
その後一つ一つ問題をクリアし、今ではサーキットでのレースにも参戦できるようになり、今年2020年6月にル・マン24時間レースへの挑戦をするまでになっています。
●電気のF1、フォーミュラEを横浜へ!
今回挑戦する「ジャガー I-PACE eTROPHY」は、市街地コースで開催されるレースです。使われるマシンは青木選手曰く、1.9t近くとレーシングマシンとしては重量級ですが、2t近くある4WDマシンをコントロールし一般道で競技してきたラリーでの経験は、カテゴリーが違うとはいえちょっぴりココでも生きそうです。
今回のプロジェクトは先にも述べた通り、フォーミュラEの横浜開催を目指した取り組みの一環ですが、海なし県(群馬県)で生まれ育った青木選手にとって横浜は憧れの地で、免許を取ってからはよく遊びに来ていたそうです。子どもの頃、夢中で遊んだラジコンのモーターのフィーリング、ラリーで経験した重量級4WDのコントロールなど、今日までの様々な経験が今シーズン参戦する「ジャガー I-PACE eTROPHY」にはたくさん詰まっているようです。
なお「ジャガー I-PACE eTROPHY」は実は2019年末からシーズンが始まっており、サウジアラビアで開催された第1戦、第2戦は終了。青木選手はメキシコで2月15日に開催される第3戦からの参戦となり、イギリス・ロンドンで行われる最終戦までの7レースへ出場します。
かつてのグランプリライダーの憧れの地でフォーミュラEが開催されるよう、ジャガーI-PACEの素晴らしい走りをぜひ我々に魅せて欲しいものです。
(文・画像:高橋 学)