■燃料電池バスとFCVの同時充填が可能なオンサイト方式の大型水素ステーション
2020年1月16日、東京ガスと日本水素ステーションネットワーク(JHyM)が共同で建設した「東京ガス豊洲水素ステーション(豊洲ステーション)」の開所式が行われました。
豊洲ステーションは日本初の燃料電池バスの大規模受入可能なオンサイト方式水素ステーションであり、全量カーボンニュートラル都市ガスを使って、この水素ステーションで製造されます。
開所式には、経済産業省、東京都、江東区の担当者が水素ステーション、水素社会への期待を挨拶で述べていて、江東区では万一の災害時でも稼動できる水素ステーションということにも期待をしているそうです。
開所式で「水素社会の実現に向けて貢献したい」と挨拶した東京ガスの穴水 孝副社長は、その後の囲み取材でホンダといすゞが燃料電池の大型トラックを共同開発するという発表について触れ、水素ステーションというインフラの整備と共に、FCV(燃料電池車)や燃料電池バス(FCバス)、そしてFCトラックなどの燃料電池車の普及も水素社会に実現に欠かせないという認識を示しています。
豊洲市場に近い豊洲ステーションは、日本初のFCバスの大規模受入が可能なオンサイト方式の水素ステーションであり、2系統の主要設備を備えています。つまり、FCVバスとFCVの同時受け入れ(同時充填)が可能になっています。
そのため、敷地が約2,000平方メートルと通常の水素ステーションよりもかなり広く、建設費用(設備投資)も通常、5〜6億円といわれる水素ステーションよりもかかっているそう(倍まではならない程度)。なお、豊洲ステーションは、経済産業省の「燃料電池自動車の普及促進に向けた水素ステーション整備事業費補助金」や東京都の「燃料電池自動車用水素供給設備整備事業」の補助金を活用しています。
■カーボンニュートラル都市ガスから製造された水素を供給
先述したように、同ステーションは水素の原料に全量「カーボンニュートラル都市ガス」を使っています。これは、東京ガスがシェルグループからLNGを調達する際に、天然ガスの発掘から燃焼に至るまでの工程で発生するCO2と、シェルが保有するCO2クレジットを相殺するカーボン・オフセットの「カーボンニュートラル都市ガス」を原料として水素を製造する日本で初めての水素ステーションになっています。
東京ガスが運営する水素ステーションとしては、練馬、浦和、千住に続いて4か所目になり、日本では112か所目。
また、東京オリンピック・パラリンピックを控え、東京都では2020年にFCバス100台以上の普及を目指していて、FCバスに対応した水素ステーション建設が必要とされています。そのニーズに対応するため、東京ガスは環境面、防災面に優れた魅力的な街づくりが進む豊洲地区に、オンサイト方式の豊洲ステーションを建設し、燃料電池バスを含めた燃料電池モビリティの普及と水素供給基盤の確立に貢献するのも役割としています。
豊洲ステーションのトピックスは、効率的な水素貯蔵、急な重要変動に対応できる東京ガスの特許技術である「水素貯蔵バンク」の採用をはじめ、2台同時充填、圧縮機直接充填により、充填待ちの低減・充填時間の短縮が図られている点。
さらに技術面では、水素製造装置を採用。タイマー起動、運転継続性向上の制御ロジックの追加がされています。日本では初(商用第1号)となる水素圧縮機は、シンプルな構造で高い耐久性が期待されるダイアフラム式が採用されています。さらに、82MPa蓄圧器(コスト面から40MPa蓄圧器も併用)の適用も商用第1号で、低コスト、高耐久、軽量化が図られています。
ほかにも、数百か所に溶接が導入された配管継手、外部から水素トレーラーなどの水素受入設備、将来の無人化に向けた遠隔監視機能、セルフ対応設備になっています。なお、水素充填の価格は東京ガスの水素ステーションでは1,100円/kgなのに対し、同ステーションでは1,600円/kgになっています。充填圧力は82MPa。走らせ方により異なりますが、FCVの場合、1kgで100km程度の走行が可能。充填時間はFCVが3分程度、FCバスは10分程度となっています。
(文/写真 塚田勝弘)