■売れているのはCX-30とMAZDA3だけ? 改名したMAZDA2の販売も落ち込んでいる
マツダCX-30の受注が好調といいます。キャビン、ラゲッジともに実用的なスペースを確保しながら、多くの立体駐車場に対応するなど国内でも扱いやすいボディサイズや流行りのクロスオーバーSUVらしいスタイリング、先進安全装備・先進運転支援システムが充実していることも支持されているポイントでしょう。
マツダのイメージカラーであるソウルレッドクリスタルメタリックなど高級感のあるボディカラーによってクラスレスなイメージであることも魅力のひとつといえます。
2019年10月24日の発売から2か月後となる12月25日に発表された初期受注は12,346台。月販目標は2,500台ですから、倍以上の受注を集めているというわけです。これほど売れているのであれば、マツダの工場はフル稼働につぐフル稼働と思いがちですが、そうではなさそうです。
2019年11月の国内生産(乗用車)は全体として80,526台で前年比マイナス14.2%と大きく落ち込んでいるのです。つまり生産能力を活かしきれていないといえます。同月における車種別生産台数でいえばCX-30が10,550台、MAZDA3が12,872台(輸出分含む)となっていますが、CX-5は前年同月比マイナス16.3%の33,507台に留まっています。
さらに国内販売の落ち込みは厳しい数字が並んでいます。同じく2019年11月の国内販売台数(乗用車)は前年比マイナス30.6%となる11,180台となっているのです。CX-30が2,689台、MAZDA3が1,582台と好調に売れている反面、既存モデルの販売台数が減っているといえます。
たとえばMAZDA2は、改名前のデミオを含めても2,102台で前年比マイナス33.8%と発表されています(以上、マツダ調べ)。そのほか、CX-5は1,321台で前年比25.4%、CX-8は前年比48.0%の953台となっています(以上、自販連調べ)。
CX-30が好調なのは悪いことではありませんが、明らかに自社ラインナップ内でのカニバリ(共食い)が起きているといえます。グローバル市場での販売状況を見ても、CX-3の販売台数が前年比マイナス18.5%と落ち込んでいるのは、CX-30の影響といえるでしょう。
ただし地域別に見ると、北米市場で前年比18.0%増、中国市場で前年比12.8%増、さらに欧州市場では前年比21.7%増となるなど、いずれも好調で、マツダの販売が沈んでいるのは日本国内市場だけと見ることもできます。こうした数字から想像すると、CX-30があまりにも国内ニーズを満たしているため、そこに人気が集中してしまったゆえの短期的な現象といえるかもしれません。
とはいえ、マツダの国内販売は好調といえない状況から脱却できずにいます。CX-30のスタートダッシュと全体の販売状況からすると、せっかく魅力的な商品をラインナップに加えても、それによって新規のユーザーを取り込めていないことが見て取れます。
SKYATCTIVテクノロジーや魂動デザインに基づくマツダのクルマづくりはプロダクトアウトのテイストが強く、玄人受けする内容を持っています。しかしながら、少なくとも国内向けにおいては、その方向だけでは現状を打破できないということを、CX-30の好調と国内販売の落ち込みという2つの数字は示しています。
はたして、マツダの国内販売が好転するには何が必要なのでしょうか。マツダがこのところ続けている、プロダクトアウトを押し付けるマーケティングでは改善するのは難しいといえそうです。
(山本晋也)