現役リーフオーナーには実質値上げに感じられる、日産の新しいEV用充電サービスの狙いとは?

■これまでは充電し放題で月額2000円、新プランでは月100分の利用で月額2500円となる

日産自動車が、電気自動車(実質的にはリーフ)オーナーのために展開している充電サービスが「ZESP(ゼロエミッションサポートプログラム)」です。リーフのデビューに合わせて登場したZESP1は充電だけでなくメンテナンスや電欠時のレスキューなども含めたサービスで、スタンダードプランは月額3000円でした(以下、価格は税別)。

その後、はじまったのがZESP2です。こちらは日産ディーラーや高速のSAなどにある急速充電器が無制限に利用できる使い放題プランで、月額2000円という設定がインパクト大。非常にオトク感のあるもので「旅ホーダイ」のキャンペーンもあって、リーフの普及に一役買いました。

そして、2019年12月16日より新しい充電サービスとして、ZESP3が始まることが発表されました。どんなサービス内容になっているのか、非常に気になります。

初代リーフのメーター
初代リーフ(30kWh)をフル充電したときのメーター

ZESP3の料金プランは、4種類が用意されています。

まず従量課金制の「シンプル」プランは月額500円で急速充電器を利用すると500円/10分、普通充電では1.5円/分の利用料を都度支払うもの。ZESP2にも似たような「つど課金プラン」がありましたが、月額1000円で、急速充電の利用料が15円/分、普通充電が1.5円/分となっていました。ここだけを見ると値下げといえそうです。

しかし、実際にはほとんどのリーフオーナーはZESP2では月額2000円の「使いホーダイプラン」に加入していることでしょう。こちらのサービス内容は前述のように日産ディーラーやコンビニ、サービスエリアなどにある急速充電器が使い放題。他メーカーのディーラーなどにある急速充電器の利用料は15円/分、普通充電器は1.5円/分という設定となっています。

高速道路のSAで急速充電
高速道路のサービスエリアに設置されている急速充電器

では、新たに設定されたZESP3の「プレミアム」プランの料金体系はどのようになっているのでしょうか。

ZESP3の「プレミアム」プランは「プレミアム10」「プレミアム20」「プレミアム40」と3種類が用意されています。

それぞれ数字はプランに含まれる月々の急速充電の回数を示しています。「プレミアム10」であれば、急速充電を10回まで使えるという意味です(10分で1回とカウントして、余った分は翌月に繰り越せます)。それぞれ月間走行距離の目安として800km以内なら「プレミアム10」、1600km以内なら「プレミアム20」、1600km以上のユーザーには「プレミアム40」が推奨されています。

月額基本料金は「プレミアム10」で4000円、「プレミアム20」が6000円、「プレミアム40」は1万円となっています。また、急速充電の利用回数については月間の上限を超えると「プレミアム10」で350円/10分、「プレミアム20」が300円/10分、「プレミアム40」は250円/10分の料金が必要ということです。

三菱のディーラーで充電する日産リーフ
日産リーフを三菱のディーラーで充電するときはZESP2では15円/分の料金がかかります

筆者は初代リーフ(30kWh)を月間500kmくらいのペースで走らせていますが、その感覚では週に一回10〜15分程度の急速充電をしておけば事足りるという印象です。つまり月間での急速充電器の利用は5〜6回程度ですから「プレミアム10」で問題なくカバーできるとは感じます。しかし、これまでは月額2000円で急速充電器が使い放題でしたから、4000円という月額は大幅な値上げに感じます。

なお、3年間の定期契約をすると月額から1500円が割引されるということなので「プレミアム10」であれば実質2500円になります。それでもZESP2よりは値上げです。

距離を走るユーザーであれば、「プレミアム40」に加入するでしょうから、そうなると2000円から8500円への大幅な値上げといえます。

また、使い勝手の面でも悪くなっています。とくに充電の利用回数を10分単位でカウントするということは、10分を1秒でも超えると2回分と数えられてしまうことを意味しています。ただし、これまでは充電ホーダイということで必要以上に充電しているクルマがいると充電待ちの列ができることもありました。10分以内に切り上げるユーザーが増えれば急速充電器の回転率は改善することは期待できます。

もうひとつ、変化を感じるのは「プレミアム」プランであれば普通充電器が使い放題になっていることです。最近では時間貸しのコインパーキングなどで有料普通充電器を併設しているところも増えていますので、普通充電器の使い放題はメリットといえます。

よく知られているようにリチウムイオン電池のライフを伸ばすには急速充電より普通充電を使うべきです。ZESP3への改定は、ユーザー意識が急速充電から普通充電へシフトするきっかけになるかもしれません。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる