ホイールベースを延長し、乗り味に上級さを増したアウディの最小モデル【アウディA1スポーツバック35TFSI試乗】

●コンパクトモデルとは思えないほどの快適さを持つA1

アウディの最小モデルであるA1が登場したのは2010年のことです。初代は当時のフォルクスワーゲン・ポロとプラットフォームを共有して作られました。今回試乗した新型は2019年にデビューした2代目にあたり、やはり現行のVWポロとプラットフォームを共有しています。

アウディA1 前7/3スタイリング
力強い表情を持つフロントスタイル。グリル上の3分割スリットはアウディスポーツクワトロへのオマージュ

全幅は先代と変わりませんが、全長は55mm、ホイールベースは95mmも延長しています。先代もアウディA1は比較的しっとりした乗り心地を確保していたモデルですが、このホイールベース延長によってその味付けはさらに強調された印象です。

コンパクトモデルとは思えないほどの快適さを持っているのがアウディA1の魅力と言えるでしょう。プラットフォームを共有するポロが軽快な走りをウリにするのに対し、プレミアムブランドであるアウディが快適さを追求したのは当然のことだと言えます。

アウディA1 正面スタイリング
全幅は先代と同一。前面東映面積は2.07平米、cd値は0.31と低い
アウディA1 真横スタイリング
ホイールベースの延長量に対し、全長の延長量は少なく、結果オーバーハングは減っている
アウディA1 真後ろスタイリング
水平基調の配置のなかにエッジの効いたリヤコンビランプを与え、力強さを強調している

エンジンは1.5リットルの直列4気筒ターボで、最高出力は150馬力、最大トルクは250Nmを発生します。ミッションは7速のツインクラッチ方式でアウディではSトロニックと呼んでいるタイプです。発進からダイレクト感のある加速、そしてシームレスなシフトチェンジは先代どおりです。

比較的ゆったり目のシャシーセッティングとの組み合わせによって得られるのは、まさにプレミアム方向だと言えます。アウディの方向性としては正しい方向なのだと思います。ただ、A1クラスのボディが大きくなるのはどうなのでしょう?

アウディA1 エンジン
150馬力/250Nmを発生するエンジン。気筒休止機構を備え、数ミリ秒単位でコントロールされる
アウディA1 インパネ
10.1インチのタッチスクリーンを採用したナビを装備するインパネ
アウディA1 フロントシート
調整機構は手動となるが、テレスコピック機構を含め調整幅が広く、さまざまな体型でのベストポジションが得られる
アウディA1 リヤシート
95mmも延長されたホイールベースはリヤシートのスペースに大きく影響。ヘッドルームが+7mm、ショルダールーンが+36mm、エルボームルームが+29mm増やされている

ある時期、欧州車はフルモデルチェンジのたびに大きくなる傾向が続いていました。フォルクスワーゲンはゴルフが大きくなってポロが出て、ポロが大きくなってルポが出て…ということが起きました。

そうした現象も一段落かなと思っていたのですが、新型A1はサイズアップをしてきました。もっともコンパクトなモデルを大きくしてしまうと次がどうなるか心配です。しかもアウディはアルファベット+数字で車名としてるので、そのうちA0登場するの?と思ってしまいます。今回登場したのはスポーツバックと呼ばれる5ドアハッチバックなので、先代のように3ドアが出て、そちらはコンパクトにまとめてあれば、ちょっと安心できます。

アウディA1 ラゲッジ標準
定員乗車時のラゲッジスペースの容量は335リットル。先代より65リットルも多い
アウディA1 ラゲッジ最大
リヤシートを倒した際のラゲッジスペース容量は1090リットルを確保。フラットにはならず、シートバック下部の処理がすこし甘い
アウディA1 Sライン外観
ブラック仕上げの大型エアインレット、マットプラチナムグレーのフロントスポイラーブレードなどを装着。スポーツサスを採用するSライン

(文/写真・諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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