カローラスポーツ vs ゴルフ7、内装比較で分かった「使い勝手の違い」【カローラスポーツ&ゴルフ7比較】

■運転のしやすさはカローラスポーツ、荷室の使い勝手はゴルフ、インテリアの質感は?

Cセグメントの王様「ゴルフ」、そして日本を代表する「新世代のカローラスポーツ」。同じハッチバックボディとはいえ、そのパッケージングや室内の作り、そして荷室の使い勝手は、実際に見てみないと分からないことがあります。今回、カローラスポーツとゴルフの、シートや運転席からの視界、内装・荷室を徹底比較してみました。
ゴルフ7はTSIハイラインマイスター。カローラスポーツはハイブリッドのG”Z”

1.運転席からの視界の広さはどうか?
2.前席・後席シートの座り心地はどうか?
3.荷室の広さの違いはどうか

 1. 運転席からの視界の広さはどうか?

カローラスポーツの良い点のひとつが「運転席からの視界」です。特にフロントサイドの小窓が大きく設計されており、またドアミラーとなっていることで、フロント左右の状況を確認しやすい点は、ゴルフに対して勝っています。ゴルフにも小窓はありますがサイズが小さく、また太いAピラーも災いし、身体を前に出してのぞき込まなければ見えません。

また、ナビなどで使用するモニターの位置も、カローラは、ダッシュボードの上方にレイアウトされており、画面を確認する際、運転中の視線移動量が少なくてすみます。ただし大型モニターは、ドライバーと水平になっているため、画面左端のスイッチ操作は手を伸ばさないとなりません。

シンプルなつくりのカローラスポーツ。ステッチやソフトレザー、スウェードなど部分的にあしらっている。
対するゴルフのナビモニターはインパネ中段に組み込まれており、上下方向の視線移動量が大きいです。とはいえ、そんなことはフォルクスワーゲンも把握済みであり、次のゴルフ8ではフルデジタルメーターと水平線上にモニターが並びます。また、モニターを含め、インパネ全体が、ドライバー側に傾斜しているため、ワイドなモニターでも操作がしやすく調整されています。
ゴルフ7は落ち着いたデザインで精巧な作りのインテリア。デジタルメーターなど先進性が高い。
現時点では、運転視界の広さはカローラスポーツの方が優れているといえるでしょう。

2.前席・後席シートの座り心地はどうか?

今回のカローラスポーツで、特筆すべきアイテムのひとつがフロントシートです。過度に身体を固定していないにもかかわらず、サポート性が高くできています。これは、腰周りや脇腹を中心に身体を支えるシートの形状、得に背中側のシートバック形状の作りが優れているためだと考えられます。カローラスポーツやツーリングに採用されているスポーツシートだけではなく、カローラの標準シートでも共通した利点であり、旧カローラとは一線を画す劇的に良くなったシートです。ただし後席は尻下のクッションがやや硬めです。身体がシートへ沈み込むようなことはない張りの強いシートです。

腰を中心に、肩のサイドまでをホールドするカローラスポーツの運転席シート。
後席周りは狭くはないが、前席のシートバックが大きいため、圧迫感がある。
対するゴルフの運転席シートは、カローラとは違う見た目をしていますが、ホールド性が高く、クッション性も高い快適なシートです。尻下のクッションは「モチモチ」とした感触で、体重をかけても底突くことがなく、厚みのある本革シートに座っている印象です。この感触はリアシートでも同様で、表面の1~2センチは柔らかく、その奥に、コシのある柔らかみがあるような印象です。
腰回りのサポートがカローラスポーツよりも強め。尻下のクッションはゴルフの方がソフトで弾力があり、良い革シートに座っている印象。
左右のウィンドウがひろく、見晴らしがよい。シートもソフトで座り心地が良い。
よって、前後席のシートの筆者の総評は「ゴルフの方が上」です。

3.荷室の広さの違いはどうか?

VDA方式では、カローラスポーツは352(未公表)リットル、ゴルフ7 380(1270)リットルと、ゴルフの方が7.4%も大きな数字です。
2段底になっており、見た目より荷物は多く詰める。荷室の縁の高さがゴルフよりも高い。
荷室が広いのはゴルフ。縁の処理もフラットになる様に作られている。

ちなみにカローラツーリングは392(802)リットル、カローラセダンは429リットルと、カローラスポーツはセダンにも劣るという容量なのです(※カッコ内は後席シートを倒したとき)。ただしカローラスポーツは、荷室の下を2段調整ができる底にしており、使い勝手を良くするように工夫をされています。ただ、実際の使い勝手を考えると、さらに気になる点があります。

※VDA方式・・・ドイツ自動車工業会が定めた、200×100×50mm(容量1リットル)のテストボックスをラゲッジスペースに詰め込み、その入る個数を容量としてカウントする指標

例えば、地面から荷室までの高さ。カローラスポーツが73センチに対してゴルフは68センチと、5センチもゴルフの方が低い点。荷室の間口の幅は、カローラスポーツが96センチ(105センチ)に対してゴルフは100センチ(105センチ)など、荷室の広さ、使いやすさはゴルフの方が上手です。カッコ内は最も広い場所での幅です。

縁の処理が惜しい。バンパー部分に段差があるため余計に高くなっている。
荷室までの高さが低く、荷物は載せやすい。
奥行きについては、カローラスポーツが73センチに対してゴルフは73センチ、後席シートを倒した状態だとカローラスポーツが160センチに対してゴルフは155センチでした。カローラの方が、奥行きが大きいのに、VDAの容積が小さいのは、見た目の通り、バックドアの絞り込みデザインの影響でしょう。
長さ方向は2台ともにそれほど変わりない。
ゴルフはフラットにはなるが、後席の背もたれ部分はやや持ちあがっている。

●まとめ

新世代カローラのインテリアが、格段に質感が上がったとはいえ、いまだゴルフの方が作り込みには高級感が漂っており、両車とも370万円前後という車両価格を加味すると、カローラスポーツのクオリティは追いついていないように感じます。次回は、この2台の「走り」について、具体的に「良い点、気になる点」に分けてレポートします。

(文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)

【カローラスポーツ&ゴルフ7】視界やシート性能、荷室の使い勝手の違いをチェック

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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