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■A1とQ2。どこが似ていてどこが違うのか
近年、コンパクト市場に魅力的なモデルを投入しているアウディ。その最新モデルが11月1日に登場した2代目A1 Sportbackなのですが、Q2に乗っている筆者はこのクルマを一目見るなり、「可愛さがQ2とかぶるなあ」と感じました。A1 Sportbackが365万~391万円、Q2が312万~419万円と価格的にも接近していますしね(※現状A1 Sportbackは1.5リッターモデルのみ。1リッターモデルは2020年第3四半期導入予定です)。
そこで箱根で行われた試乗会に出かけて、どこが似ていてどこが違ったか、印象をレポートしようと思います。
●室内の広さはほぼ同等
まずは駐車場に止められたA1 Sportbackを舐めまわすように眺めてみました。デザイン的にはQ2と同じ「言語」を使ってはいるものの、Q2ほどペキペキなプレスラインを強調してはいません。代わりに、偉大なアイコン、アウディ・スポーツ・クワトロから引用したフロントグリル上のスリットと幅広のCピラー、張り出し感のある前後フェンダーが個性をアピールしています。発表時にも書きましたが「怒った子犬」感が実に可愛い。
ボディサイズは全長4040mm、全幅1740mm、全高1435mm。これはQ2に対して160mm短く、55mm狭く、65mm低い数値ですが、先代から95mmも延びたホイールベースが小ささを完全に補っています。2560mmという長さはQ2の2595mmと35mmしか変わらないので、後席の広さはQ2とほぼ同じです。
●インパネ周りはA1 Sportbackの新しさに軍配
実際にシートに座ってみると、Q2に比べてウインドウ下端のレベルが低く開放感があります。SUVであるQ2は立ち気味の運転姿勢ですが、A1 Sportbackはハッチバックらしくシートバックを寝かせ気味にできるので、走る気になりますね。
いっぽうラゲッジルームの広さはQ2に軍配が上がります。Q2はラゲッジのフロアパネルを深くすることもできるので、奥行はもちろん深さでも有利なんですね。とはいえA1 Sportbackのラゲッジが狭いわけではありません。先代に比べて65リットルも拡大されていますし、いざとなればリアシートバックを倒せばいいのです。
インパネ周りは時代の進化を感じさせます。Q2ではダイアル操作だったMMI(マルチメディアインターフェイス)が液晶のタッチパネルになったため、センターコンソールのボタンが減ってすっきりしました。ライトスイッチも常時点灯の法改正を受けてロータリ―式からボタン式に変更、基本的にはAUTOにしておけば触れる必要がありません。インテリア全体のたたずまいは、多角形をモチーフにしたモダンな造形。液晶パネルなどセンターコンソールが運転席側を向いたあつらえになっている点も、Q2にはない「やる気スイッチ」です。
●走り出したらA1のよさが一目瞭然
ここまで、駐車場のすみっこであれこれと違いを探していた筆者ですが、いざエンジンをかけて走り出したら、Q2にはないA1 Sportback最大の美点が一瞬で分かりました。ワインディングのQ2は意外にもスポーティで、富士スピードウェイの帰路に道志みちなど走ると楽しくて仕方ないのですが、A1に乗ってしまうと残念ながらSUVであることを感じざるを得ません。
Q2のエンジンは、A1 Sportbackと同じ150ps/25.5kgmを発生するシリンダーオンデマンド(気筒休止機構)付き4気筒ターボなのですが、A1 Sportbackより0.1リッター小さい1.4リッターです(ボアは同じでストロークが5.9mm短い)。
その排気量差がどれくらい効いているのか分かりませんが、走りの印象はA1のほうが断然低重心で、軽快です。アクセルレスポンスにボディが瞬時に応え、ノーズの入りもシャープ。駆動方式はFFですが、大舵角を当ててもトルクが抜けず、うねった路面にもスタビリティが高いリアがしっかりついてくる感じ(タイヤは215/45R17のBSトランザT005)。1220kgと、アウディ車としてはことのほか軽い車重も効いているのでしょう。ホットハッチという言葉はもはや死語かもしれませんが、A1は間違いなくその系譜にあるスポーティな1台だと感じました。これこそA1 SportbackとQ2最大の違い。A1 Sportbackに乗っていると、永遠に道が曲がっていてほしいと思えるのです。
可愛さでは共通と思っていた2台でしたが、箱根で走らせたA1 Sportbackは素敵さが際立ち、Q2との違いがはっきりと分かりました。「家族もいるし日常用途がメインだけど、どこか走りが諦めきれない」。クルマにそんな期待を抱く方は、ぜひ一度ステアリングを握ってみてください。
(文:角田伸幸/写真:中野幸次、clicccar)
※エンジン排気量に関する記述を訂正いたしました(2019年11月27日)