スーパーGT最終戦もてぎを終えたModulo勢34号車、64号車の2台。2019後半で得たものは?【SUPER GT 2019】(PR)

タイヤのアップデートがキモとなった64号車の富士500mile

GT500の64号車 Modulo Epson NSX-GTは第3戦鈴鹿以外すべてポイントを獲得しているしぶとさがあります。しかし今シーズンのこれまでの予選ではすべてQ2進出ならずという結果でしたが、この富士500mileでは一味違います。

富士500mileでのModulo Epson NSX-GT
富士500mileでのModulo Epson NSX-GT

牧野任祐選手が予選Q1を1分29秒287というタイムでQ2へ進出。これまでトップとのタイム差が1秒以上ありましたが、今回は0.3秒程度。「ダンロップが用意したニュースペックタイヤがかなりいい」と牧野選手が語るように、これまでModulo Epson NSX-GTの欠点とされてきたタイヤが大幅にリニューアルしたのです。

富士500mileでのスターティンググリッド
富士500mileでのスターティンググリッド

結果的には予選7番手からのスタートとなったModulo Epson NSX-GT。スタートドライバーは牧野選手が努めます。その牧野選手はスタートから快調に飛ばし、5周目までにはなんと3位まで浮上します。

富士500mileでのModulo Epson NSX-GT
富士500mileでのModulo Epson NSX-GT

その後、ナレイン選手がGT300マシンと接触するなどしてドライブスルーペナルティーとなるなどでポジションを落としてしまいますが、他のライバルチームが続々とクラッシュ、出火などでセーフティーカーが入るような状況となってもしぶとく走りきります。

富士500mileでのModulo Epson NSX-GT
富士500mileでのModulo Epson NSX-GT

結果は10位とこれまでとはあまり変わらないように見えますが、そのポテンシャルの大幅なアップは残り3戦で大きな期待を抱くに充分なのではないでしょうか。

64号車、オートポリスで7位と着実に上がる戦闘力

9月8日に行われた第6戦オートポリス300kmの決勝。

オートポリスでのスターティンググリッド
オートポリスでのスターティンググリッド

9月7日の予選では、荒れた路面との相性が合わずに良いフィーリングをつかめぬまま、13位からのスタートとなってしまったGT500の64号車 Modulo Epson NSX-GT。しかしスタート直後の序盤に1号車 RAYBRIG NSX-GTがアクシデントでSCが導入されると、前を行くライバルとの差は一気に詰まり、大きな差が開くことなくレースは進んでいきます。20周目辺りから第一コーナー周辺で降り出した雨によりウェットとドライが混在する状況でもナレイン・カーティケヤン選手はうまく走り、22周目辺りではポジションを一つ上げていきます。

オートポリスでのModulo Epson NSX-GT
オートポリスでのModulo Epson NSX-GT

28周目にピットインをしますがこの時は晴れ間が見え始めたためでしょうか、タイヤを再びスリックタイヤに交換、牧野任祐選手に交代して14位のポジションでピットアウトをしていきます。

しかし30周目辺りからホームストレートを除くほとんどのコース上は大粒の雨となってしまい、Modulo Epson NSX-GTは35周目で再びピットイン。レインタイヤに履き替えます。

オートポリスでのピットの様子
オートポリスでのピットの様子

一見無駄な作業のように思えた2度目のピットインによるレインタイヤへの交換ですが、その直後にGT300マシンによるコースアウトのためにSCが導入され、前を走るライバルとの差が縮まると、結果的に2度目のピットインのタイムロスが帳消しになるという事になりました。2度目のSCが解除された直後に再び3度目のSCが導入され、2回のピットインによるタイムロスは全く無くなってしまったという状況となると、そこからはレインタイヤ優勢の路面状況が続き、スリックタイヤを履いたライバルを次々と抜いていき、7位でチェッカーを受けることとなりました。

牧野選手
牧野選手

中嶋悟総監督はレースを振り返り「天気予報やドライバー牧野選手からのフィードバックでレインタイヤに履き替えたのが結果的に良かったし、とにかく今回は2人のドライバーがこの厳しい状況でよく頑張ってくれた結果だと思います」と語ります。Modulo Epson NSX-GTを7位に押し上げた牧野任祐選手は、「レインタイヤに履き替えてからすぐは調子が良かったのですが、そこからのタイヤの(グリップ)落ちに苦労しました。周りのブリヂストン勢もかなりタイヤが落ちてきたようなので結果的には今できるベストを尽くして十分に戦えましたが、目の前を走る6号車(WAKO’S 4CR LC500)を抜ければもっと良かったと思います」と語ります。

オートポリスでのModulo Epson NSX-GT
オートポリスでのModulo Epson NSX-GT

厳しい状況でこそ結果を残してきたModulo Epson NSX-GT。その戦闘力は確実に上がってきています。

SUGOで念願の表彰台に立った64号車

SUGO300kmでは予選Q1を2位、そしてQ2を6位という今シーズンの最高位としたGT500クラスの64号車 Modulo Epson NSX-GT。そのスターティンググリッドは3列目の6番グリッドとなります。

SUGOでのスターティンググリッド
SUGOでのスターティンググリッド

スターティンググリッドに並び始める頃に降り出したごく細かい雨でタイヤの選択を迫られ、スターティンググリッドは慌ただしくなっていきます。そんな中、Modulo Epson NSX-GTはレインタイヤを選択。そしてスタートドライバーはナレイン・カーティケヤン選手。スタート直前に強くなりだした雨のためレースはセーフティーカー(SC)スタートとなります。

3周のSCランの後、4周目からレーシングスピードによるレースが始まるとModulo Epson NSX-GTのナレイン・カーティケヤン選手は一つでも順位を上げていこうと果敢に前走者を攻め込みます。しかしウェットのSUGOはかなり難しい様子でスピンを喫してしまい7位となってしまいます。しかしナレイン・カーティケヤン選手は「ウエットのコンディションとタイヤが合っていた」と語っており、調子が上がってきたからこそスピンをするまで攻め込むことが出来たということだったようです。

SUGOでのModulo Epson NSX-GT
SUGOでのModulo Epson NSX-GT

そして27周目にピットイン。牧野任祐選手に交代します。27周目からしばらくは若干雨量が減り、牧野選手曰く「レインタイヤがオーバーヒート気味」であったといいます。しかし37周目に思わぬ事態が発生。GT500のライバルチームがコースアウトし動けなくなってしまい、39周目にSCが導入されたのです。

「このSCでオーバーヒートしたタイヤを適正まで冷やすことが出来ました」と語る牧野選手。その言葉通りSC解除後の快進撃は凄まじく、水しぶきが上がりウォータースクリーンで視界が全くない状態でも1分21秒台での走行を続けていきます。

SUGOでのModulo Epson NSX-GT
SUGOでのModulo Epson NSX-GT

気迫のようなものを感じさせる走りは、正直なところ今シーズンの中で初めて見せたものと言えるでしょう。まさに水を得た魚。

表彰台の牧野選手とナレイン・カーティケヤン選手
表彰台の牧野選手とナレイン・カーティケヤン選手

そして今季初の表彰台となる2位でチェッカーを受けたのです。中嶋悟総監督はこの2位について「とにかく 2 人のドライバーとメカニックたちの頑張った結果だと思います。言うことなしです!」と語ります。また牧野選手は後半の追い上げについて「雨量が多くなり自分たちにとってアドバンテージがあるコンディションになって天候が自分たちの味方をしてくれました。ずっとマシンのコントロールが難しかったですがそんな中でもいいレースができたので、今できることはしっかりできたと感じています。ここまで苦戦していましたがタイヤの開発をしてきたことがかたちになってよかったと思います」と語ります。

喜びのレースクイーン
喜びのレースクイーン

明らかに強さを持ってきたModulo Epson NSX-GT。最終戦もてぎへの期待も大きくかかります。

タイヤの合わせ込めずに2度のピットインを喫してしまった64号車の最終戦もてぎ

最終戦もてぎ250kmでは予選Q2へ進出し決勝を7番手からスタートしたModulo Epson NSX-GT。悪くない予選順位から決勝レースでの飛躍が大いに期待されていました。

もてぎでのスターティンググリッド
もてぎでのスターティンググリッド

スタートドライバーはナレイン・カーティケヤン選手。しかしスタートしてから徐々に順位を落としていきます。6周目までには8位となり、その後ドライバー交代を伴うピットインの際には13位まで後退してしまいます。

もてぎでのModulo Epson NSX-GT
もてぎでのModulo Epson NSX-GT

牧野任祐選手に交代したもののタイムは上がらず、大幅にグリップ力が低下したためなのか残り15周のところでタイヤ交換のために2度目のピットインを喫してしまったのです。

ナレイン・カーティケヤン選手
ナレイン・カーティケヤン選手

この件について中嶋悟総監督は「タイヤの合わせ込みがうまくいかずに残念な結果となってしまった」と語ります。またスタートを担当したナレイン・カーティケヤン選手は「レースは良くなると期待していましたが、パフォーマンスがあまり良くなく、タイヤの問題を抱えていました」と語り、やはりタイヤの合わせ込みに問題があったようです。

牧野任祐選手
牧野任祐選手

牧野任祐選手は「最初からかなり厳しくて予定通りにいかなかったこともあり、良いところも悪いところもあって難しいレースでした」と語ります。具体的には予選の感触を決勝レースに生かせなかったことに悔しさがあるようです。

最終戦もてぎでコースインをするModulo勢2台
最終戦もてぎでコースインをするModulo勢2台

最終戦もてぎでは活躍を見せることはできませんでしたが、そこに至るまでの富士、オートポリス、そしてSUGOでは着実に戦闘力を上げてきたModulo Epson NSX-GT。来シーズンはマシンがクラス1カテゴリーとして全く新しいFRのNSXとなります。そんな新しいマシンでも今年の後半に築き上げてきたものがきっと生きることでしょう。

(写真:吉見幸夫、松永和浩 文:松永和浩)

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この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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