■昔はストップウォッチでスピード違反を取り締まっていた! そこからあまり進化してない!?
『日本人の3割しか知らないこと くりいむしちゅーのハナタカ!優越館』という番組(テレビ朝日)がある。
今回のこの“知識”、日本人の1割も知らないんじゃないか。
元警視総監・矢代隆義氏の著書『概説交通警察』(立花書房)に、スピード取り締まりの歴史についてこんなことが書かれている。
「当初、白バイ、パトカーによる追尾測定か,取締り員による路側でのストップウォッチによる測定方法しかなかった」
追尾式とは、白バイやパトカーが違反車両の後ろを等間隔で走って特殊な速度計(ストップメーター)のスイッチを押して針(※)を止め、「等間隔だったから白バイ等の速度=違反車の速度である」として取り締まるやり方だ。※のちにデジタル数字となった。
等間隔だったという証拠は取り締まりを行なった警察官本人の供述以外にない。非常に原始的な取り締まり方法といえる。
さて、問題は「ストップウォッチによる測定方法」である。
体験者(83歳男性)から話を聞くことができた。
「私が捕まったのは、東京オリンピック(1964年)の前でしたかねぇ。A地点に警察官がいて、目の前を速そうなクルマが通過するとストップウォッチを押すんです。先のB地点に別の警察官がいて、そのクルマが通過すると旗を上げる。A地点の警察官はそれを見てストップウォッチを止める。で、AB間の距離と通過時間から速度を計算し、取り締まるわけです」
なんと原始的な! しかし体験者は言うのだった。
「いやいや、当時は最新の機械式が登場したぞと、みんな言ったもんです(笑)」
当時、ストップウォッチは立派な測定機械だったのである。
体験者はストップウォッチ式により身に覚えのないスピード違反で取り締まりを受け、裁判で徹底的に争ったが有罪とされたそうだ。
ストップウォッチ式はとっくにない。
しかし追尾式はバリバリ現役だ。追尾式の否認裁判(74キロオーバー)を私は傍聴したことがある。判決は有罪、罰金10万円。有罪の理由を裁判官はこう述べた。
「正確度の高い速度測定機を使ったのだから…」
私は傍聴席でひっくり返りそうになった。
デジタル表示を固定するだけのストップメーターは裁判官にとって「正確度の高い速度測定機」なのだ! 原始的どころの話じゃない!
どうです、こんなこと、日本人の1割も知らないでしょ。知って優越感にひたれるかどうかは疑問だが(笑)。
(今井亮一)