ライバルの一歩先を行く、クラスを超えた仕上がり。実用的なNAモデルでも十二分な走り【ホンダNワゴン Lホンダセンシング試乗】

●軽自動車あたり年の最後に出た大本命は、ヤバイくらいの出来のよさ

2019年は日産デイズ、三菱eKシリーズが登場、つづいてダイハツ・タントと新世代の軽自動車が登場し、そして今回試乗したホンダのNワゴンと、魅力的な軽自動車が続々と登場した年となりました。

NワゴンL_前7-3スタイリング
プレーンな面で構成されるNワゴンのエクステリア

日産デイズ、三菱eKシリーズそしてダイハツ・タントも軽自動車の枠を飛び出したかのような仕上がりのよさでしたが、Nワゴンはその上をいく出来のよさ。予想をはるかに上まわる性能の高さなのです。

NワゴンL_後ろ7-3スタイリング
標準タイプのNワゴンにはホワイトルーフ仕様も用意

Nワゴンには2種のパワートレインが用意されています。ひとつは58馬力/65Nmの自然吸気、もうひとつは64馬力/104Nmのターボです。ここでは自然吸気エンジンをサンプルに話を進めます。

NワゴンL_NAエンジン
ターボほどではないものの、しっかりした性能を発揮する自然吸気エンジン

まずパッケージングですがこれがものすごくしっかりしています。基本はNボックスと同じプラットフォームを使用。フロントシート下に燃料タンクを備えるセンタータンクレイアウトです。

なによりも感心させられるのは、ハンドル、ペダル、シートの位置関係をきちんとしたことです。シートに座って、自然に足を伸ばした位置にペダルがあります。ステアリングにはチルト機構に加えてテレスコピック機構が加わりました。調整範囲は30mmしかありませんが、大きな進化と言えます。

実際にドライビングポジションを合わせてみると、かなりしっくりときます。太ってお腹が出たり、妊娠したりするとリクラニングを寝かさないと窮屈になってしまいますが、そうなると今度はステアリングに手が届かなくなります。そうしたときにステアリングのテレスコピック機構は重要。欲をいえばさらに調整幅があればうれしいです。

NワゴンL_インパネ
水平基調のインパネは見切りがいい。テレスコピック機構付きのステアリングはドラポジの自由度が高い

自然吸気エンジンの出力は58馬力とターボに比べると6馬力ダウンとなります。この差が大きいか小さいかはなにを基準とするかによって異なるでしょう。首都高速に乗るための上りスロープを力強く、コンパクトカーに負けない加速感で上りたいというなら力不足です。

しかし、普通に不安のない速度で上ることには何の不足もありません。そのまま首都高を走っても不満はありません。そしてその加速感もいかにも軽自動車然とした薄っぺらい感じはありません。高速道路を走っている際の力不足もとくには感じませんでした。追い越しがしにくいほどの中間加速の悪さもありません。

NワゴンL_フロントシート
ベンチタイプながら、ホールド性はある程度稼げているフロントシート
N_WGN_L_リヤシート
フォールディング性を重視したリヤシートは平板な形状

コーナリングの安定感も高いものです。サスペンションはフロントがストラット、リヤがトーションビーム式です。フロントのストラットはオフセットスプリングを使い、横力キャンセル特性得ています。そのことも影響しているのでしょう。サスペンションの動きはスムーズで乗り心地も十分に確保されています。

NワゴンL_シートアンダートレイ
リヤのシートアンダートレイは取り外し可能となり、掃除などがしやすくなった

ラゲッジルームの使い勝手もよく考えられています。トノボードを上手に使って、上下2段で荷物を搭載できるようにしたり、リヤシートを前倒しした際にフラットで広いスペースを確保したりと、十分に計算されたものです。

NワゴンL_ラゲッジ1
トノボードを使うことで上下2段のラゲッジスペースを実現
NワゴンL_ラゲッジスペース2
トノボードを上段にセットするとフラットにスペースアップができる
NワゴンL_ラゲッジスペース3
トノボードを使わない際はリヤシートバックの裏にセットする

普段使いを考えたら、自然吸気モデルで十分な使い勝手を得ていると言えます。燃費は自然吸気FFで23.2km/L、ターボFFで22.0km/L(ともにWLTCモード)となり、さほど大きな違いはないといえるでしょう。

リアルワールドでも自然吸気とターボでさほど大きな差はでないと思われますし、どちらもレギュラーガソリン使用です。カスタムターボ以外はタイヤも14インチとなりますので、タイヤ交換時のコストも低く、実用的なモデルといえます。

N_WGN_L_タイヤ&ホイール
155/65R14サイズのタイヤは販売価格もリーズナブルでランニングコストが抑えられる
N_WGN_L_真正面
真正面から見るとバンパー部が少し膨らんでいて、安定感のあるデザインであることがわかる
N_WGN_L_真横スタイリング
Aピラーの流れをプレスラインで連結するおもしろいデザインのサイドビュー
N_WGN_L_真後ろスタイリング
リヤハッチの開口部は低く、荷物の搭載性をアップ

(文/写真・諸星陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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