日産・セレナ、ウリのはずのプロパイロットとe-POWERにある意外な弱点とは?【後編・悪い点】

●熟成進むプロパイロットとe-Power、ミニバンにあったさらなる最適化が必要?

8月にマイナーチェンジとなり、さらに進化したニッサン・セレナ。前編では、筆者が感じた改良型セレナの「良い点」をお伝えしました。後半では、改良型セレナの「気になる点」について、元日産開発エンジニアの筆者が忖度なく指摘していきます。

セレナ外観
全長×全幅×全高:4770×1740×1865mmと、ミドルサイズミニバンの中でも背が高いのが特徴。

気になる点①ステアリングアシスト制御がイマイチ

セレナにグレード採用されているプロパイロットには、車線間の中央を走行するようにハンドルを修正してくれるLKA(レーン内のハンドル角修正制御)が備わっていますが、このLKAによるハンドル修正に課題があります。

セレナプロパイロット
プロパイロットの操作は簡単。右側のブルーマークを押して、SETを押せば入る。

こうしたシステムは、センサーが遠くの白線を見るほどに滑らかなハンドル修正となりますが、車線中央からは外れやすいという面があります。プロパイロットは、目の前の白線を見ているようで、車線の中央を維持しようとする制御が強く、レーン中央から少しでも外れまいと、コツコツとハンドルが持っていかれるような制御が入ります。

この点は、初期のプロパイロットから筆者は感じており、改良型セレナでは以前と比べて改善はしているようですが、まだ他メーカーと比較すると、粗さを感じます。さらなる改善に期待したいです。

セレナ走行中
プロパイロットにはさらなる改善を期待したい。

気になる点②カタログ燃費と実燃費の乖離が大きい

高速道路メインの走行時の実燃費は17km/L、一般道メインの走行では13km/Lという結果です。セレナe-POWERのJC08モード燃費は26.2km/Lであり、最低でも、0.8掛けの21km/Lは出てほしいところですが、実燃費との乖離が大きくなってしまいました。

大人数で移動をする機会もあるミニバンですので、人が乗れば乗るほど、燃費はさらに悪くなっていくでしょう。なお、試乗が猛暑日だったため、エアコン常時ON、乗員2名と機材が50kgほどでした。

セレナ燃費
カタログ燃費との乖離が大きいのが残念だった。

気になる点③重たい車体を軽々と走らせるe-POWERドライブ

e-POWERは、「良燃費」「発進時の力強い加速」「ワンペダルドライブ」が魅力ですが、筆者は「ワンペダルドライブ」はミニバンであるセレナのキャラクターには合っていないように思います。運転者のアクセルペダル操作のスキルによって、加減速がギクシャクしてしまうからです。

ワンペダルドライブによる前後加速の強弱を「意のまま」だと感じるのは運転者だけです。そのため、大人数を乗せて移動をするときなどには、使用しないことをお薦めします。

セレナeパワードライブ
アクセルペダルは繊細な操作が必要。丁寧に扱わないと、同乗者を酔わせてしまう可能性もある。

まとめ

今回のマイナーチェンジで、セレナは、アルファードやヴェルファイアなどの上級ミニバンとも戦えるほどのフロントフェイスを手に入れました。魅力的なオプション装備が大量に用意されていますが、決して安くはないため欲しい装備をしっかりと見極める必要があります。

賢い買い物をできるよう、購入時には綿密に検討することをお薦めします。

(エムスリープロダクション 文:吉川賢一/写真:鈴木祐子)


【グレード構成】

「e-POWER」と「S-HYBRID」のベースグレードとハイウェイスター、上から「G」「XV」「X」。なお4WDは「S-HYBRID」しか用意されていない点が注意です。最量販となるのは、e-POWERの中間グレード「XV」、もしくはe-POWERハイウェイスター「V」の見込みです。

●1.2リットル直列3気筒ガソリンエンジン+駆動モーター(HR12DE-EM57)
セレナe-POWER・ハイウェイスター(2WD) G/V/-   372万5700円/349万9100円/329万3400円
セレナe-POWER(2WD) G/XV/X   347万3800円/322万6300円/299万7500円
セレナAUTECH(2019年秋発売予定)

●2.0リットル直列4気筒ガソリンエンジン(MR20DD)
セレナ ハイウェイスター(2WD) G/V/-   322万7400円/298万6500円/275万8800円
セレナ G/XV/X    306万1300円/273万6800円/257万6200円
(消費税10%込にて表示)

●主要諸元・セレナe-POWERハイウェイスターV 2WD(マルーンレッド)
全長×全幅×全高:4770×1740×1865mm
ホイールベース:2860mm
車両重量:1760kg
駆動方式:前輪駆動
エンジン:1.2リットル直列3気筒ガソリンエンジン+駆動モーター(HR12DE-EM57)
排気量:1.198cc
最高出力:62kW(84ps)/6000rpm
最大トルク:103Nm(10.5kgm)/3200〜5200rpm
モーター:EM57 交流同期電動機
最高出力:100kW(136ps)
最大トルク:320Nm(32.6kgm)
サスペンション前後:前/ストラット式・後/トーションビーム式
タイヤ前後:前/ 195/60R16・後/ 195/60R16
JC08モード燃費:26.2km/L
最小回転半径:5.5m
燃料・タンク容量:無鉛レギュラーガソリン・55L

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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