●スーパーフォーミュラ参戦3年目にして初優勝
9月29日、岡山国際サーキットで開催されたスーパーフォーミュラ第6戦。
見事な作戦で勝利を掴んだのは山下健太選手。山下選手はスーパーフォーミュラ参戦3年目にして初優勝となりました。
スーパーフォーミュラではドライコンディションの場合、決勝中にミディアムタイヤとソフトタイヤの2種類のタイヤを使わなくてはいけないというルールがあり、その使い方が作戦に大きく影響してきます。この岡山戦で予選2番手からスタートした山下健太選手がスタート時に選択したタイヤはミディアムでした。
タイヤ交換義務は10周目からファイナルラップまでの間に行われなくてはならないというルールがあり、スタートでミディアムタイヤを選択したチームは10周目以降にソフトタイヤに交換し追い上げる作戦、ソフトタイヤを選択したチームは逃げ切ってマージンを築いてからミディアムタイヤに履き替えるという作戦となります。ミディアムタイヤを履いている周回数が少ないほうが有利と考えるチームが多く、スタート時にソフトタイヤを選択するチームは数多いのです。
そんな中、ミディアムタイヤを選択した山下選手はスタート時にソフトタイヤを選択した数多くのライバルに序盤で抜かれてしまうという我慢のレースを強いられていました。
しかし逃げ切る作戦のソフトタイヤ勢はあくまでもノーアクシデントでレースが進むことが前提となり、セーフティーカー(SC)などが導入されればマージンは一気に帳消しとなってしまいます。そんなSCがなんと9周目に導入されてしまったのです。
SC導入中に10周目になりミディアム勢は一気にピットインをしソフトタイヤに交換していきます。当然山下選手も10周目でソフトタイヤに交換してレースに復帰していきますが、SC導入中ということもあり、すぐさま隊列に追いつき同一周回のままレースを続けるということになります。また12周目までSCランが続いたことでタイヤも十分に温まっていることからSC解除後にはすぐにレースモードとなっていきます。
レースも後半、ラスト10周になってくるとソフトタイヤでスタートしたチームがそろそろピットインをしなくてはなりません。しかしピットインを終わらせていたチームの中ではトップとなる4位を走る山下選手との差は30秒を切っておりタイヤ交換のためにピットインをすれば山下選手に抜かれてしまうという状況となります。
その頃のピットではライバルがピットインする度に順位を上げていく山下選手の様子に歓喜の声が上がります。
そして山下選手がトップに立った瞬間、歓喜というよりも安堵の空気がピットを包んでいきました。しかしこの時点であと3周残っているためまだまだ安心はできません。
そしてファイナルラップ。サインエリアの近藤真彦監督は無線で山下選手に終始声をかけているようです。
山下選手がファイナルラップの最終コーナーを立ち上がってくると近藤監督は「よーしっ!」と無線で語りかけます。
そしてチェッカーフラッグ。近藤監督は「ヤッター!」と大歓声。
ウィニングラップに入るとモニターに映る山下選手のマシンに大きく拍手を贈ります。
そしてエンジニアの方と喜びを分かち合います。
そんな近藤真彦監督はピットガレージの方へ振り返ると……
ピットクルーや多くのゲスト、スタッフに向かって勝利のサムアップ!
山下健太選手の優勝にレースクイーンも大喜び。
その優勝した山下選手はパルクフェルメで手を大きく掲げ勝利を噛み締めます。
そしてパルクフェルメに現れた近藤監督を見つけるやいなや、歓喜のあまり近藤監督に飛びついていく山下選手。
近藤監督曰く「F3から引っ張り上げて3年。やっと健太を勝たせることが出来ました」。その喜びの大きさが満面の笑みに現れています。
この優勝でチャンピオン争いにも加わることが出来た山下選手。最終戦の鈴鹿で優勝すれば自力でのチャンピオン獲得となります。
そんなチャンピオンがかかった次戦、最終戦鈴鹿はランキングトップの山本尚貴選手から4位の山下健太選手までが自力でのチャンピオン獲得の権利があるという、熾烈な戦いが予想されます。この激しさが予想される戦いは今から注目ですね。
(写真・文:松永和浩)