目次
■気筒どうしの排気干渉を避けることが重要
●排気ポート内の脈動を考慮して最適化
排気マニホールドは、各シリンダーの排出ガスをスムーズに排出し、充填効率を向上する役目を担っています。そのためには、排気効率を阻害する気筒間の排気干渉を避け、吸出し効果を促進することが重要です。
排気(掃気)効率を上げるための排気マニホールドの最適化について、解説していきます。
●排気干渉とは
排気干渉とは、あるシリンダーの排気行程中に次のシリンダーの排気行程が始まると、その排出ガスの圧力を受けて、先のシリンダーからの排出ガスの排出が妨げられる現象です。
排気弁は、下死点前40~60°ぐらいで開き上死点直後に閉じるために、気筒間で排気行程が重なり、排気干渉が発生します。
排気干渉が起こると排出ガスの抜けが悪化するため、シリンダー内に残留ガスが増えて充填効率が低下します。「出すものを出さないと、入るものも入らない」ので、トルクは低下します。
●排気干渉を避けるには
各気筒の排気ポート長を長くすれば、圧力の回り込みに時間がかかり減衰するため、排気干渉しづらくなります。レース車で使われる「たこ足マニホールド」がこれに相当しますが、一般のクルマではスペースや排出ガス浄化の問題から採用できません。
4気筒の排気行程(点火)の順番は、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒です。排気行程が重ならないように、行程順序が隣り合っている気筒の排気ポートは直接接続せず、行程順序を1気筒飛ばした排気ポートを接続すれば、排気干渉が避けられます。
この考えに基づいたのが、デュアル(4-2-1)マニホールドです。具体的には、#1と#4、#2と#3気筒の排気ポートを接続し、その集合した2本を1本にまとめたマニホールドです。
デュアルマニホールドは、高出力を実現する排気マニホールドですが、最近採用例は少なくなっています。通常の4本排気ポートから1本に集合させたシングル(4-1)マニホールドに比べて、搭載スペースをとることと、触媒がエンジンに近接配置できないためです。
●触媒をエンジンに近づける工夫
触媒が浄化性能を発揮するためには、一般には250℃以上必要です。低温始動直後に触媒を活性化するために、触媒はできるだけエンジン近接に搭載することが理想です。
最近の排出ガス規制が厳しい状況下では、触媒をエンジン近接に配置するためにシングル(4-1)マニホールドが一般的に採用されています。
●排出ガスの吸い出し効果
排気ポートの動的効果にも、吸気ポートと同様に慣性効果や脈動効果があります。
排出ガスの吸出し効果は、排気脈動で発生した負圧を別の排気行程の排気弁が閉まる直前に合致させて、排出ガスの抜けを促進する方法です。
ある気筒の排気弁が開くと、高温・高圧の排出ガスが噴き出します。このとき発生した強い正圧は、排気ポートの集合部やマフラーなどの解放端で反転して、負圧となり反射します。反射した負圧は、次の気筒へと音速で進み、排気行程の排気弁が閉まる直前に合致すると、排出ガスの吸出しが促進されます。
この吸出し効果によって、排気(掃気)効率が改善されて、充填効率が向上します。
排気マニホールドは吸気管と同様、排気ポート内の脈動を考慮して最適化します。
また、性能向上ととともに排出ガス低減も担っているので、できるだけコンパクトで熱容量が小さいことが要求されます。
(Mr.ソラン)