●雨を味方に速さを魅せた64号車
9月22日、宮城県のスポーツランドSUGOで「2019 AUTOBACS SUPER GT Round 7 SUGO GT 300km RACE」の決勝レースが行われました。
予選Q1を2位、そしてQ2を6位という今シーズンの最高位としたGT500クラスの64号車 Modulo Epson NSX-GT。そのスターティンググリッドは3列目の6番グリッドとなります。
スターティンググリッドに並び始める頃に降り出したごく細かい雨でタイヤの選択を迫られ、スターティンググリッドは慌ただしくなっていきます。そんな中、Modulo Epson NSX-GTはレインタイヤを選択。
スタートドライバーはナレイン・カーティケヤン選手。
スタート直前に強くなりだした雨のためレースはセーフティーカー(SC)スタートとなります。3周のSCランの後、4周目からレーシングスピードによるレースが始まるとModulo Epson NSX-GTのナレイン・カーティケヤン選手は一つでも順位を上げていこうと果敢に前走者を攻め込みます。しかしウェットのSUGOはかなり難しい様子で単独スピンを喫してしまい7位となってしまいます。
しかしナレイン・カーティケヤン選手は「ウエットのコンディションとタイヤが合っていた」と語っており、調子が上がってきたからこそスピンをするまで攻め込むことが出来たということだったようです。
そして27周目にピットイン。牧野任祐選手に交代します。
27周目からしばらくは若干雨量が減り、牧野選手曰く「レインタイヤがオーバーヒート気味」であったといいます。しかし37周目に思わぬ事態が発生。GT500のライバルチームがコースアウトし動けなくなってしまい、39周目にSCが導入されたのです。
「このSCでオーバーヒートしたタイヤを適正まで冷やすことが出来ました」と語る牧野選手。その言葉通りSC解除後の快進撃は凄まじく、水しぶきが上がりウォータースクリーンで視界が全くない状態でも1分21秒台での走行を続けていきます。
気迫のようなものを感じさせる走りは、正直なところ今シーズンの中で初めて見せるものと言えるでしょう。まさに水を得た魚。
そして今季初の表彰台となる2位でチェッカーを受けたのです。
中嶋悟総監督はこの2位表彰台について「とにかく 2 人のドライバーとメカニックたちの頑張った結果だと思います。言うことなしです!」と語ります。
牧野選手は後半の追い上げについて「雨量が多くなり自分たちにとってアドバンテージがあるコンディションになって天候が自分たちの味方をしてくれました。ずっとマシンのコントロールが難しかったですがそんな中でもいいレースができたので、今できることはしっかりできたと感じています。ここまで苦戦していましたがタイヤの開発をしてきたことがかたちになってよかったと思います」と語ります。
次戦はいよいよ最終戦のツインリンクもてぎ。次戦について中嶋総監督は「いい締めくくりをして今シーズンを終え
たいですね」と語ります。
●タイヤ選択ミスで序盤は下位に沈むも後半に10台抜きを魅せた34号車
一方GT300の34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3はスターティンググリッドでのタイヤの判断をスリックタイヤとしていました。
しかし、このスリックタイヤという判断で序盤に勝負権を失ってしまったModulo KENWOOD NSX GT3。
「もっと早くピット・インするとか、それこそ2ピット作戦とか選択肢はありましたが、時折雨が弱くなるところで判断が鈍りました」と語るのはスタートドライバーだった道上龍選手。
結局の所、予選9番手からスタートしながらタイヤチョイスで23番手にまで順位を落とすことになってしまいます。
そんな状況下でピットインをし大津弘樹選手に交代をしてレースに復帰します。
その大津選手、ハードウェットになってからの巻き返しは凄まじくコーナーのあちこちが川となっている状況下でも臆することなく攻め続け、1分30秒台を連発しながら追い上げていきます。
それこそ目の前にいる敵は全て噛み付いていく猛獣のような走りには感動すら覚えます。
「雨は好きじゃない」と語りながらも今シーズンのレースは雨が多いことから実績を積み上げていったとも言える大津選手。最終的には13位でチェッカーを受けることとなり10台ものライバルを抜いてみせたのです。
「正直な話、このコンディションで13位まで順位をあげられるとは思っていなかった」と道上選手が語るように大津選手の成長は著しいと言えるでしょう。
しかしオートポリスに続きSUGOでもポイントを獲りこぼしてしまったことは大きな痛手であることは間違いありません。次戦、最終戦のツインリンクもてぎで大きく挽回してくれることを願ってやみません。
(写真:吉見幸夫、松永和浩 文:松永和浩)