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■個々の検査は国がメーカーに委託している
●検査が行えるのは有資格者のみ
組み立てが完了したすべての車両は、国の定めた安全基準に適合しているか、品質は確保されているかを確認するため、数百にもおよぶ項目の検査が行われます。これが完成検査で、合格した車両だけに完成車検査修了証が発行されて、出荷が許されます。
製造工程の最終工程、完成検査について解説していきます。
●型式指定の申請
メーカーが新型の自動車を生産、販売する場合は、あらかじめ国交省に届け出て、保安基準への適合性などについて審査を受ける必要があります。
審査は、燃費/排ガス試験やブレーキ試験などの基準適合性審査と品質管理(均一性)審査があります。どのようなタイプの自動車で、申請通りの機能や性能を有するかなどの審査が行われ、合格すると型式指定が受けられます。
●完成検査の概要
型式指定を受けた上で、メーカーは製造された車両すべてについて完成検査します。完成検査は、型式指定を受けた型式としての構造、機能、性能を有しているか、国の定める保安基準に適合しているかを検査します。適合していれば、完成検査修了証が発行されて出荷できます。
本来は、国または第三者機関が検査して判断すべきですが、すべての車両を検査することは現実的に不可能なので、国が各メーカーに検査と判断を委ねている形です。
完成検査は、各メーカーが定めた認定基準を満たした有資格者しか実施できません。検査員は、数百におよぶ車両全体の項目をチェックするため、車全般の技術と知識が必要です。
●完成検査の実施規定
完成検査実施要領および判定に係る規定は、以下の通りです。
・完成検査実施規定第2条(完成検査の実施方法)
「検査員が基準に基づき点検を行い、その結果保安基準に適合すると認めた部分については、当該部分に係る検査に影響を及ぼす整備がされなければ、完成検査において保安基準に適合するものとする。」
・完成検査実施規定第2条(完成検査の判定)
「完成検査の判定は、保安基準、自動車検査独立行政法人審査事務規定および検査関係通達等さらに社内基準により実施するものとする。」
●完成検査の内容
完成検査の内容は、型式指定の申請時にメーカーが提出した実施要領に則り実施するため、具体的なやり方についてはメーカーごとに異なります。しかし、目的は国の安全基準に適合しているか、品質が確保できているかの確認なので、内容に大差はありません。
具体的な検査項目は、外装/内装検査、エンジンルーム検査、ヘッドライト光軸検査、水漏れ検査、灯火類点灯点滅検査、足回り検査、台上走行検査、完成車実走行検査などです。
複数の検査員によって1台ごと実施され、最終的にすべての検査を合格したクルマが出荷されます。
また燃費や排ガスなど重要項目については、例えば100台に1台程度の割合で抜き取り検査を行います。申請通りの燃費値が出るか、排出ガスが規制値に適合しているかを定期的に確認します。
もしも、適合していなかった場合、適合できるまで生産はストップします。
●不正が起きたケースも
2017年秋の日産とスバルによる無資格者による完成検査に始まり、その後も検査未実施や検査データの書き換えなど不正が相次ぎました。マツダやスズキでも不適切な検査が明らかになりました。
自動車メーカーの品質に対するルーズな姿勢が露呈した大事件です。
クルマの品質は、最終の完成検査で確認される以前に、部品ベースや組み立てた段階で何回もチェックされるので、実際のところ完成検査でNGになるクルマはほとんどありません。
もちろん、完成検査が適正にされていることが前提で言えることですが、もし正しく実施されてなければ上記は戯言です。
(Mr.ソラン)