独特な定義がある自動車保険の「家族割」制度。うまく賢く使う方法がコレ!【保険/車検のミニ知識】

■別居した家族も同じ保険に入れるの?

契約者のみが補償を受ける生命保険や医療保険とは異なり、自動車保険は家族単位で補償を受けられるものです。しかし、その「家族」という範囲はどこまで適用されるのか、イマイチわかりにくい制度となっています。今回は、元自動車ディーラー営業マンが、自動車保険の「家族」の範囲を解説していきます。

●同居=家族ではない

ひとつ屋根の下、同じ家に住んでいることを一般的に家族と言いますが、自動車保険では家族の定義が決められており、同じ家に住んでいるだけでは家族という括りに入れない場合があります。

自動車保険の中での家族とは、本人・配偶者・未婚の子の3つの属性のことを指します。この3つのどれかに該当すれば「家族限定補償」の範囲で、補償を受けることができるのです。本人と配偶者はわかりやすいですが、未婚の子という表現が分かりにくいですね。未婚の子とは、今までに一度も婚姻をしたことがない子どもと定められており、扶養の有無は問いません。ただし、一度でも婚姻歴があれば、現在未婚の状態でも未婚の子にはならないので注意が必要です。

自動車保険の家族割り
自動車保険には、同居か未婚か、また年齢制限もあるので、家族割りを賢く使いましょう。

●同居の未婚の子がクルマを使う場合

自動車保険で注意すべき限定条件は「運転者の限定」と「年齢条件」の2種類です。このうち、先に挙げた3つの属性に当てはまる家族全員を、自動車保険の補償範囲に含める場合には、使用者の限定を「家族限定」もしくは「限定なし」とすることが必要です。限定なしよりも家族限定を付けたほうが保険料は割安になるので、本人・配偶者・未婚の子以外の第三者にクルマを使用させることがなければ、家族限定を付けましょう。

年齢条件は、同居している家族全員にかかる条件となります。同居家族内で、クルマを運転する最も若い人に合わせて条件を設定しましょう。例えば、父(60歳)、母(63歳)、子(27歳)の場合には「26歳以上補償」とする必要があります。

●未婚の子が別居している場合

子どもが学業や仕事で離れて暮らしている場合には、年齢条件の考え方が変わります。運転者の限定は、従来通りの家族限定となりますが、年齢条件は「同居している運転者の中で最も若い年齢の運転者」に合わせて設定することになるので、先ほどの3人家族の場合で、子どもが別居した場合には「35歳以上補償」まで引き上げることができます。

35歳以上という年齢条件は同居家族内での適用となるため、別居している子どもがこの年齢を下回っていても問題はありません。

●単身赴任の場合

夫が単身赴任で配偶者と子どもと別居になる場合は、実態上の別居の事実があっても、同居家族の時と同じ状態で保険契約を結ばなければなりません。主たる使用者が夫で、夫がクルマを単身赴任地まで持っていくとしても、考え方は全員が同居している状態と同じです。家族限定補償とし、クルマを使用する中での最年少の人に年齢条件を合わせてください。

●子どもが結婚した場合

家族限定補償の補償範囲は未婚の子までに限りますので、子どもが結婚した場合は、結婚後に同居していても別居していても、家族限定補償のままでは補償を受けることができません。この時は運転者限定なしを選択します。

結婚後の子どもと同居している場合には、年齢条件は同居家族内での最年少の人に合わせるのは同様で、別居の場合には主たる使用者と同居する家族の最年少の人に合わせます。必ずしも、クルマを使う可能性がある最年少の人に合わせる必要はなく、年齢条件は同居家族内にしか適用されないことを理解しましょう。

自動車保険の家族割り
家族で1台のクルマをシェアする場合の保険の種類を上手く活用しましょう。

●まとめ

ちょっとわかりにくい運転者限定と年齢条件について解説しました。2つの条件は必ずリンクするものではなく、別々に使用条件に合わせて考える必要があります。適切な条件を設定して、お得に自動車保険を使いましょう。

(文:佐々木 亘)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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