日産の取締役会は9月16日付けで西川社長の辞任を発表した。最大の理由はSAR(株価連動型報酬制度。後段で詳しく説明します)を悪用し、本来より高額な収入を得ていたことだと言われている。こういった不正をしたら本来は違反ながら、不思議なことに検察も事件性が無く静観するという。今回特捜部は日産の誰かと司法取引(情報流す代わりに罪を減じる)したようだ。
西川さんと司法取引していたなら、それはそれで国際的な問題になると思う。閑話休題。SARとはなんだろう。例えば日産の株が500円だったとする。その時点でSARを10万株分決めたとしよう。本来なら5千万円で株式を買わなければならないが、書類上で買ったことにしておく。経営者が頑張って1株1000円になったら、その時点から過去に遡り5千万円を支払ったことにする。
すると1000円×1万株分の1億円が手元に残る。つまり5千万円の報酬ということです。この制度、日本政府は導入を推奨している。経営陣にとってのボーナスみたいなもの。頑張って仕事して業績上げたゴホウビですから。実際には株式の売買などせず、上昇分がそのまま収入に上乗せされるというシステムです。したがってSARという制度を西川さんが使ったとしても何ら問題無い。
なぜ問題なのか? こらもう簡単。株価というのは毎日変動している。SARでは確定の日(基準日)を決めてあります。株価が安かったとしても、当日の株価で報酬が決まるワケ。今回西川さんに掛けられている疑惑は「本来なら動かせない確定の日を株価の高かった日に移した」というもの。不正な報酬、数千万円になるらしい(ゴーンさんと一緒に逮捕されたケリーさんによれば4千万円以上)。
やっていることはゴーンさんと同じです。ゴーンさんと若干やり口が違うため検察的には違法性薄いということながら、コンプライアンス的に大きな問題あるし、メディアや株主などステークホルダーだって納得しないと思う。加えて経産省からも「もはやこれまで!」とハシゴを外されたというウワサ(真偽は永久に不明)。西川さんは強いプレッシャーを掛けられたのだろう。
問題となるのが今後。正式な次期社長は現時点で未定だ。候補が10人くらいに絞られていると言われるものの、日産とルノー、そして日本政府、フランス政府との綱引きになること間違いなし。そもそも日産とルノーそれぞれが納得した人選じゃないと決まらない。日産は我が国にとって大切な企業。加えて直近の業績を見ると落ち込んでいる。素晴らしい人材に舵取りをしてもらいたいと思う。
(文:国沢光宏)