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■もっとも高効率なのはシリーズ・パラレル式ハイブリッド
●制御の簡素化も今後の課題
動力源としてエンジンとモーターを併用するHEVシステムは、日本では高いシェアを持ち、低燃費車としての地位を確立しています。特にトヨタとホンダが先導して、独自の高効率のHEVシステムを実用化しています。
多種多様なHEVシステムがありますが、代表的なシリーズ・パラレル方式のシステムと制御について、解説していきます
●シリーズ・パラレルHEVシステムとは
HEVは、エンジンとモーターを搭載し、両者の出力を適正に使い分けて燃費向上を実現するシステムです。多くのシステムが実用化されていますが、エンジンとモーターの動力合成法によって、3つの方式に分類されます。
パラレル方式は、エンジンが主役でモーターは補助的な役割のシンプルな構成です。シリーズ方式は、エンジンを電池の発電専用として使い、エンジンで充電した電池でモーター走行します。
最も効率に優れたシステムが、トヨタ・プリウスなどが採用しているシリーズ・パラレル方式です。パラレルとシリーズの良いとこ取りのシステムで、エンジンの出力を発電用と駆動用に使い分け、エンジンとモーターの駆動力を合成して走行します。効率は高いですが、システムが複雑でコストも高くなります。
●HEVの制御
HEVでは、専用のHEV-ECUがエンジンECUおよびモーターECUと連携しながら制御します。
HEV-ECUは、ドライバーのアクセル踏み込み量、車両の状態、駆動電池の充電状態に基づき、エンジンの要求出力とモータートルクをそれぞれのECUに指令します。エンジンECUは、要求出力に応じて電子制御スロットルの開度を制御し、モーターECUは、指令に基づきインバーターを介してモーターを駆動させます。
駆動電池については、電池監視ユニットが充放電バランスを適正に制御します。電池監視ユニットは、電池電圧や電流、温度などの情報をHEV-ECUに送信します。HEV-ECUは、これをもとに電池の充電状態SOC(State of Charge)を演算して、充放電バランスを取りながらシステム全体を制御します。
●回生ブレーキ制御
モーターは、回転させると電気エネルギーを発生する発電機(ジェネレーター)としても使えます。回生ブレーキでは、ブレーキをかけたときにモーター/発電機の回転抵抗を制動力に使い、同時に発電機によって電気エネルギーとして回収します。
HEVでは、少しでも多くの運動エネルギーを回生するため、従来の油圧式ブレーキと発電による回生ブレーキを組み合わせた協調回生制御を行います。
●ガソリンエンジンの回生
通常のガソリンエンジンでもオルタネーターを使って、僅少ながら回生ブレーキを行っています。ただし、オルタネーターの容量の問題から回生エネルギーは限定的で、基本的には回生ブレーキはモーター/発電機を搭載している電動車特有の燃費向上手法です。
●電力制御
電池監視ユニットでは、駆動電池の容量を常時モニターして、電池のSOCに応じて充電量や放電量を管理します。
駆動電池は、SOCが高くなりすぎ過充電になると劣化が進み、最悪の場合は発火、爆発の危険性が高まります。また、SOCが低すぎる過放電でも劣化とともに再充電不能となる場合があります。
したがって、電池の性能劣化を抑えて信頼性を確保するために、SOCの利用範囲を規定しています。クルマや電池仕様によって異なりますが、リチウムイオン電池ではSOC20~90%ぐらいで管理します。
HEVには多くのECUが搭載され、互いに連携を取りながら、主に燃費向上という要求を実現するため、多くのパラメーターを適正に制御しています。
HEVは制御の塊ですが、ハードとともに制御についても簡素化することが、コスト低減につながり今後の課題です。
(Mr.ソラン)