●電動車比率は約90%、レベル4の自動運転車両も登場。最高レベルの環境負荷低減を目指す
「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)」の開催まで約1年と迫ってきました。
トヨタは大会のワールドワイドパートナーとして、専用開発車や専用開発仕様車を含む電動車のフルラインナップでサポートし、これまでの大会で最高レベルとなる環境負荷低減を目指すとアナウンスしました。
具体的には燃料電池車(FCV)のMIRAIやプラグインハイブリッド車のプリウスPHV、ハイブリッド車などに加え、東京2020専用車である「APM」や東京2020専用仕様の「e-Palette」「TOYOTA Concept-愛i」といったEVなど、電動車を中心に約3,700台を提供。
提供車両に占める電動車比率は約90%となる見通しで、そのうち走行中にCO2を排出しないEV・FCVの導入台数は、FCV約500台、EV約850台の計約1,350台になり、過去大会最大となる見込みとしています。
これにより、約3,700台の提供車両のうち、MIRAIなど競技会場、選手村、国際メディアセンターなどの拠点間移動に使用される市販車を中心とした関係者輸送の車両約2,700台の平均CO2排出量は80g/km以下になるそう。
提供車両の全数が同種同格のガソリン車、ディーゼル車である場合と比べてCO2排出量を約5割削減できると試算されています。さらに、東京2020専用車や専用仕様の先進モビリティなどを合わせると大会期間中のCO2排出量はさらに少なくなると試算されていて、これまでの大会で最高レベルの環境負荷低減を目指すとしています。
市販車を中心とした関係者輸送の車両は、すべて予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」または「Lexus Safety System +」が搭載されていて、「インテリジェントクリアランスソナー(ICS:パーキングサポートブレーキ/静止物)」も、ほぼすべての関係者輸送の車両に装備するなど、衝突回避や被害の軽減をサポート。
さらに、FCバス「SORA」や、セカンドシートのリフトアップ機能とバックドアから車いすを載せ込むスロープを搭載した福祉車両、豊田自動織機製のFCフォークリフトなども大会運営をサポートする予定とされています。
ここからは、東京2020専用車をピックアップします。以前お伝えしたように、「APM」はオリンピックスタジアム、有明テニスの森などの大規模な会場を中心に約200台のAPMを導入。
大会関係者や選手、高齢者、身体の不自由な方、妊娠中や乳幼児を連れた方など、アクセシビリティに配慮が必要な様々な来場者のラストワンマイル移動をサポートする車両。一部車両は、会場内の救護活動にも利用される予定です。
「e-Palette(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)」はトヨタ初のAutono-MaaS専用EVとして選手村に十数台導入され、選手村内の巡回バスとして大会関係者や選手の移動をサポート。
「Autono-MaaS」とは、Autonomous Vehicle(自動運転車)とMaaS(Mobility-as-a-Serviceモビリティサービス)を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語としています。
低床フロアや電動スロープ、停留所への正着制御により、車椅子の方も乗降しやすく、スムースな短距離移動をサポート。自動運転(SAEレベル4相当)による運行が予定されています。各車両に1人オペレーターが搭乗し、自動運転による運行をモニタリングすると共に、各車両の運行状況を統合的に管理するシステムも提供されます。
「TOYOTA Concept-愛i(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)」は、EVによる先進的なワンモーションシルエットのエクステリアデザインで、オリンピック聖火リレーの隊列車両やマラソン競技などの先導車として数台が導入されます。
また、東京2020大会への提供車両にだけでなく、大会期間中にMEGAWEB、お台場、豊洲周辺の公道で体験試乗を実施予定としています。人の感情認識や嗜好推定を行い、会話を行うエージェント機能や自動運転(SAEレベル4相当)などの先進技術を紹介し、「人を理解する」AI技術により新しい移動体験をもたらす未来の愛車を体感できます。
そのほか、歩行領域EVも導入されます。東京2020のオリンピックスタジアム、有明テニスの森など大規模な会場を中心に「立ち乗りタイプ」約300台を導入し、警備・メディカルスタッフの移動をサポート。さらに、車いすを利用される人や歩行が困難な方向けに「座り乗りタイプ」と「車いす連結タイプ」を活用することも検討中としています。
電動化、自動運転、ロボットなど、トヨタの持てる技術を惜しげもなく披露する東京2020大会。電動化(EV)に出遅れているなどと一部報道で指摘されることもある同社ですが、同社の意地と底力を目撃する、世界最先端の「走る見本市」になりそうです。
(塚田勝弘)