●粘り強いエンジンはロングドライブにピッタリ
2019年のお盆休みは9連休となりましたが、ヨーロッパはちょっとそのレベルが違います。なにしろバカンスという名で1カ月近くも休みを取ってしまうのですから。9連休中の何日かで遊びに行く日本人と、1カ月の休みを満喫するヨーロッパの人々では余裕感が違います。それはクルマ作りにも現れていました。
シトロエングランドC4スペースツアラーは、以前はC4ピカソと呼ばれていたモデルです。2018年9月に車名を変更し、グランドC4スペースツアラーとしました。このタイミングでナビ&オーディオ関係をアップルカープレイ対応としました。さらに、2019年3月にはミッションを従来の6速ATから8速ATに変更、エンジンもガソリンで15馬力アップ、ディーゼルで10馬力アップとしました。
私はクルマはまずパッケージングだと考えています。なによりも乗れなければ役にたちませんし、積めなければ役立ちません。それはスポーツカーでも同じです。自分の体格にあったスポーツカーでなければ、求める楽しい走りはできないからです。ましてや多人数乗車のミニバンですから、パッケージングが悪かったら、クルマの存在価値が疑われます。シトロエングランドC4スペースツアラーはヒンジ式4ドアを採用するモデルなので、ミニバンというよりもMPVにカテゴライズしていいのかも知れませんが、その機能は日本のミニバンを凌ぎます。
なによりもシートのフォールディング方式が実用的です。日本の1ボックスモデルはサードシートを左右に跳ね上げるタイプですが、グランドC4スペースツアラー は前倒しでフラットになるタイプです。前輪を付けたままの自転車を積みたいなど、背の高い荷物を積む場合は日本の1ボックスタイプが便利ですが、キャンプなどでの使用ならこの前倒しタイプでも十分に機能。収納時にフラットになるので、荷物の出し入れもしやすいでしょう。さらに普段使いのことを考えても、簡単に、さまざまなシートアレンジができるのは使い勝手としてはかなりいいといえます。
パワーアップしたディーゼルエンジンは低速からしっかりとトルクを発生し、粘り強い性格でロングドライブが楽しいタイプです。ミッションが8速となったことも相まって、発進の鋭さもプラスされ、日本人好みのセッティングになったともいえます。シフトアップ時、シフトダウン時のショックもよく抑えられています。
乗り心地もおだやかで、シトロエンらしいゆったりとしたものです。かつて、シトロエンで採用していたハイドロニューマチックのような独特の動きではありませんが、前後ともによく動くサスペンションで、長距離移動時も疲れないタイプのセッティングです。日本のミニバンのスポーツタイプにありがちな突っ張ったサスの印象はまったくありません。シャープさには多少かけるかも知れませんが、このクルマでシャープさを求めてもあまり意味がないでしょう。
ただ1825mmの全幅で最小回転半径5.5mは都内ではちょっと扱いづらい印象でした。とくにビルの地下駐車場のような駐車枠が狭めな場所では苦労します。国産1ボックスだとトヨタのノア、ヴォクシー、ヴェルファイアなどが最小回転半径5.5mですが全幅は1695mmとずいぶんと狭めなのです。自動で駐車してくれるパークアシストはつきますが、作動がのんびりしているので、混んでいる駐車場などでは周囲を気にしてしまいます。
(文/写真・諸星陽一)