●マツダ3のGベクタリングコントロールプラスを舗装路でチェック
マツダのCセグメントモデル「マツダ3」。販売ボリュームが大きいモデルだけに、決して失敗が許されない重要なポジションにあるクルマでもあります。最大の注目点は予混合圧縮着火(HCCI)を採用した新型エンジン・スカイアクティブXですが、今回の試乗ではそのエンジンはなし。
しかし、もうひとつの注目点である最新のGベクタリングコントロールプラスを体感できるハンドリング関係のレポートをおとどけします。
Gベクタリングコントロールというのはステアリングの操作に対して、エンジンの出力をシンクロ制御することでスムーズな挙動を生み出すことを目的としています。たとえば、コーナリングをするとき、熟練したドライバーはステアリングを操作しているだけではなく、転舵しながら同時にアクセルペダルを少し戻して、フロント荷重を自然に作り出しています。このタイミングが上手なドライバーは「うまい」と言われます。
漫然とした運転をする人は、コーナリングできる速度であればそれだけでいいと思うので、アクセルペダルを戻さずにステアリングだけ操作することがあります。するとクルマは不安定な動きとなってしまいます。こうしたことを解決できるテクノロジーがGベクタリングコントロールなのです。従来のGベクタリングコントロールはエンジン出力のみの制御でしたが、最新のGベクタリングコントロールプラスは、ブレーキでの制御を加えることにより、より効率よくその効果を得られるようになっています。
Gベクタリングプラスについては、すでに冬の北海道で試乗していたのですが、今回のようにドライ路面で試乗するのは初めてです。基本的に直進状態での安定感は高く、ビシッとした直進性をみせます。
じつはマツダ3はアクセラからサスペンション形式が変更されています。フロントはストラットで同形式(設計は新)ですが、リヤサスペションはマルチリンクからトーションビーム式に変更されました。形式だけを見ると、グレードダウンのように感じますが、何を持ってマルチリンクが必要か? 何を持ってトーションビームがいいのか? を考えなければならいでしょう。
トーションビームのほうがロール剛性は高いですし、スペース効率もいい。そこで求める乗り心地が得られ、コーナリング性能が得られるなら、形式にとらわれる必要はないと言えるでしょう。
Gベクタリングコントロールプラスの性能をチェックするため、試乗はできる限りアクセル一定での走行を心がけました。もちろん、速度を上げる必要のあるところでは、積極的にアクセルを踏みます。
もっとも安定感とGベクタリングコントロールプラスの恩恵を感じたのは高速時のスラロームです。普通スラロームというのは入り口でアクセル戻し、ステアリングを操作、ステアリングを戻しながらアクセルを踏むという一連の動作をリズミカルに行うのですが、今回はACCで速度を一定にしてチャレンジです。
普通はこうしたことをすると不安定な挙動になり、ドライバーはビビってしまうものなのですが、一発目だけどう動くかわからないので不安感がありましたが、ステアリングを切ってしまうと見事にスムーズに曲がって行き、スムーズに元に戻ります。
これはすごいことです。ACCで走ることが当たり前になるこれからの時代では必須の制御となるでしょう。
また、高速のままバンク下の大きなコーナーへ侵入した際の侵入時のスムーズさとコーナリング中の安定感にも文句なしです。とくに安定感はビシッとしていて、トーションビームの何が悪いんだという感じです。サスペンションの性能は名称や形式で決まるものじゃない、と実感させられます。
高速ではなく、一般道レベルの走行でもGベクタリングコントロールプラスはキッチリと働いてクルマを安定させてくれますが、このレベルではアクセルの上に自分の右足があるので、普通はコントロールしてしまうでしょう。しかし、それをコントロールしない人には恩恵となるのです。
一方で、運転の仕方や、クルマが何をしているか? は理解しづらくなることも考えられます。
(文/写真・諸星陽一)