【真説「スズキ初代カタナ」第5回】カタナを最初に襲名したマシン、ターゲット・デザインとの共同プロジェクト第一弾「GS650G」登場

スズキGS650Gの走行風景

■元祖カタナはGSX1100Sではなく、GS650Gだった!?

GSX750S/GSX1100Sカタナに18年間乗り続け、オーナーズクラブの副会長も努めた人物が、自らの経験と多くの人へのインタビューから「カタナ」というバイクについて考察する。

1970年代末、ドイツのターゲット・デザインに所属するハンス・ムートとスズキの谷 雅雄さん(以下・谷さん)が出会ってから程なくして、スズキとターゲット・デザインの共同プロジェクトがスタートした。

最初にターゲット・デザインからデザインが上がってきたのは、650ccエンジンを搭載したネイキッドモデルだった。
(といっても、当時の日本では市販車にカウルを装着することは認められていなかったので、カウルなしが普通のバイクの姿。「ネイキッド」という言葉が使われるようになったのは、レーサーレプリカブームのあと、1985年以降頃から。ここでは、分かりやすいように「ネイキッド」と呼称する)

スズキGS650Gのデザインスケッチ
(ED1の完成形に近いデザインスケッチ。1970年代後半のモデルとしては非常に洗練されたものであることがわかる。右下にデザイナーである「J.O.FELLSTROM(フェルストロム)」の署名がある)

スズキGS650Gの開発中風景
(ターゲット・デザイン社からお借りした、珍しい原寸大モデル作成中の写真。スイングアーム部分を見ればわかるように、GS650Gはシャフトドライブを採用していた。画像提供:Target Design)

そのモデルはED1(EDはヨーロッパ・デザインの意)と呼ばれた。

当時としては標準的なアップハンドルと丸型ヘッドライトを持ちつつも、エッジの効いたガソリンタンクの造型やツートーンカラーに塗り分けられたシートなどが特徴的だった。

このモデルは、1981年に「GS650G」として市販されることとなる。

「確かに今までスズキには無い、ドイツらしさが感じられるデザインだった。特に色使いは独特だったね」と谷さん。

というのも、ブレーキキャリパーやリヤショックなどにオレンジが採用されていたのだ。これは、ハンス・ムートが日本の神社にある鳥居の鮮やかさにインスピレーションを受けて採用した、という説がある。真偽はともかく、それまで日本のバイクのカラーリングにはない発想で、オリジナリティある一台となった。

スズキGS650Gのプロトモデル
(エンジンや足まわりなど、ほぼ実車と同じ構成となったED1のプロトモデル)

スズキGS650Gの走行風景
(こちらも珍しいED1プロトモデルでの走行写真。単にカタチだけのデザインではなく、走行に対して問題ないことも確認しているのだ)

スズキGS650Gのタンク部分
(タンクやサイドカバーのニーグリップ部分は絞り込まれていて、フィット感も高い。斜めに入ったSUZUKIのロゴもインパクトが強かった。画像提供:Target Design)

GS650Gには個人的にも思い出がある。

まだ筆者が原付免許を取って間もない、1985年頃だろうか。自宅からそう遠くない、中古バイクを多数扱っていたバイクショップの片隅にGS650Gが佇んでいたのだ。

レーサーレプリカブーム真っただ中だったが、当時の自分は「周囲に流されたくない」という若さゆえの反骨心(笑)からカウル付きのバイクが嫌いだったため、GS650Gにも興味を引かれた。しかし、スタイリング以上にインパクトがあったのは、忘れもしない「9万円」という値札。ほかのどの中古バイクよりも安い価格は、時給600円程度のバイト代でやりくりしていた高校生にとって衝撃的だった。

恐ろしく合格率が低い『限定解除』に受からなければ乗れないので、当時の筆者には無縁のバイクだったが、「どうしてこんなにカッコイイのに安いんだろう?」という疑問とともにGS650Gは記憶に刻まれたのだった。…今ならその理由もなんとなく分かるけど。

スズキGS650Gのカタログ
(GS650Gのカタログより。ディスクローターのインナー部やキャリパー、リヤショックのスプリング、シートなどにオレンジを使っているのが斬新だった。カタログに表記はないが、GS650Gにも「カタナ」のペットネームがついていた。空冷DOHC 2バルブ673cc直列4気筒、65ps/9,500rpm、5.3kg-m/8,000rpm)

●世界一のフラッグシップを目指して、GSX1100Sの胎動が始まる

ターゲット・デザインとのコラボレーションは、GS650Gとして結実した。しかし、谷さんは満足していなかった。GS650Gは、あのMVアグスタのコンセプトモデルのインパクトには程遠かったからだ。

谷さんは「あれ(ROSSO RAPTOR)がやりたいんだ」と、もう一度ターゲット・デザインの窓口であるハンス・ムートに話をした。

やるならば、世界一のフラッグシップをつくろう。当時のスズキで一番のマシンであるGSX1100Eをベースに、次なるマシン「ED2」のデザインが始まった。

ED2とROSSO RAPTOR
(MVアグスタをベースにしたコンセプトモデル「ROSSO RAPTOR(右)」と、GSX1100Sカタナのプロトモデル「ED2(左)」。画像提供:Target Design)

(横田和彦/画像提供:Target Design)

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