【自動車用語辞典:サスペンション「ホイールアライメント」】進行方向や路面に対するタイヤの角度を表す用語

■操縦安定性に大きな影響を与える

●4つの要素を理解しよう

ホイールアライメントとは、タイヤが進行方向や路面に対してどのような角度で取り付けられているかの総称です。

クルマの操縦安定性に大きな影響を与えるホイールアライメントの4つの要素について、解説していきます。

●ホイールアライメントの役割

ホイールアライメントとは、進行方向や路面に対するタイヤの傾きの総称であり、タイヤは路面に対して垂直に取り付けられているわけではありません。

軽いステアリングの操作でまっすぐ進み、また旋回後にはステアリングが自然に戻ろうとするような直進安定性や操縦安定性が実現されているのは、ホイールアライメントの最適化のおかげです。

例えば左右のタイヤは、クルマと乗員の重さによって「ハの字型」に傾きます。このまま走行すると、タイヤには無理な力がかかり、また左右のバランスが崩れると操縦性は大きく悪化します。

このような走行中に発生する様々なタイヤの角度変化を見越して、タイヤの取り付け角を設定するのがホイールアライメントの役目です。ホイールアライメントの4つの要素であるキャンバー、キングピン、トーイン、キャスターについて、以下で解説します。

●キャンバー角

キャンバーとは、クルマを前方から見たときのタイヤの左右方向の傾きです。

前述のように左右のタイヤは、クルマと乗員の重さによって「ハの字型」に傾きます。この特性を見越して、あらかじめ「逆ハの字型」に傾けて設定することを、ポジティブキャンバーと呼びます。

以前は、一般にポジティブキャンバーが設定されていましたが、最近はゼロキャンバー(垂直)から若干ネガティブキャンバー(ハの字型)が採用されるようになりました。クルマの高速化に伴い旋回時の安定性を重視して、旋回内側のタイヤ接地面積を大きくしたいという理由からです。

●キングピン角

キングピンとは、操舵輪の向きが変わるときに回転する中心軸のことです。実際にキングピンという部品はないので、仮想キングピンと表現する場合もあります。

キングピン角とは、タイヤを前後方向から見たとき、キングピン軸の垂直方向に対する傾きです。

傾いたキングピン軸を中心にタイヤは回転するので、直進から旋回したときに片側のタイヤが下がろうとして、反力で車体片側を持ち上げる力が働きます。

この車体を持ち上げようとする力が、タイヤを自ら直進状態に戻そうとする復元力になります。

●トーイン角

タイヤを真上から見たとき、その中心は直進方向ではなく、若干内側に向く(トーイン)か、外側に向いて(トーアウト)います。

トーインは、ポジティブキャンバーのクルマのタイヤが外に向かって進もうとするのを、相殺するために使われます。現在主流のゼロ近傍のキャンバーでも、走行抵抗によってタイヤが外に広がろうとするため、それを抑えるためにトーインが設定されています。

●キャスター角

キャスターとは、タイヤを横から見たときのキングピンの後方への傾きを表します。

この傾きが大きいほど、直進性が向上します。また、キャスターによって旋回時にカーブ外側のタイヤ接地面中心と、回転軸の距離が長くなり、元に戻ろうとするモーメントが働きます。これが、直進状態に戻ろうとする復元力になります。


ホイールアライメントの4要素は、単独でなく一体となって効果を発揮します。

よりレベルの高い直進性や操縦安定性の向上を実現するために、ホイールアライメント全体でバランスを取りながら最適化を図っています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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