助手席の彼女に「心地いい。また乗りたい」と思わせるプジョー・3008【注目モデルとドライブデート!? Vol.10】

●単なるSUVじゃつまらない。デザインと存在感が際立つプジョー・3008

「プジョーとポルシェって同じ会社だと思っていた。だって、どちらも『P』ではじまるでしょ?」

クルマに乗り込んだ彼女は、走り始めるなりそんなことを言い出した。

たしかにどちらも会社名の綴りは『P』ではじまるし、どちらも欧州のメーカーという意味では共通している。しかし、プジョーはフランスの大衆車ブランドだし、一方のポルシェはドイツのプレミアムスポーツカー(とSUV&ラージセダン)メーカーだ。かなり違うと思う。

だけど、その誤解はプジョーにとっては名誉なことかもしれない。だって、高価なスポーツカーを作るメーカーのクルマを見るのと同じ目線で見てもらえたということだから。

そんな目線をもらえた理由はどこにあるのだろうか? やはりデザイン、そして存在感だろう。走りの性能とか使い勝手とかクルマを評価する基準はいろいろあるけれど、やはり見た目が良くないと欲しいと思うクルマにはなり得ない。彼女もそう感じているはずだ。

最近のプジョーはカッコいい。3008だってそうだ。現行世代になってポジショニングがクロスオーバーからSUVへと変化。スタイリングはダイナミックになり、フロントマスクやフェンダーの躍動感が増した。

同時に佇まいがグッとオシャレになった。たとえばツノとか触覚みたいなアクセントの入ったヘッドライトは奇抜だけどシャープさを印象付けている。実用性は高いほうがいいけれど、単なるSUVじゃあつまらない。そんな人にとって、3008は魅力的な選択肢だと思う。

走りは「しなやか」という言葉を具現化したような乗り味だ。かつてのSUVのような荒々しさもなければシャープなハンドリングといったわかりやすいスポーティ感もない。だけど、心地よくサスペンションが動き、気持ちよく曲がってくれる。

すぐに馴染め、気張らず付き合える感覚が落ち着く。こんなに落ち着けるクルマはなかなか出会えないかもしれない。

3008のエンジンはディーゼルとガソリンが選べる。今回乗ったのは後者だ。1.6Lのガソリンターボエンジンはスペックを見ると最高出力165ps、最大トルク240Nmとたいしたことがないけれど、実際に乗ってみるとその印象はいい。

わずか1400回転という低い回転域から最大トルクを発生するので、速度を高めようとアクセルを踏んだ時の反応がいいのだ。反応遅れなくグッっと加速する様子は、自然吸気の大排気量エンジンのような感覚である。

「そうなんだ。プジョーはポルシェとは違うんだね。」

間違った知識のまま人生を送らせてしまうわけにはいかないので、クルマの中でプジョーとポルシェの違いを説明した。だけど、その違いなんてどうでもいいことかもしれない。

だって、彼女が「心地いい。また乗りたい」と思ってくれることが重要で、その印象に比べればブランドなんてどうでもいいことなのだから。(つづく)

(文:工藤貴宏/モデル:鈴菜/ヘア&メイク:東なつみ/写真:ダン・アオキ)

この記事の著者

ダン・アオキ 近影

ダン・アオキ

15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。
諸行無常の響きあり。主に「女性と車」をテーマにした写真を手がけ、『clicccar』では「注目モデルでドライブデート」の撮影をさせていただいております。感謝。
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